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ViperJetのブログ一覧

2007年02月19日 イイね!

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その3

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その3 ほどなくして,A君の元に真紅の「赤いべべ着たべべ号」がやって来た。モナカの上下みたいに塗り分けられ,上半分が真紅で高性能を,下半分が黒で凄みを醸し出していた。これほどツートン・カラーが決まる車体も少なく,人目を引いた。
かくしてA君の戦闘車両は同じ水平対向ながらも,12気筒へと2倍のパワー・アップを果たすことになった。効果は? 2倍以上の予想を遙かに超えるものであった。

高嶺の人跡未踏地に足を踏み入れる,A君の典型的な戦略はこうだ。
まずは昼間に,打ちっ放し練習場に連れて行く。そこで軽く「白百合」に手解きをする。後ろからあくまでもジェントルに,日焼けした逞しい両腕で包み込みながら,「白百合」の両手に手を添え,耳元で優しく囁きながらフォームを直す。種目柄,ごく自然にボディ・タッチができる。

「ナイス・ショット」
「この調子ならすぐに抜かれてしまいそう」

冗談交じりに自尊心をくすぐりながら,褒めることも忘れない。
小麦色に焼けた清々しい笑顔の口元から覗く,整然と並んだまっ白な歯が,陽の光を浴びて眩しすぎるコントラストを生み出している。

この段階で相手は不用意にも,警戒心を無くし始めている。言葉による愛撫はオテント様の下でも,すでに始まっているのだ。

しばしの休憩を取ると,ベンチに腰掛けた「白百合」の前で,
やおら愛用のドライバーのヘッド・カバーを脱がすと,

「僕もちょっと打とうかな」

と席を立つ。
今までの笑顔とはうって変わり,真剣な表情になったA君。それまでの優しい目からは想像もできない,戦闘モードの鋭い目に変わっている。
他の何者をも寄せ付けない,凛とした張りつめた空気が,彼の周囲にバリアーを形作る。 
数回の素振りでフォームを確認すると,

「バシッ! バシッ!」

と,周囲のショット音とは全く異なる,短く鋭い衝撃音が,周囲の空気を切り裂く。猛烈な速度で低い弾道を描いた白球は,遙か彼方の一点に,寸分の狂いもなく全球吸い込まれて行く。
他のプレイヤーが打った,山なりに放物線を描く球の軌跡の下側を,A君が打った球は,猛烈な速度で追い越して行く。

「何事が始まったのか?」

衝撃波を肌で感じた周囲の人間が,思わず振り向き注目する。A君が打ち尽くすまでは,他の「カキン,ポコン」といったショット音はしばし鳴りを潜め,無言の緊張感が辺りを支配する。
衆目に混じって,彼を見つめる「白百合」の眼差しは,強い物に憧れる本能から滲み出た艶を帯び,しっとりとしている。やがて酔いしれた恍惚の瞳へと変わってくる。

第一段階完了

ベースキャンプの設営は成功裏に終わった。
一旦「白百合」を自宅に送り届け,シャワーと共に,ディナーに似合うドレスに着替える時間を与える。
Posted at 2007/02/19 19:34:25 | コメント(1) | 通学快速 | クルマ
2007年02月15日 イイね!

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その2

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その2 A君が生息する地域は国内でも屈指の,車好きの人口密度が高い地域。

晴れた日曜の朝ともなれば,鼻先に馬蹄,豹,ロレックスみたいな王冠,四つ葉のクローバー,三ツ矢と輝く蛇腹の排気パイプがいっぱい,どでかい航空機エンジンを搭載したの・・・といった戦前の主立ったグランプリ・レーサーすら犬の散歩の如く,オイルの焼ける匂いを漂わせながら,ごく自然に走っていた。

牛馬ですら正に「牛馬の類」といった風情で,さほど珍しくもなかった。
雑誌の表紙を飾った,本来は博物館で鎮座すべき歴史的価値の高いものや,輸入開始直後のニューモデルそのものが,ごく自然にスイスイと走っていた。
私でさえ,それらのステアリングを自ら握って,遠出する僥倖にあやかったこともあった。
表紙から飛び出した車達がそこかしこに走り回り,時代と国境を超越した情景が繰り広げられていた。

「カエル」に至っては振り向かれることすらない。1年生の頃に比べ,すっかり大人の領域にまで行動範囲が及んだA君としては,その領域でもインパクトを及ぼし得るウェポンが欲しかった。

当然ながらそういう目的としては,昨今と同じく馬が最有力候補になる。しかしその頃の馬の12頭立て主力モデルは,スタイルこそ流麗でありこそすれ,あまりにもまとまりすぎで落ち着いており,似合う年齢層が上過ぎた。

 そんなころ,馬の因縁の対決相手,牛との最高速競争での首位奪還を果たすべく,衝撃的なモデルが発売された。挑戦的なスタイル,レーサーばりのレイアウト,官能の排気音,世界最高の性能,どれを取っても,「赤いベベ着た号」はA君のウェポンとして,全くケチの付けようがないものだった。

「これだ! 待っていたのは」

A君は即決した。
Posted at 2007/02/15 21:18:45 | コメント(1) | 通学快速 | クルマ
2007年02月13日 イイね!

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その1

通学快速 完結編 「赤いベベ着た」 その1 通学快速「アマガエル改号」で「重大任務」の遂行に励んでいたA君。学年が上がるにつれ,メキメキと全方位で頭角を現し,昼のクラブ活動では,遂に学生チャンピオンになってしまった。

昼のみならず,夜のクラブ活動もベテランの域に達していた。当時小遣いだけでも,駆け出しサラリーマンが得る額面の5倍程度は費やしていたA君,財閥の御曹司が夜な夜な勢揃いする高級クラブでも,しっかり「顔」になっていた。

「アマガエル改」号就役当初は,まだまだ初で特定の女王様に仕えていたA君も,場数を踏み第二の専攻科目「心理学」を熱心に学ぶにつれ,その方面でも,達人の域に達しつつあった。

「心理学」といっても特定の人種が対象で,幼少時代から一貫して同性のみの学校に通い,無菌培養された,純粋無垢の白百合達の「女性心理」を熱心に研究していた。

「ガイシャ」と聞いただけで,目の色変えてホイホイと乗り込み,天井から安っぽいビニール製の帯が無数にぶら下がった半地下駐車場に,乗り入れても平然としている「白百合モドキ」はノー サンキュー。
容貌は当たり前として「性格,知性,教養,育ち」も,そして何よりも潔癖を好み,親の期待通りに今までも,幾多のあらゆる誘いを排除して来た,強い警戒心も重要な必須条件で,険しい高嶺の人跡未踏地に咲くもののみを対象としていた。

そんなA君の良き相棒であった「アマガエル改号」は,故障らしき故障もせず,水平対向の6気筒の排気音を響かせながら,昼も夜も主とお姫様を乗せて,忠実に東奔西走していた。
しかしA君が学んだ「心理学」の成果を遺憾なく発揮するには,もう一押しのサプライズが欲しかった。
Posted at 2007/02/13 23:50:34 | コメント(0) | 通学快速 | クルマ
2007年01月26日 イイね!

通学快速 王室海軍中佐御用達

通学快速 王室海軍中佐御用達 将来,経営者の座を確約されているボン達は,就活なんぞ下須のやること,卒業後留学することが異常に多かった。
当然ながら,それに増して,夏休みに短期留学や海外旅行する者は多かった。

なお,私はそんなのとは無縁な生まれ育ち。当時は日本全体が危機の時代,「本年度採用予定無し」が常識で,就活も思い切り苦労した。内定後も自宅待機全盛の頃だ。自宅待機の新入社員をまるごとキャンセルして放り出すことや,他社に売り飛ばし。何でもありの時代だった。

 B君は入学早々,帝王学を学ぶ手始めに,夏休みに大英帝国にに短期留学することになった。
 ちなみにあちきは,アリスの歌そのまんまで「飛び散る汗と,炎の中で~~♪」の歌詞通り,昼間は溶けた鉄を浴びながらのバイト,夜は家庭教師と,殆ど死に体だった。

車好きのB君,留学先で暇なときには車屋巡りに明け暮れた。

ふと立ち寄った店に,まさに「それ」があった。ロンドンと言えども,そうそうその車が走っている訳ではない。
B君にとってはハリウッドの映画スターに,道で偶然会ったようなもの。
英国といえばジェームズ・ボンド。ボンドの愛車と言えば,今でもやはり明日豚がぴったし来る。
イタ車もいいが,やはり伝統から滲み出る気品は明日豚がピカイチだ。
それが放つオーラに,B君は圧倒されると共に一目惚れしてしまった。

「これクレ」

決済方法,輸送,通関,排ガス検査,新規車検登録,メンテナンス・・・
B君はそんな言葉すら知らないし糞くらえだ。意志決定さえ伝えれば,本国のスタッフ達が何とかする。幼少からの今までと同様に。
B君にとってはミニカー購入と,さほどの差異はない。縮尺が1/1になるだけだ。


 かくして樹木が色付く頃,「王室海軍中佐御用達号」が「なんちゅーのに乗って来るんじゃぃ戦隊」の戦列に加わることになった。余談だがメルセデスやGTRでは,ありきたり過ぎて戦列には加われない。
デカさもさることながら,映画からそのまま出て来た容姿は,やはり目立った。

以下は単なる妬みだが,デザインの優雅さとは裏腹に,とても想像できないが,まさに「漢の車」。操作系の重さを始め,とても荒削りな車だ。ドライビングは「流す」というイメージからは程遠く,「車と格闘する」が相応しい。

一言で言えば

「とても速いトラック」

 無骨さの例外として「フライ・オフ」式のサイドブレーキ・レバーは,右側運転席のさらに右側に位置してたと思う。左隣のお嬢様との楽しい語らいの一時を,何かと邪魔してくれる,忌々しいレバーは二人の間にはない。私には何のことかさっぱり分らぬが,その有り難みは分る人には分るそうだ。

まさかそのための設計とは思えず,サーが付く英国紳士にとっては,不要な計らいだろう。
彼等には,やはり氷いっぱいのバケツの中で,汗をかいた「ピンドン」と大粒の苺の山盛りを傍らに,汗をかいたお嬢様と語らうのが似合っていると思う。
Posted at 2007/01/26 22:10:53 | コメント(1) | 通学快速 | クルマ
2007年01月17日 イイね!

通学快速 アマガエル改

通学快速 アマガエル改「アマガエル号」を大破させてしまったA君,勿論同じ車種をまた買うことも,修復して元通りにすることもA家の財力をもってすれば容易いことだった。だがそれでは,あまりにも芸がない。かと言ってA君の用途に見合った能力の車種は,他には見当たらない。

転んでもただでは起きあがらないA君,修復ついでに大改装をすることにした。サスペンション,フェンダー,大きな羽根等々の外装,ホイール,タイヤを一新して「RSR仕様」に生まれ変わった。さすがにエンジンにまでは手を入れなかったが,それでもただでさえ部品は高額,増してや純正レース部品の価格は天文学的数字に近かった。
図太いスリックを履かせるホイールだけでも,国産車が2台買えた。

スリック・タイヤにへばり付いた小石を,一般庶民学生にぶちまけながら,元気に練習場に向けて出動する,戦闘力を増した「アマガエル改号」の姿が再び毎昼,見られるようになったのであった。

夕暮れの女子大の門前に毎日定刻に配置に付く「重大任務遂行中」の戦闘車両の群れの中でも,夕日に映し出された「アマガエル改号」はさらに一際精彩を放っていた。


 「スリック?」「そんなのウェットでは軽4にも負けるだろ」

ご心配には及ばない。A家では「一家に一台」という訳ではなく,望むなら,天候や状況に応じて使える車は他にも色々ある。
メルセデスだけでも,「おじいちゃんのベンツ」「おばあちゃんのベンツ」「パパの」「ママの」・・・以下省略。常時ハンドルか毛ばたきのいずれかを握っている運転手さんも,勿論一台毎に付いていた。一般受けする,前屈みのネーちゃんが鼻先で羽を拡げている車も,取り敢えずあった。「空飛ぶ天使」と言うそうだが。
Posted at 2007/01/17 11:14:18 | コメント(2) | 通学快速 | クルマ

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