
前回は、クラッシュした最終コーナーの、走り方の違いと、サスや車体の動きを考察したので、今回は、セッティングの方向性を考える為に、RRタイヤが195の時と、165の時のデータ比較を行いました。
GPSも、can-busのデータも途中でデータが無くなってるので、RaceChronoで直接比較出来ないのでまずは写真で走りをチェック。
上がRRタイヤ165でクラッシュしたラップ,下が195で今までのsec3ベスト(12秒9)の比較です。
色々と細かくチェックしたので、長くなるので結論を先に言うと、RRタイヤに195を使っている時と比較すると、
①コーナーエントリーでは195の時はFRにアンダーが出てるが、165の場合は前後タイヤがスライドする事で、同じようなラインになる。
②その為に、ボトムスピード近辺で、165の場合は速度を落とさないと向きを変えられない。
③したがって、165で195と同じような進入をすると、進入の慣性力をグリップ不足の為に受け止められず(特にRRタイヤが)におつりが来てスピンする。
④RRタイヤが195の場合は、進入でアンダーが出るが、RRが安定してグリップしているので速度が落ちるまで待てば、向きを変える事は出来るが、進入のおつりはその時にRRに来るので、進入速度を上げて行くと、165と同じ場所でRRからスピンする可能性は高い。(実際に、その辺りでカウンターを当てる事が多い)
といった結論で、ヘアピン系のコーナーと異なり、RRのグリップ不足のネガな部分がはっきり表れた結果となった。
それでは詳細チェック。
まずはオンボード映像の比較から。
1:ストレートエンドの位置取り
ちょっとアウトが余っているが、ほぼ一緒のライン。(195の方が、10cm位はアウトからアプローチしている)
2:ステアの切り始め

ちょっと画像の位置がずれている(195の方が若干位置が奥)が、ほぼ同じ舵角で同じ位置、向き。
3:スロットルの戻し始め

195は、画面ではまだ全開、can-busデータでは165と同じ開度。
センターメータも、数値とグラフに差がある。ので、165の方がデータが取れていれば、この時はスロット開度は小さいと予想(全閉になった位?)。
車体の位置、向きに差は無い様に見えるが、ほんの少し、165の方がインを向いている。
横Gは165の方が0.5Gと大きい。
4:スロットル全閉直前

センターディスプレイでは、165はスロットル開度15%で横Gが0.7G、195は5%で0.6G。
車体の位置、向きに差は無いが、165の方が、RR下がりの車体姿勢になってる。(3までは、4ほど差が無い)
5:4の直後

この時点で、舵角は165の方少ないが、車体はが若干イン側を向いている。
6:

この位置では、5よりも車体の向きが同じように見えるが、横Gは165が1.0Gで、195が1.1Gと、差が出ている。(恐らく車速が違う?)
7:修正陀が入る

195はステアを戻さず切ったままだが、165は殆どセンターまで修正陀を入れているが、向きは若干インを向いている。
また、前後の車体姿勢は、165のRR下がり度合いが少なくなっている気がする。
8:そしてスピンへ

195でも、同じ位置で修正陀が入っている。
165は、既にノーズがインのガードレールに向かっているので、カウンターのタイミングが早くて大きくてスライドが止まった場合は、インに切れ込んでガードレールに突っ込んだかもしれない。
こうして比較すると、思ったよりもRRタイヤの195と165でライン取りや車体の向きに大きな差が無い。
次に、ロガーのデータをチェック。
今回、2/18 Y1(195)のHRCロガーのデータに、can-busのステア舵角とブレーキ圧、RRホイールスピードを重ねる事が出来たので、RRタイヤ195のデータは、より詳細にチェックが出来た。
2のステア切り始め
195のエンジン回転数とステア舵角スロットルでチェック位置を合わせると、195は全開だが、165はスロットルを戻しているので、センターディスプレイとデータにずれがある。(今までの傾向からすると、センターディスプレイの表示が遅れ気味)
画像とデータをMIXして考えると、この位置では165,195共にステア舵角はほぼ一緒の筈だが、FRは約2mm、RRは約10mmも165の方がロールしている。
画像2では横Gが同じだが、画像3では165の方が横Gが大きく、車両がインを向いているので、旋回Gが高い為にロールも大きい傾向では有るが、ロガーデータを見る限り、ステア切り始めから165の方が特にRRのロールが大きいので、ステア操作に対してのロール剛性が165の方が低い?
恐らく、RRに20mmのワイトレを入れた事で、相対的にSPGレートが下がっているので、その影響では無いかと推察。
3のスロットルを戻している途中
ロガー上でスロットル開度が揃った位置(上記2と3の間位?)では、195の方がFRが約6mm、RRが約5mmロールが大きくなり、車体姿勢が逆転。
165で、このラップ(ラストラップ)とラスト2ラップを比較した場合でも、このラップの方がロールが少ないので、165で高いスピードで最終コーナーへエントリーすると、この状態になる。
センターディスプレイの横Gは165の方が値が大きいので、前後共に滑り出して、スリップアングルが195よりも大きく付いている可能性が高い。
(スライドすると、グリップを失う為に、ロールが小さくなる傾向がある)
4のスロットル全閉直前~5の全閉の辺り
195のエンジン回転とステア舵角で合わせると、スロットルは全閉になっているので、画像5の位置かも。
195でスロットル全閉にした直後は特にFRのロールが大きくなっていたのが、この辺りでは165とのロール差が小さくなってきている。
恐らく、195のFRタイヤのアンダーが出始めている。
165でのラスト2ラップとの比較では、このラップの方がRRがめくれ上がる様な車体姿勢だが、195と比較すると、ロールは抑えられているが、ノーズがインを向いている事からも、前後ともにスライドしつつもスリップアングルが大きくなっている状態で、動画を見ると165は小さな修正陀が多い。
6の位置
画像では横Gが違うので車速が違うのかと予想したが、車速は殆ど同じで、ロールの傾向に変化は無い。
この時点で、サスストロークから前後のトータル荷重を計算してみると、
165はFR:390.8kgf / RR:461.5kgf / トータル:852.3kgf
195はFR:390.4kgf / RR:469.0kgf / トータル:859.4kgf
となり、195の方がトータル荷重が若干高い。
画像からは、車体の位置や向きは同じように見えるが、195は修正舵を入れた直後で有る事から、FRのアンダーが収まってきた状態で、ノーズがインを向いた為に横Gが高くなり、165は前後共に滑りながら向きが変わっている状態であると推察。
車体の向きや位置が同じでも、195は前後共にグリップした状態で、165は前後共に滑っている状態だと思われる。
ヘアピン系のコーナーはカントが付いているので165の方がトータル荷重が高かったが、比較的フラットな最終コーナーでは、4輪に掛かる荷重に違いが無いので、単純にタイヤ幅の差が出ている。
7の修正舵が入った時
195の表示データを追加。
RRホイールスピードを表示し、内外輪のスリップ率を表示させると、約3%のスリップ率。
LSDが入っていないので、ノーブレーキの減速中でも内輪の速度が2.6km/h低く、外輪が1km/h高い。つまり、RRが滑っている状態。
対して、165はcan-busのデータが無いので直接比較出来ないが、大きく修正陀が入っているので当然195よりもスライド量が多い状態の筈で、その為か、165の方が横Gが少ない。(195の方は、165よりも早いタイミングで一度修正舵が入り、この位置では切り増している事もその要因の一つかも)
そして8のスピン開始
まだカウンターが当たっている状態なので、サスの動きに大きな変化が出ていないのが意外。
195はスロットルを開け始めた後ににRRがスライドして修正舵が入っているが、これは恐らくスロットルONによるスライドでは無く、最終進入の慣性力のおつりがここに出てる。
その為に、165ではここでいきなりRRが大きくスライドする。
コースのどの辺りにいるかをチェックすると、
思ったよりも、最終のエントリー位置にいる。(赤いラインが195で、青は165で7ラップ目のデータ)
当然進入の慣性力が残っている位置なので、RRタイヤのグリップが不足していればスピンするのもうなずける。
従って、RRタイヤが165の場合は、最終コーナーに関しては、ロールが抑えられる事で内輪が仕事をしているとしても、その割合が小さいので、RRタイヤのグリップが不足する。
また、一見ロールが少ない165だが、単純にタイヤがスライドしている為にロールが抑えられているだけの可能性も有る。
当然、ジオメトリー的にロールが抑えられる部分も有るとは思うが、そのメリットよりも、内外輪のトータルグリップが不足しているネガが大きい。
速度が高く、慣性モーメントが大きいので、ステアを切り始めた段階でロールが195よりも大きい事が、非常に問題だと思われる。
ここで、外輪が荷重を受け止められずに前後共にスライドを開始する点を改善しないと、最終コーナーの問題点は改善しない。
正直、ヘアピン系のコーナーは、RRがスライドして向きが変わるので誤魔化せているだけで、よりペースを上げようと思えば、同じ事が問題になる。
(実際、タイヤがブレークする限界Gは、165の方が低い)
では、どうすれば良いかを考えると、RRタイヤが195の時と比べて、恐らくロール剛性が下がっている部分の修正が第一では無いかと考察。
RRのロール剛性を上げる為に、タイヤサイズを細くしてトレッドを広げたのだが、その手法が悪かった(順番的に仕方が無かったのだが)。
トレッドが広がった事で上がるロール剛性よりも、相対的なSPGレートが下がる事で下がるロール剛性の方が大きいので、慣性力が大きい高速コーナーではRR内輪が浮き上がる傾向になる。
1コーナーの比較
1ヘアの比較
ヘアピン系のコーナーは、195と比べて、ロールを抑えられる事でRR内輪に荷重が掛かる割合が大きいので、滑りながらも向きを変えられる点と、RRが低いのでハードブレーキングが可能な点が、195に対してのアドバンテージとなっている。
したがって、まずは、下がったRRのロール剛性を復活させる事を考える。
単純に考えればSPGレートを上げる方向だが、自分の目指すイメージ的にはもう少しコーナリング中の重心は下げたいので、むしろSPGレートは下げたい位。
なので、RRのアンチロールバーのレートを上げつつ、SPGレートも下げる。
そうする事で、外輪に荷重が掛かろうとしたときに、より早いタイミングで内輪の位置が下がる様にする。
ただ、単純にSPGレートを下げるだけだと当然ロールは増える方向なので、RR外輪のストロークが深い領域(50㎜位から?)でSPGレートが立ち上がる様に、アシストスプリングを使ってデュアルレートにする。
併せて、ステア操作初期からのロール量を抑える為に、前後共に車高を下げつつ、スタビリンク長も調整する。
FRの車高に関しては、バンプタッチする位置を確認して、現状のMAXストローク近辺でバンプタッチする様にセット長とプリロードを調整。
RRの車高は、セット長は短くしつつ、プリロードを掛ける方向でブレーキング時のRR位置は下げつつ、浅いストロークで下がったSPGレート分の反力もkeepする。
こんな感じだろうか。
あと、これらのセットとは別に、タイヤ内圧とキャンバーの最適化も行いたい。
特に、RRキャンバーは不足していると思うので、キャンバーボルトを使ってみるか、取付穴を改修する。
FRは既にキャンバーはMAXなので、アッパーマウントの改修が必要。
車両のバージョンアップとしては、トランクフードとルーフ部分の軽量化でロールを抑えるのと、アーム類の変更・改修。
併せて、データ取得関係では、センサーの追加やRaceDACの導入を行う。
クラッシュの修理も余り進んでいないが、パーツが揃うのに時間が掛かる上に、作業時間が取れないのが難点・・・。