2020年07月05日
ガラスコーティングは化学をなにも知らない馬鹿向け商売
メーカーはどうしてガラスコーティングを標準化しないのか?これは簡単な事で、かえって悪くなるからだ。化学の観点から説明する。
ガラスコーティングがなぜキラキラしてるか?簡単な話でガラスは反射率が標準ウレタン塗装よりも高い。概ね4%程度反射する。これはガラスの方が密度が高く軌道電子の密度も高いから。加えてアモルファスであるため単純なウレタンポリマーに比べれば平滑性も高くなる。
キラキラ光ってるから綺麗だ、と馬鹿は喜ぶ。そういうやつ向けの商売だ。
汚れがつかない?ずっときれいなまま?ありえない。ガラスはウレタン塗装なんかより遥かに汚れやすい。そのメカニズムを書いておく。
まずガラスコーティングというのは、シロキサンモノマーを低温(100℃未満)で重合させたものである。普通は低温でなんて重合しないので、触媒を入れてある。こうして出来上がった塗膜には、孤立シラノール基、孤立シラノール基同士が水素結合している水素結合性シラノール、それらに液体の水が結合したものなど、水とくっつきやすい残基(反応残)が大量にある。
親水性ガラスコーティングのそれら残基は、水分中で電離しているイオン性不純物(主にケイ素、カルシウム、マグネシウムなどのカチオン)と反応して塩の形になる。この塩はイオン結合なので強固で、洗剤で洗ったくらいではもちろん落ちない。風呂場の鏡を思い浮かべるといいだろう。時間が経つと周辺部が白く変色してくるアレだ。あれも全く同じ現象。あれを落とすには強塩酸を使わなくてはならない。
では疎水性ガラスコーティングだったらいいのか?というと、それも違う。疎水性ガラスコーティングを「クリスタルガラスだから疎水性なんだ」とか解説しているサイトもあるが単なる誤解。クリスタルガラスは高温(500℃以上)でないと合成出来ない。では何か?というと、疎水性になるシランカップリング剤を親水性コーディング剤に配合するか、後塗りしてあるだけ。
疎水性シランカップリング剤のここでの役割は、加水分解性基を使って親水性であるシラノールと反応して表面を疎水性にする化学種である。これらがガラスに「くっついてる間だけ」疎水性になるのだ。つまり、時間が経って(主に加水分解の影響で)外れてしまったあとは、ガラスコーディングは親水性になる。そして、上に書いた通りのメカニズムで汚れる。その汚れは「物理的に削らない限り落ちない」。
というようなメカニズムが存在するので、ガラスコーディングはかえって汚れる。よって、メーカーは採用していないのだ。
ちなみにだが、疎水性にするシランカップリング剤はガラコとして売られているアレに含まれている。なのでガラスコーディングしてしまったなら、定期的にガラコを全体に塗れば撥水性は維持される。まぁ洗車機1回通しただけで落ちる程度の物なので、1ヶ月に1回とか相当回数塗らないとダメだろうが。
実はこのシランカップリング剤を塗る作業を「メンテナンス」だとか称してやってるガラスコーディング業者もいる。メンテナンス液として売ってるのだが、中身はガラコそのもの。無論コーティング屋はそんなことは何も知らず、コーディング液売ってるメーカーの言うがままやってるだけである。
最後に、標準のウレタン塗装について述べる。クルマは概ね4層で塗られているが、最表面のクリアウレタン塗装はメーカー工場施工のため200℃くらいの温度で硬化させられる。部品を組み込む前だからこそ出来る高温硬化だ。このくらいの温度で硬化させたウレタン樹脂は非常に硬く、またエステル等の加水分解性基が縮合で脱離しているため耐水性も高い。
塗膜としての信頼性はガラスコーディングなんかよりウレタン塗装の方が遥かに高い。ガラスコーディングは、このクリア塗装を削り落として施工したりするからタチが悪い。
自動車メーカーが選んでいる塗装にはしっかりと科学的な理由が存在する。コーディング屋風情の浅知恵でメーカーの塗装皮膜を強化することなど到底不可能だ。出来るならメーカー自身がとっくにやっている。
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2020/07/05 19:43:00
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