
「クルマの自動運転についてどう思いますか?」というお題への意見を、みんカラ運営部さんが
「何シテル?」のハッシュタグで募っていたので、自分も少し意見を書きました。私は子供の頃から自動運転に多少の興味があり、日進月歩で進展していく技術のニュースを時々ながらも気に留めていたこともあり、最近の注目度については好意的に見ているんですけれど、寄せられている反響を見る限り、やっぱり否定的意見が圧倒的多数ですね。そうだろうと思います。
ロボットに対する人間の不信感は根強いものです。このネタは私もあちこちで何度か書いてますけど、そもそもロボットという単語の発祥となった1920年の戯曲『
R.U.R.』からして、既にロボットが人間の仕事を奪うことによって生じる失業の問題や、ロボットが反乱を起こして地球の支配者として取って代わるという展開を扱った作品でしたし(
青空文庫で全文読めます)、また有名な「
ロボット三原則」も、三原則の矛盾に直面したロボットがバグって奇行を起こすという内容のSF小説が出自です(もちろん現実においてもバグとは故障ではなく、装置がプログラマーの命令を寸分違わずに実行した結果、命令内容の不備によって意図しない解釈に辿り着くという「人災」です)。
かのように人間の、ロボットに対する不信感は根強く、またロボットがSF上の産物だった頃から今まで解決できずにいる普遍的な感情であり、理屈よりも本能的な不安に根ざしているものなのだと思います。だからたとえ人間の運転より遥かに安全な、いっそ100パーセント事故を起こすことがないような、完璧な判断を下せるような自動運転車が完成したとしても、人間は「ロボットは信用できない」として排斥し続け、ロボットの潜在的な危険に不安を抱き続けるのではないか……というのが、私が「何シテル?」に書いた回答の意図です。
ロボットに対する不信感が普遍的なものであり陳腐化しない以上、例え人間以上に安全な自動運転が確立された未来においても、おそらく法律上は自動運転車にも人間のドライバーが乗り込んで運用し、法的責任を担う監督者、および非常時の交代要員として運転席に座り続けるような体裁になるのだろうと想像します。余程普及が進んでありふれた技術にならない限りは理解も進まず、漠然とした不安なイメージがつきまとい、将来に渡って偏見に根ざした反対意見が出続け、完全自動化が合法になるのは遠い未来であろうと思います。
でも、しかし、その一方で、人間は機械がミスをしたとき機械的にブレーキを踏むだけの、衝突被害軽減ブレーキ役としての境遇に耐えられそうにないことは、最近テスラの自動運転車が起こした事故が証明してしまっています。例えロボットは信用できない胡散臭い奴だったとしても、通常機械がするような仕事を任された人間は、あまりの暇さに耐えきれず、
DVDプレイヤーで映画でも見たりして時間を潰してしまうのでしょう。
人間は退屈な監視に耐えられないので、よそ見や居眠りを自動的に監視する装置を取り付けてみたり、罰則を強化したり、という方向で法整備が進むのかも知れません。その結果、例え自動運転が100パーセントミスをしないようになっても、法律なので仕方なく座らされているという意識の人は、あれこれ抜け道を探したり、軽度の違反を繰り返したり、自動運転中に運転手を置かずにツイッターに法律違反を自慢する写真を投稿したりして、罰則を受けたり、ネットで炎上したりといったことを繰り返すようになり、結果として地球上から自動運転による交通事故がなくなって法律が形骸化した後も、「やっぱり自動運転は違反を助長する危険な技術だ」という不名誉なイメージだけが未来永劫に渡って世間に定着していくのではないか……などという皮肉な未来に想像を馳せたりもします。安全になるほど体感治安が悪化するというジレンマです。
みんカラはそもそもクルマ好きの人のためのSNSということもあり、
ハッシュタグに寄せられた他の意見を見ていると、ロボットに運転する楽しみを奪われるのは嫌だという内容も多数派に見えます。ですが、これだけロボットが嫌われている以上、民主的なプロセスで選ばれた政権が自動運転を国民に強制するような日は来ないはずで、私は、それは杞憂だと思ってます。例えばMT車がごく希になった現代においても、AT車やDCT車のスポーティーなグレードにはパドルシフトが備わっているように、いつでも任意で自動運転とセミオートの手動運転を切り替えられるような装置は、どれだけ自動運転技術が安全になっても残り続けるんじゃないですかね。普段はロボットに干渉されていることを微塵も感じさせず、ロボットはドライバーが危険に瀕した時だけ運転を半自動的に手助けして、ドライバーは運転の楽しい部分だけをつまみ食いするように楽しめるという、そんな時代を予想するのは、むしろ人間のロボットへの不信感を悲観すればこその未来図であって、別に楽観視ではないと思っています。
Posted at 2016/07/24 17:03:50 | |
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