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2007年02月27日 イイね!

通学快速 エピローグ

通学快速 エピローグ3ヶ月に渡った「通学快速」シリーズも,無事最終章をめでたく「ドン引き」にて幕を降ろすことができた。

 当初,車について自分では何が書けるかと思案した。回りを見渡すと,幸い他の方々により,ほぼあらゆるジャンルの車の紹介は為されている。そこに付け加える事柄は無いほどに。

そこで違った角度からのアプローチを試みた。
車というものは働く車や実用車をのぞき,趣味性や無駄も重要な要素で,それが多い車ほど魅力にも繋がっている。所詮,大人の玩具だと思う。

それならばいっそ,無邪気な腕白坊主が1/1の玩具を手に持って,「ブーン,ブーン」と呟きながら振り回して,楽しんでいる情景が描ければと思った。それも,とんでもない車種を持たせて。

社会通念上や教育上の観点から,気分を害されたり,眉を顰められた方も多かったことだと思うが,そういった勧善懲悪や儒教的なことは,しばし忘れて,絵本の世界として捉えていただけたのなら本望だ。
それに「スーパーカー」に類する車は,感受性の豊かな若い内に乗り回すほうが,感動も楽しさも遙かに大きいに決まっている。
 これが「最後の車」の年頃になってからでは,確かに今まで頑張って来た自分に対する褒美と言った,違った意味での感動は大きいかも知れないが。

小学校の体育倉庫の裏で,誰かか持って来たエロ本を,小さな頭を寄せ合って,みんなでワクワクしながら見る方が楽しいに決まっている。定年間際に工場の資材倉庫の裏で,すっかり薄くなった頭を寄せ合って見たところで,有り難みを感じることはないだろう。


 なおブログの初頭にもあるように,登場人物および団体,製品はすべて架空のものであり,同名の実在のものとは一切関係ない。
もし万一記されたのと,同じ経験や経歴をお持ちの方がいらしたとしても,それはたまたま偶然の一致にすぎない。どうか目くじらを立てずに,ホラ話しとして笑い飛ばして戴けたら幸いだ。

特に「事情聴取」の情景は,期間限定の「青リンゴ・シェイク」を啜り,ポテトを摘みながらであったのを,羨望と願望により脚色されている疑いがある。




Posted at 2007/02/27 21:22:21 | コメント(1) | 通学快速 | クルマ
2007年02月27日 イイね!

通学快速 完結編 ディレクターズ・カット 事情聴取 「妄想は爆発だ!」

通学快速 完結編 ディレクターズ・カット 事情聴取 「妄想は爆発だ!」「そんなことがあったんだ。大変な目に遭ったな」

「あの頃は私もウブだったから・・・」

長く延ばした紅いマニキュアに挟まれた,白い煙草の先がポッと明るさを増す。殆どシルエットのみだった女の端正な横顔と,日本人離れした細長い鼻孔が,薄明かりの中で浮かび上がる。小さな灰の小片がひらひらと純白のシーツに舞い落ちる。

女は遠く昔の情景を見るかのような虚ろな目つきで,情熱の紅に彩られた唇を少し突き出して,天井目がけてため息と混ぜながら,煙を細く長く吐き出した。微かに青みを帯びた細長い雲が,開口部をフル・スパンに取った窓の方向へと,天井下をゆっくりとたなびいて行く。
窓の外には,家路を急ぐヘッドライトの光芒の帯が,高速道路のオレンジ色の照明の川に沿って,緩やかなカーブを描きながら,地平線へと長く延びていた。


「あれ以来,イケメン青年実業家にはすっかりアレルギーになってしまったわ」

眉間に寄せた微かな皺が苦悩の過去を物語っている。

「どうしても彼と重なるのよね。好青年という類もね」

「なるほど。それで俺とかい? まぁ,そうでなけりゃ・・・」

太い左腕を真横に延ばした男が言った。長い栗色の髪で包まれた頭の重みで,そろそろ痺れて来る頃だが,必要とあらば朝までそのままでいられるだけの自信と経験はある。

「でも,そのアレルギーの御陰で,今のダンナと・・・」

その下に何か生き物でもいるかのような,ブランケット表面の波打つ動きが,男の語尾が終わる間際に,一段と大きくなるのが,女の透き通る白さの中に筋が浮かび上がった首の,少し下あたりに見て取れた。
そこでは男の掌が,先程からゆっくりとした不規則なリズムで,休み無く動き続けている。

「そうね,彼とは似ても似つかぬ,真面目さだけが取り柄の」

私立女子高に通っていた頃,親が半ば無理矢理つけた家庭教師のことだ。当時は旧帝大医学部の学生だった。女子大に進んだ後も,機会を見つけては,ミュージカルに演劇にと,親が切符を手配しては,娘に,そして本当は男にも新しい服も買い与え,2人を送り出していた。費用も親が裏で渡していた。

「奴ほどは無理としても,世間からすれば十分に羨む暮らしだろ」

「まぁね・・・」

そう言いながら女は再び,煙を細く長く吐き上げた。

「表の稼ぎに加えて,刃物を振り回す度に,色々と入って来るのも多いだろうし」

「そうだけど,でもこう見えても苦労は多いんだから・・・何かと」

「立派な良妻賢母の教授夫人を通すには・・・」

「確かに良妻賢母だ・・・」

ブランケット表面の波高がゆっくりと2回大きくなる。


「ところで私みたいなのが,一体何人ぐらいいるの?」

「さあ~ どのぐらいいるんだろうな・・・」

「怒らないからぁ~」

甘えた声で男の肩を揺らす。ねだる時の所作は,あの頃とあまり変わっていない。

「E子やA君とも長い付き合いなんでしょ?」

「そりゃそうだけど。聞かない方が・・・」

女は半身を翻し,目を見開いて上目づかいに,男の次の言葉を待った。
左手の血流が復活し,痺れが徐々に和らいでくる。

「俺も詳しいことは・・・,ピアニストのE子と,俺の女友達の話からすると,裏が取れてるだけでも・・・」


「片手ぐらい?」

「もう少しかな・・・」

男はブランケットから右手を抜き出すと,シルバーの表面に汗をかいた,バケツの中に浮かぶ「モエ・シャンドン」のグリーン・ボトルの首を掴み,そのままラッパ飲みした。

「じゃあ両手?」

女は無邪気な表情で茶目っ気たっぷりに,顔の横でパッと両掌を開いた。こんな時の表情はあの頃と少しも変わっていない。男の網膜ではなく,脳幹に繰り広げられたスクリーンには,十数年前にワープした「白百合」の姿が映っている。

そんな動揺を悟られまいとするかのように,男はゴクリと喉を鳴らして,炭酸の刺激と共に飲み込んだ。

「そんなことより,そろそろまた・・・」


男はボトルを傾け,口移ししようと顔を横に向けて,口封じに掛かろうとする。

「誤魔化さないでよ。両手両足あれば足りるでしょ?」

「兄弟のも合わせれば多分・・・ そんなことは,今更どうでも・・・」

「やっぱり・・・結構いたんだ・・・」

ため息混じりに呟いた。

「まぁな。所詮,あれじゃ餌食になるなと言うほうが無理だ」

「それに,回りが警告したところで,みんな『自分だけは特別』と思うからな」

「私もそうだったわ・・・」

「本当に悪い奴だ」

「人のこと言えた義理・・・?」

語尾を上げながら,女が流し目できっと睨んだ。
その一瞬の表情は,映画に出てくる極妻の凄みを思い出させた。

「今更だが,後で奴も言ってた。・・・お前がピカイチだったとな」

「今ではすっかりこうなっちゃたけど・・・」

「いやいや,あの頃より数百倍もイイ女になったよ。第一あの頃は俺にとっては,望むだけ無駄な高嶺の花だったし」

「それが地上に堕ちてきた?」

「そして数百倍も『都合の』イイ女になった・・・でしょ?」

「んなこたぁーない。若い頃だったらどうあがいても無理な憧れが,こうやって・・・」

そう言いながら,右手のボトルをバケツの氷の中に突っ込むと,再び男の右手がブランケットの下に潜り込む。

「冷たい」

小さく呟くと,一瞬,女はびくっと上体を震わせた。

「それに・・・」

「それに・・何なの?」

少し虚ろになった目で,女が次の言葉を催促した。再びブランケットの表面は揺れている。

「ソフト・ターゲットを狙わないのが,せめてもの俺の仁義だ」
「食うか食われるか,乗るか乗られるか。そんな相手が,俺の性に合ってる」

かつての「白百合」,今では妖艶な美しさに凄みが加わった「黒百合」は,半時間ばかし話しをしている間に,すっかり元気を取り戻したことを確かめた。
半身を起こしながら上体を捻ると,枕元の灰皿で短くなった煙草を揉み消した。ボーン・チャイナの灰皿の白さと,吸い殻のリュージュの紅が鮮やかなコントラストを描き出す。その脇で「ベッドでの寝煙草はご遠慮ください」の小さな立て札が,寂しく不満そうに見えた。

そして,好みがドミ・セックからブリュットに変わった,シャンパンのボトルを手にして,グラス2杯分にあたる量を飲み込んだ。
透き通る白さの細く長い首筋と,顎の下の線が見事な一直線を成した。立て膝の優美な曲線がシルエットとして浮かび上がる。紅いマニキュアをした細く長い指で握られた,ボトル・ネックの金ラベルだけが鮮やかに光っている。
シャッターさえ切れば,明日からでもCMのポスターとして使える。

そして女はゆっくりと全身を翻し,男の両脇の少し横に,両手を開けてついた。男の脇を挟んだ膝頭が,シーツに窪みを作る。そして重力により上半身の曲線美がさらに強調された。

「乗られる・・・か」

女は「クスッ」と小さく笑いながら呟くと,吸いこまれるような大きな黒い瞳で,男の瞳をじっと見下ろした。

天井のダクトから放たれたエアコンの冷気に連れられて,「ジャン・パトゥ ミル」の香りが,千枚の花びらと共に,男の顔に舞い降りて来た。

清楚で可憐なエレガントさを表すオスマンサス・・・金木犀のトップノートに始まり,官能的な催淫剤としても知られる,パチョリのラストノートで締めくくった,千種からなるフローラル・ノートは,忘れたとは云えしっかりと彼女の根底に残っている「白百合」と,今の妖艶な,時には凛とした蒼く透き通った氷山の冷たさをも感じさせる「黒百合」とが綾を織りなす,可憐で危険なハーモニーに,とてもよく似合っていた。


かつてA君が贈った花束の「数は力なり」の威力をも思わせる,千枚の花びらの芳香に,溺れそうになる心を振り切るかのように,揺れる中で男はこう心の底で呟いた。

「そろそろ,次の事情聴取の準備に掛かるか・・・」



通学快速 全編 完
Posted at 2007/02/27 19:36:12 | コメント(0) | 通学快速 | クルマ
2007年02月26日 イイね!

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その6

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その6・・・まるで嘘のような出鱈目の話・・・と外野は一縷の望みを託すが,残念ながら想像をも絶する世界にA君は生息していた。
ちなみにその頃は作曲家の卵で,シンガー・ソング・ライターとしての活動も始めた,チャーミングなピアニストも,A君の華麗なる遍歴を,その都度しっかりと見届けていた証人の一人だった。

 近隣複数県に渡って,名門お嬢様学校の,前人未踏の極上白百合は,A君によって摘み尽くされた。それも必ずと言っていいほど,回りが羨むもののみが。そして白百合達はことごとく,A君にぞっこんとなり,メロメロになり,そしてボロボロになっていった。


 朝靄もまだ消え去らぬ休日の午前。山の手の邸内,全く文字通りの「プライベート・コース」で,家族水入らずで小さな白い玉転がしに興ずる一家の姿があった。
住み込みの庭師達によって,程よく刈り込まれた芝生の緑が鮮やかだ。

「どうせ田畑や雑木林のど真ん中だろ?」

そうであれば一般庶民としては,いくらか慰められもするが,野鳥のさえずりがそこかしこから聞こえこそすれど,年度によっては地価が世田谷の一等地をも上回る,一種住専地域。風致地区の足枷はあるが。

ショットの豪快さと正確さもさることながら,A君の本能的に風を読む抜きん出た才能は,このコースで,体で覚えながら培われた。背景に抱く山系からの吹き下ろしは,晩秋から春先にかけて特に厳しい。

よちよち歩きの頃から回り慣れた,9ホールのショート・コースを終え,満足げに勝ち誇ったA君の姿がそこにあった。時折見せる密かに頬を緩ませるだけの思い出し笑いは,決して連続バーディーを叩き出した,会心のパターだけに依るものではないとは,家族達は知る由もなかった。

「XXX」

名前を呼ぶ父の声にA君は振り返った。

「お前もそろそろ負け方の勉強を始める頃だな」

監督省庁の官僚相手のゴルフで,スクラッチ・プレイヤーが気付かれずに自然な流れで,必ず僅差で勝ちを逸するのは,チャンピオンになるより難しいかも知れない。稚拙な「ヨイショ」のプレーはキャリアには通用しない。

「そうだね」

ポロシャツの襟の上で,新たな世界への挑戦を始めるA君の白い歯が,南中するにはまだ少しかかる太陽の光を受けて,眩しく光った。


通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 完
Posted at 2007/02/26 21:46:43 | コメント(0) | 通学快速 | クルマ
2007年02月23日 イイね!

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その5

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その5 尋常ではない短時間で,県境を越えた先にある,地域屈指のホテルへ乗り付ける。
無言でホテルの格を象徴する車格,勿論駐車するのはいつもの定位置である,エントランスのすぐ脇だ。

「赤いべべ着た号」がエントランスを横切るのを,グレーを帯びたグラス越しに,見て取ったコンシェルジェは,受話器を取ると厨房の番号を押した。到着の報を受けたシェフがスタッフに檄を飛ばし,にわかに厨房が忙しくなる。

 助手席のドアを開け,彼女をエスコートしたA君は,飛び出して来た馴染みのホテルマンに軽口を叩きながら,キーを軽く放り投げて渡した。
中に入りスタッフに軽く会釈しながら,エレベーターに乗り込むと,一気に最上階の夜景が4方を包むダイニング・ルームへ。

席に着くと同時に淡い黄金色のシャンパンが注がれ,オードブルが運ばれてくる。
馴染みのシェフとは一昨日のあいだに相談して,アペリティーフから食後のカクテルに至るまで,メニューはすでに詰めてある。言うまでもなく事前に調べ上げた,彼女の好き嫌いも考慮されている。
シャンパンはブリュトにしたい所だが,飲み慣れない彼女のこと,A君の妥協の限界,ドミ・セックを選んである。オードブルから甲殻類を外したのも惜しいが。

メニューや酒を選ぶ時間は全て省いてある。あれこれ考える時間を与えるということは,同時に冷静に戻る時間も与える危惧がある。
大志を貫徹するには,冷める余裕を全て奪い去って,サプライズの連続で,どんどんたたみ込んで行くのが大事だ。

贅を尽くした本日のお勧めフレンチを終え,カクテルに移る頃には,グランド・ピアノが彼女の大好きなアーチストの曲を奏で始める。
ロシアン・ウォッカをベースにフレッシュ・ジュースを加えたカクテルの,口当たりの良さについ気を許して,少し飲み過ぎている。淡いピンク色を帯びた頬が,感激でさらに赤みを増した。

勿論これも予め,彼女の周囲に探りを入れ,調べ尽くした好みのうちの,1つのジャンルに過ぎない。ピアニストに曲目の順序,そしてそれらを奏でるタイミングは周到に頼んである。
やがて曲はバラードになり,頬を寄せて踊る2人を,照度を落とした淡いオレンジ色のダウン・ライトの光芒が包み込む。

最終準備段階完了

その頃には2人の語らいを誰も邪魔しない,スイート・ルームの準備はすでに整っている。ベースのリズムに合わせながら,フロアで揺れて踊っているA君に向けて,テーブルそばに立った支配人が,密やかに目配せした。
それに応えてA君も,彼の胸に軽く顔を埋めている「白百合」の背中越しに,口元を少しだけ緩め軽く頷いた。

そして支配人はシート位置を直す仕草のついでに,いつもの部屋のキーをシートの隅にそっと隠した。


 後は最高峰目指したアタックを遂行するのみだ。登頂ルートは完全に開けている。
Posted at 2007/02/23 20:07:24 | コメント(3) | 通学快速 | クルマ
2007年02月20日 イイね!

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その4

 通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その4  甘い夜を演出するに相応しい装いに身を包んだA君を乗せた「赤いべべ着た号」が,重厚な排気音で静かな邸宅街の空気を震わせながら,あくまでもゆるやかに滑るように,立派な門構えの邸宅に到着する。か細い腕では持ちきれない程の,大きな花束を携えて。

少し背伸びした大人の雰囲気を醸し出したドレスを身に纏い,門の中で耳を澄ませて排気音を待ちかまえていた「白百合」が,はやる心を抑え

「1,2,3・・・10」

とゆっくり数を数えてから,門の中から姿を表す。
A君が差し出した思いがけない贈り物は,さっき別れたばかりなのにまた会えた彼女の喜びをさらに膨らませる。

もちろん好みの花は予め調べてあり,彼女もこれだけの量を一度に手にするのは,生まれて初めてで圧倒される。タイミングを見計らった,不意打ちの,お気に入りの突拍子もない数量というものは,時には絶大な威力を発揮する。「数は力なり」だ。

無数の花弁の花園に顔を埋め,長い上下の睫を合わせて,大きく息を吸い込むと,胸の中は大好きな香りで一杯になる。眉の間にほんの少しだけ皺を寄せながら,目を閉じた彼女の脳内では,赤い馬が「白馬」に,ゼニアの布地で仕立たジャケットを,さりげなく着こなしたA君が「王子」に置き換わってしまった。

「そうだわ。この人なのだわ・・・」
「私が待っていたのは・・・」

昼間の余韻も覚めやらぬ「白百合」は,感動で目を潤ませる。

第二段階完了


赤いドアを開け,A君は彼女の手を取って軽く支えながら,低い助手席に座らせる。

「ちょっと失礼。ベルトを締めるよ」


半ば彼女に覆い被さるようにして,バックルを締めざまに,彼女の耳元でそっと囁く。

「綺麗だね。とっても似合っているよ」

電撃が全身を走り抜け,鳥肌が彼女の体を震わせる。

「王子様に気に入ってもらえた・・・」

 夕闇が忍び寄る邸宅街をゆっくりと滑るように抜け,ほどなく高速道のランプウェイを上り始める。
ここで12頭の馬に鞭をくれると,轟音と共に未だ嘗て経験したことのないGが,彼女のなだらかな曲線で縁取られた背中を,黒い革シートにのめり込ませる。

登り切った合流地点では,すでに本線の流れを遙かに超える速度に達している。本線に苦もなく滑り込んだ「赤いべべ着た号」は,なおも加速を続け突き進む。

2人の前途を邪魔するのは,まるでいけないことかのように,前方を行く全ての車は道を明ける。ガードレールの支柱が,溶けたかのように連続した白い帯となって,後方に流れて行く。

6気筒の「バタ・バタ・バタ」ではなく,背中とは薄い隔壁1枚隔てただけのエンジン・ルームから,甲高いギア音と渾然一体となって聞こえる,12気筒の甲高い「クウォーンッ」という泣きが入った咆吼は,脳細胞の1粒1粒を容赦なく震わせる。
「白百合」の理性を奪い取り,完全に思考停止に陥れ,さらに恍惚の世界へと誘う。

「もうどうなってもいい・・・運命の人となら」


第三段階完了
Posted at 2007/02/20 23:37:16 | コメント(2) | 通学快速 | クルマ

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