
今日はいよいよ、富士山への道計画(The way plan to Mt. Fuji)が実行された記念すべき日となった。
富士山への1stチャレンジは来年の夏となるが、その前に近々の山々を制覇して経験を積むのが目的である。
なぜ最初の制覇地として「金時山」が選ばれたのか?
Y情報将校の幼少の頃の行動記憶により、小学5年生で登りました!という言葉に引きずられ、比較的楽な山と考えて本作戦の最初のターゲットとして急浮上したのが「金時山」である。
そのため、メタボリッカーな我々でも計画遂行が可能と大本営は判断したのである。
※おそらく我々の失敗は、既にここから始まっていたに違いない。
参加メンバーは、私こと富士山方面作戦司令長官と、ドクター・モロー少将、Y情報将校とうみんちゅ装甲擲弾兵である。
午前8時に小田原に集合の予定であるが、なぜか私は8時5分に根府川駅に降り立つこととなる。
おそらく、本作線に気づいた敵のダブルスパイにより、国府津駅にて睡眠薬をかがされ小田原駅を通過してしまったのに間違いはない!
仕方なく、小田原駅に戻るのに30分を要してしまい、作戦実行は「まるはちさんまる時少し過ぎ」となってしまった。
それは、まぁ良いだろう、些細な出来事は完全に忘れることにしよう。
小田原駅構内にて、あわただしく配給の軍事食ではなく地元の弁当と水とカップめん等々を購入する。
8:47
ドクター・モロー氏の回想録によれば、「もっと余裕をもった行動が出来たはずだ」との言もあるが、今は大雄山線に乗り遅れてしまうのでダッシュで電車に乗り込む。
電車内は一目でハイカーと分かる中高年が多数乗っているが、座れないほどでは無い。
大雄山駅で下車し、次はバスで地蔵堂まで進軍するはずであったが、秘密情報部よりもたらされた極秘情報が伝えられ、「到着するバスは既に満員で、乗れる隙間は無い」とのこと。
うむ、情報部ご苦労。
ここで待たされても仕方がないので、別途装甲車1台を緊急に徴用して地蔵堂へ。
地蔵堂への道のりで運転手の二等兵から地元情報を多数得ることが出来た我々は、目指していた山がずいぶんと先にあることに気づく。
それから、水の確保が出来そうな「夕日の滝」の情報も仕入れることが出来た。
ショボイ滝との情報であったが、「タキタキ、滝が見れるぞ!」と一行の表情もゆるむ。
9:24
地蔵堂に到着して、まずは記念撮影だ。
※写真は、これから地獄を見る我々がお賽銭にて神仏にすがろうとしている絵である。
「夕日の滝」までの最初の登りは、アスファルトによって作られた道のりで、傾斜はあるが楽なものだ。
ショボイ滝だと聞かされてきたが、キャンプ場と思わしき奥にある滝は、落差30mはありそうな立派な滝じゃないか。
なぜこれが「夕日の滝」なのかについては説明文を読まずに通過した。
さて、本道に戻り、「金時山」山頂に向けて進軍を再開する。
「発砲注意 ルールを守って正しい狩猟 神奈川県」 敵が潜んでいるかも知れない。
10:09
最初のトラップは「迂回路」だ。
行軍していると、明らかに我々の行く手を混乱させることが目的の道筋を示す道標が現れた。
この道標「迂回路」を前に4人で考え込む。
迂回路が指し示す先はどう見ても山の急斜面を登るルートにしか見えない。
このまま、まっすぐ行っても特に道が崩れているようにも見えない。
情報将校を斥候に出すが、道が無くなるようには見えないととのこと。
仕方がないので、モロー少将とY情報将校で「じゃんけん」をして勝ったY情報将校の意見により「迂回路」に方向転換する。
「迂回路」は険しい山腹を登るルートで、行く手を倒木や落石によって困難とさせるが、出てみると迂回前の道に戻ったように思える。
結局、この「迂回路」は正しいのか、単なるトラップなのか判別は不能のままである。
10:18
休憩をいれつつ進むと、現在のルートは「足柄山ハイキングコース」だが、「金太郎コース」への分岐点に出会う。
まぁ、どっちでも良いかとの雰囲気から、情報将校により「金太郎コース」を選択。
どちらにしてもこの先は「足柄峠・金太郎山ハイキングコース」ぶつかるようだ。
ここからの山道は、登り勾配がきつくなる。
バカ話に花を咲かせつつ、ただひたすらに歩き登る。
うみんちゅ装甲擲弾兵は、この辺りからペースが落ち始めている。
がんばれ、日本の夜明けは近いぞ。
11:29
ようやく、「足柄峠・金太郎山ハイキングコース」にぶつかり、目の前に鋭角的にそびえる「金時山」が見える。
史跡「猪鼻砦跡」に到着。
残り400mくらい、山頂まで40分の道標がある。
ここで、情報将校がエセ情報を発信し始める。
モロー少将「この山はどうやって登って行くの?」
情報将校「ぐるぐると巻いていきますね。」
モロー少将「ああ、そうやっぱりそうか」
11:54
じゃあ、俺が直登ルートを造ってやるゼ!とか、バカ話をしていたが、登ってみるとほぼ直登ルートでしかもかなりの急勾配。
このあたりから情報将校のエセ情報の信頼度が、急激に下がっていく・・・。
モロー少将「腹減った」を繰り返し、エネルギー切れが近いようだ。
急勾配の石段とアルミ梯子の連続。
上から下ってくる人とすれ違えない程狭い回廊に、休憩間隔が狭くなっていく。
がんばれ、頂上はもうすぐだ。
5歳くらいの子供に抜かされていく・・・・。
12:35
「天下の秀峰 金時山」 海抜1213m 静岡県小山町のデカイカンバンのある頂上にたどり着く。
山の頂上は狭いが、茶屋が2軒建っていて飲み物と食事は出来るようだ。
しかし、登頂者が多く座れないので少し下がった場所でお昼にすることにした。
弁当を食しつつ、持ってきた携帯コンロでお湯を沸かし、カップめんを作る。
この瞬間がたまらない。
これがあるから、生きていると実感出来る。
普段から、バクバク喰って居るそこのあなた、本当においしいと思って食べて居るんですか?
13:42
ずいぶんとゆっくりしてしまったが、急激に寒くなってきたので、山頂から撤退することにした。
仙石原湿原を目指す。
下りは滑りやすく、思いの外危険が多い。
が、やはり下りはスピードが出る
15:06
「公時神社」に到着。
境内の水を飲んでうまいと言うと、「そんなの飲む人はいないですよ」と。
そうですかね。
とりあえず、仙石原湿原のススキ草原を目指して行軍を再開。
15:53
ドクター・モロー少将、「賄賂が必要だ!」と叫ぶと同時にお団子を購入。
なるほど、中身は山吹色の小判が入って居るんだなと一人納得。
16:42
日帰り入浴「にごり湯」のカンバンに惹かれ迷いつつも、なんとか仙石原に入る。
しかし、既に日没となり暗くなり一行の体力も限界に近い。
そろそろ、どこかで入浴せねば・・・。
仙石原温泉をうろうろして、高級そうな湯宿に少将が突撃レポート。
すると、女将以下3人の着物の美女が一斉に並んで「いらっしゃいませ!」
日帰り入浴はやっておりませんとのこと。
いったい、ここの宿泊代はいくらなんだろうと勘ぐる我ら。
ほか2件の宿を当たるが、この日の宿泊客が多いため日帰り入浴はここでは無理と判断した。
バスで湯河原まで撤退することに決定。
やってきたバスの最後尾に陣取って、湯河原まで長い長い渋滞の間につかの間の休息と惰眠をむさぼる。
本当に長かった・・・
湯河原駅に到着したは良いが、日帰り入浴はどこが良いのか・・・
少将いわく、「この上にありますよ」
この上?
見上げると「カッパ天国」が!
気にはなっていたが、どこにあるんだろうと常々思っていた日帰り入浴の有名どころ。
何はともあれ、「カッパ天国」へ突入!!
しかし、惰眠をむさぼった我々だが足取りは重い。
ましてカッパ天国へ行くには、長い長い階段を上らねばならぬようだ。
ようやくたどり着いたフロントで750円を払って、湯はどこだ?
「この上です。」
何!?まだ上なのか?
さらに階段を上ってようやくたどり着くそこは・・・すべてが露天風呂といって過言ではないところだった。
真冬だと入りたくないところだのう。
しかも、カランも壊れかけていて満足に湯が出ない。
しかも外人が数名、日本の風呂の入り方で待ち行列を作る始末。
しかし、ともかくなんとか湯にありついた。
汗だくの我々には、ここでも天国だ。 まさに「カッパ天国」。
しかし、再び訪れることがあるかどうかは不明だ。
山を制覇し、湿原を制覇し、風呂にも入った。
あとは・・・・あとは喰うだけ、喰らうだけ。
当初より焼き肉を喰らうことだけは決めていたため、それ以外にはほぼこの飢えを満たせまい。
思えば山頂で食べた弁当とカップヌードルだけしか、エネルギー源として与えられていない。
半分は飢えた野獣のようなワコウドと、初老とはいえ腹減ったしか言わなくなった少将だ。
当然、何の遠慮会釈も必要の無い食い放題コースを選択するしかあるまい。
小田原駅までさらに撤退し、少将が見つけていた焼き肉食べ放題「ポチ牛」に向かう。
ほぼ半死半生の飢えた4人は、今まさに小田原の町に鎖を食いちぎるかのごとくに放たれた。
やってきた「ポチ牛」にて席を陣取ると、まずはスキッパラにビールを流し込んで
肉肉肉肉肉野菜肉肉肉肉肉野菜肉肉肉肉肉野菜肉肉肉肉肉野菜肉肉肉肉肉野菜肉肉肉肉肉野菜・・・
喰った・・・喰らうだけ喰った・・・もう跡はこの疲れ切った体を休める場所に戻るだけだ。
電車に乗り込み、泥のように蠢く生物の一団は、一人、又一人と駅から夜の闇に消えていった。
ところで、後日談がある。
最後に情報将校と別れ際に、私は「メガネ」を「ポチ牛」に忘れてしまったことに気がついた。
あわてて「ポチ牛」に電話すると「ありますよ」とのこと。
次の日、子供を連れて小田原観光がてらに昼間の「ポチ牛」に現れた。
「メガネ」はきちんと保管されていて、ちゃんと受け取りましたよ・・・