トレジャーハンター その2 初めてのお使い 1/7
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話は変るが,可哀想なのは探査機「ミネルヴァ」。惑星「イトカワ」に着地して,バッタのように跳ね回って,惑星表面の立体映像撮影と放射温度を測定するはずだった。色々事情はあったが,勘に頼った地球からの司令で,あろうことか「エイヤッ」とばかりに宇宙空間へ放り出されてしまった。
これに対して「ミネルヴァは主目的ではなく,重量合わせの積載物につき,問題ない。バラストとして放出され立派に重責を果たした」旨のプレス発表。
思わず「それは何か違うんじゃないか」と突っ込みたくなる。予防線を張りたい気持ちは分かるが,予算の都合で各方面の善意に頼った開発経緯もあり,官僚的発言で,関係各位はお気の毒だ。
実際に着陸していたならば,1桁上の解像度でマクロの鉱物立体映像と,表面を覆うレゴリス粒子の測定結果が得られたはずなので惜しい。
当初は米の巨大アンテナを借用する見返りに,NASA製の探査機が便乗予定であったが,NASA側の予算の都合で製作できず,日本側で用意した。もし当初の予定通りNASA製を搭載していたなら,そんなコメントはできなかったであろう。
これに限らず打ち上げ前の主目標が,標本採取と表面観測だったものが,いつの間にか失敗した項目は,どんどん優先順位が下げられてコメントされるのが通りすがりのオッサンは奇異に感じる。マスコミの短絡的な評価も問題ではあるが,項目別に失敗は失敗,成功は成功ときちんと分けて発表・検証するのが筋な気がする。
蛇足ながらも驚いたのは,ハヤブサ内の観測データは,揮発性のメモリー内のみで,途中何度かの電源ダウンやリスタートで消えたとのこと。不揮発性媒体へのバックアップなしで済ませるとは,素人の私には理由の想像もつかない。事情は色々あるだろうが,外野の気ままな印象としては,運用中の勘違いや凡ミスも含め,210億のプロジェクトとは不釣り合いな感が否めない。
もちろん徹夜続きの大和魂で突貫作業を強いられ,朦朧とした頭で業務を遂行したメンバーを責める気持ちは更々なく,もし責を問うならば,そのような体質,環境を作り出した側にであろう。
ちなみにNASAの運用担当者は8時間勤務厳守で,凡ミスで巨額のプロジェクトをオジャンにするのを避けている。国民性というか体質の違いが現れていて面白い。
いつの日か,日本も有人衛星を打ち上げるかも知れない。
日の丸の鉢巻を締めて,千人針を腹に巻き,水杯を交わして出陣しないためには,体質と体制の大変革が必要かも知れない。
以上,色々偉そうなことを申し上げたが,それでもリスキーな挑戦をテンコ盛にした「お使い」で,色々あったが「初めてのお使い」も満身創痍ながらもゴール寸前。皇国風に言うなら「竹槍でB29を撃墜」は絶賛に値する。
私もクソガキの頃,拾ってきたテレビをばらし,部品を流用してイオン・エンジンもどきを作ったことがあるが,感電しまくっただけで,全然飛んでくれなかった経験がある。
火薬ロケットにも凝っていて,爆破事件の捜査で,突然夜に刑事さんが自宅にまで事情聴取に来られ,驚いたこともあった。そんな私なんかに比べれば,少なくとも数百万倍は優秀な方々だ。また,そのしぶとさにも敬意を表する。
もし機会とご興味があれば,ハヤブサに因んだ短編映画
「HAYABUSA -BACK TO THE EARTH-」を是非,全天周のスクリーンでのご鑑賞をお勧めしたい。低予算にも拘わらず良くできており,人によっては涙するかも知れない。
6月13日の生還を心から祈ると共に,お土産を楽しみに待っている。
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トレジャー・ハンター | ニュース
Posted at
2010/06/08 10:50:45