
そこでA君が出した結論は「通学快速 アマガエル号」であった。コンパクトなサイズで,きちんと曲がり止まれる。パワーも「おむすび号」に比べ遜色ない。A君の要求を満たせる4輪車はこれしかないという判断だった。価格と周囲の反応さえ無視すれば,当時としてはベストな解答だとも言える。
斯くして,あわれ「おむすび号」は僅か3ヶ月の愛顧をもって退役となった。リーサル・ウェポン「アマガエル号」は予想を全く裏切らない性能を発揮してくれた。
めでたくこれにて一件落着。ジャスト・イン・タイムに任務遂行を重ねる順調な日々がしばらく続いた。
が,思わぬ伏兵が。
総合性能はとてもハイレベルだが,それにも増して限界時の挙動も顕著。操縦に馴れてペースが上がるに連れ,「アマガエル号」は飼い主に反して牙を剥くようになった。お尻を振り出したら止まらない。
厄介なことに他の車はお尻を振り出したら,アクセルを緩めるのが常道だが,こいつは状況に依ってはさらに踏み込んで後輪荷重を増やす必要がある。人間心理に逆らう操作で,一瞬の判断が明暗を分ける。
乗り出してから季節も変わらぬある日,それは起こった。住宅地のコーナーをぬえわの速度で抜ける時に。日常それまで飽きるほど抜けている自宅のすぐ近くのコーナーだ。
幸い乗員は無傷であったが,あわれ「アマガエル号」は大破してしまった。「おむすび号」より短命だった。
A君やっちゃった。
Posted at 2007/01/12 21:42:24 | |
通学快速 | クルマ