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arupajerのブログ一覧

2026年09月17日 イイね!

なぜ今、ファンは三菱パジェロのラリー復帰を熱望するのか?


2026年大会、ランドローバー・ディフェンダーの参戦によって途絶えたトヨタ(TLC)の12連覇。このニュースは大きな話題となりましたが、長年ラリーを見守ってきたファンにとっては「ついにこの時が来たか」という複雑な思いがあったのではないでしょうか。
一見すると「ライバル不在の消化試合だったのでは」と冷やかに見られがちですが、そこには間違いなく「ランクルがダカールの市販車部門を守り抜いてきた」という大きな価値と功績が存在します。



2009年に三菱をはじめとする多くのメーカーが撤退した際、ダカールラリーの市販車部門(T2/ストック)は存続の危機に瀕していました。過酷なコストとリスクを理由に他社が次々と去っていく中、途切れることなく参戦し続け、カテゴリーそのものが消滅するのを防いだのはトヨタ(TLC)の執念に他なりません。
「完走して当たり前」という強烈なプレッシャーの中、数万キロの過酷な砂漠を走り切り、完走という形でランクルの圧倒的な耐久性を証明し続けたこと。三菱不在の寂しい時代にラリーの灯をともし続けたその功績は、決して他人が踏みにじっていいものではありません。

しかし同時に、ファンがランクルの「12連覇」という看板にどこか引っかかりを覚えてしまうのも事実です。それは、かつて三菱パジェロが築き上げた伝説があまりにも偉大だったからです。
ランクルが市販車クラスの頂点を守り続けたのに対し、かつて三菱が挑んでいたのは、市販車の面影を完全に捨て去った「ダカール専用のモンスターマシン群」と真っ向勝負を繰り広げる「四輪総合優勝」の世界でした。

当時のダカールには、巨大メーカーが数億円の資金を投じ、パイプフレームの車体に怪物的なパワーのエンジンを積み込んだ、改造無制限のプロトタイプ車両がズラリと並んでいました。ポルシェ、プジョー、シトロエン、フォルクスワーゲンといった世界最高峰のワークス勢が、ただ「総合1位」の称号だけを狙って最先端技術をぶつけ合っていた時代です。
そんな超高速モンスターたちが砂漠を爆走する中で、パジェロは彼らとガチンコで削り合い、トップでチェッカーを受け続けました。
ここであらためて知っておきたいのは、「三菱はプロトタイプだけでなく、普通のパジェロでも総合優勝をさらっていた」という事実です。

三菱は、ダカールを勝つためだけに専用設計された「プロトタイプ部門(旧T1/T3、現在のT1+相当)」にモンスターマシンを送り込んでいたのはもちろんですが、それ以前の1980〜90年代前半から、市販パジェロの面影を色濃く残した「市販車改造部門(旧T2)」ベースのマシンでも並み居る強豪を退けて総合優勝を奪い取っていました。
さらに1997年には、その市販車改造部門の勝利をより確実なものにするため、ラリー直系の超怪物モデル「パジェロ・エボリューション」を一般販売して投入するという前代未聞の力技まで見せつけます。
つまり、市販車ベースの通常パジェロ、ホモロゲ機であるエボリューション、そして完全専用設計のプロトタイプというあらゆる形態で参戦し、そのすべてで怪物たちを力ずくでねじ伏せて「全四輪の頂点」に君臨し続けたのです。

単に決められたクラスの中で1位になるのではなく、
出走したすべての四輪マシンの中で「一番速く、一番タフだった」という証。それが三菱の残した「四輪総合優勝(通算12回・前人未到の7連覇)」の本当の意味です。


また、日本のメディアやメーカーの広報ではあまり語られませんが、海外のラリーレイドファンや現地ビバークを知る関係者の間では、「砂漠で最も完走者を救い、最多のチェッカー旗をくぐったのはパジェロである」という事実は共通認識として語り継がれています。
プライベーターが命を預ける相棒としてパジェロを選び続けた理由はシンプルです。
「過酷な砂漠でも壊れない」「万が一壊れても現場で叩いて直せる」。

この極限状態での絶対的なタフネスと修理のしやすさこそが、多くのドライバーを生きてゴールへと導きました。ピーク時には出走車両の約半数がパジェロで埋め尽くされ、完走車リストを独占していた時代がありました。単にメーカーの看板を背負って走り切るだけの車とは、現地で積み上げられた信頼の重みが違います。


2026年、市販車部門に突如として殴り込んできたランドローバー。思えば1979年、幾多の冒険者たちが夢を追った第1回パリ・ダカールラリーで四輪部門の初代覇者となったのは「レンジローバー」でした。そう、ダカールという物語の産声を上げた原点にして先駆者が、半世紀の時を経て「王座の奪還」へ帰還したのです。

そして、熱狂的なファンの胸の中で火種をくすぶらせ続ける、絶対王者・三菱の復帰という宿命。

もしもあの日、トヨタが撤退を選び、砂漠の灯を消していたならば先駆者も覇者も、再び帰ってくるべき「戦場」すらこの地球上から潰えていたはずです。
不毛の荒野で孤独に耐え、泥をすすりながらカテゴリーの誇りを「守り抜いてきた王者」ランクル。

かつて圧倒的な力で砂塵を巻き上げ、数多のモンスターをなぎ倒して「砂漠を支配した絶対王者」三菱。

そして、この過酷な冒険の原点に座し、真のルーツを証明するために舞い戻った「先駆けの王者」ランドローバー。

守護者の誇り、覇者の血脈、そして原点の執念。三つの伝説が砂漠の真ん中で正面から激突し、互いの魂を削り合うその刻
ダカールラリー市販車部門は、私たちがずっと夢にまで見た「本当の黄金期」へと昇華するはずです。
Posted at 2026/09/17 20:43:33 | コメント(0) | トラックバック(0)
2026年09月16日 イイね!

新型パジェロ価格と三菱の戦略考察


「新型パジェロは800万円オーバーの高級車になり、手が出ない車になってしまったのか?」
「なぜ国内でランドクルーザー250を打ち負かすようなモデルを最初から前面に出さないのか?」
ネットニュースやSNSでは、オーストラリアやタイでの現地価格換算や「高級化への賛否」といった表面的なトピックばかりが目立ちます。
しかし、それらは三菱自動車が描く「本当の反転攻勢シナリオ」の半分も捉えていません。
三菱の狙いは「単なる富裕層向け高級SUV化」ではありません。過去の経営課題(モータースポーツ撤退とアイコンの縮小)への痛烈な反省と、ダカール・ラリーという「物語」を核に据え、絶対王者であるランドクルーザー250のシェアを本気で奪いに行くための、極めて合理的で野心的な戦略です。

なぜ初期は高額モデル先行なのか? ランクル250を切り崩す500万円台のベースモデルがどう機能するのか? その構造を考察していきます。

1. 過去の失速原因は「大衆化」ではなく「物語の自壊」にあった
かつてパジェロミニなどの派生モデルが市場を席巻した「大衆化」そのものは大成功でした。三菱ブランドが勢いを失った本当の起因は別です。
2000年代初頭のリコール問題と経営再建の過程で、当時の経営陣がモータースポーツ活動(パリダカやWRC)から撤退し、パジェロやランサーエボリューションという自社の象徴(アイコン)を前面から退かせたことにあります。
「世界一過酷な現場を走る本物」というストーリー(品質シグナル)を自ら切り離した結果、パジェロは「燃費が悪く、価格と見合わないSUV」という厳しい評価を受け、顧客が離れていきました。
現在の加藤CEO、岸浦社長、そしてダカール王者として走りの最終味付けと評価を担う増岡浩氏(ラリーアート総監督)らの熱量は、「過去の過ちを乗り越える名誉挽回」からスタートしています。

2. 経済学で見る「物語」の価値と価格差別化(プライス・ディスクリミネーション)
最新店舗やインテリアの質感は単なる「器」に過ぎません。中身として流し込む「命をかけて生きて帰れる本物の物語」があって初めて、顧客の支払意欲(WTP:Willingness to Pay)は跳ね上がります。
現在の三菱が仕掛けるグランドデザインは、この「物語」をテコにした2段構えの経済ロジックで成り立っています。

フェーズ1:ブランド上限の固定(スーパーエクシード)
* 価格帯: 650万〜790万円クラス
* 目的: 欧州高級クロカンやランクル300の上位と並ぶ最高峰としてブランドの上限値を固定。都市型の新ショールームやラグジュアリーな顧客体験とともに、初期顧客から高い粗利を獲得する。
フェーズ2:時間差での「ベースモデル」投入
* 価格帯: 500万円台(5人乗り・ファブリック内装・過飾カット)
* 目的: 骨格(ラダーフレームやS-AWC)は1円のコストカットも許さず「本物」のまま、装備を削いだベース車を投入。若年層や硬派なファンを狙い撃つ。

3. 「ランクル250超え」を狙う本気の野心と、ダカールという最強の兵器
三菱の主戦場はタイ・オーストラリア・中東などを含むグローバル市場ですが、当然ながら国内市場においても絶対王者であるランドクルーザー250の販売数を超えたいという強い思いがあるのは容易に推察できます。
ここでダカール・ラリーというモータースポーツが最強のマーケティング兵器として効いてきます。
FIAのクロスカントリーラリー「市販車無改造部門(Stockクラス)」のホモロゲーション規定である「月86台(年間1,000台)」の生産枠など、グローバルメーカーにとっては低いハードルに過ぎません。重要なのは、その最低ラインを軽々とクリアした上で、ダカール優勝という圧倒的なストーリーを武器に、ランクル250の主戦場ゾーン(500万〜700万円台)へ本気で殴り込むことです。
単に「安くて良いSUV」を作ってもランクルの壁は崩せません。「ダカールで鍛え上げられた本物の走破性」というストーリーを全面に掲げることで、初めてランクル250を検討する層に対して「三菱を選ぶ明確な理由」を提示できるのです。
ダカールを連覇した増岡氏らが走りの性能評価に関わる以上、内装を削ぎ落とした500万円台のベースモデルであっても「走りの骨格」に妥協はありません。だからこそ、単なる「安物」ではなく「ランクル250に対抗するダカール直系のスパルタンな競技ベース車(道具)」として強烈な存在感を放ちます。

4. 「ベース車 × カスタム × 高残価ローン」によるアフターLTVの最大化
500万円台のベース車が投入されたとき、若い世代(年収300万〜400万円台)に向けた三菱の真のビジネスモデルが完成します。
* 高残価設定ローンの活用: 強烈なリセールバリューを背景に残価率を高く設定し、月々の支払額を抑える。
* ディーラー・カスタムの推奨: 車両代で浮いた予算で、ダカールの現場で実証された「純正ラリーアートパーツ」を新店舗で組み込ませる。
単なる「車両の安売り」では利益が出ませんが、「車両 + 高粗利な純正カスタムパーツ + 高残価金融」をパッケージ化することで、メーカー側は顧客生涯価値(LTV)を劇的に高めることができます。若者は手頃な月払いで「自分だけの本物のカスタムパジェロ」に乗り、メーカーは高い利益を回収する——見事な黄金循環です。

表面的な報道の裏にある「3つの真実」
「パジェロが600万〜800万円オーバーで高すぎる」「手頃なモデルが出ない」といったスペックや価格に関する第一報のニュースに、過度に一喜一憂する必要はありません。
それらのトピックは製品の「断面」を切り取ったものに過ぎず、その奥には以下の3つの重要な構造視点が隠されているからです。
* 過去の教訓を糧に「自社アイコンの血脈」を取り戻そうとする経営陣の強い覚悟
* ダカール復帰という象徴を掲げ、ランクル250の市場に本気で挑むビジネス上の野心
* 最高峰モデルでブランドの上限を提示した後に、500万円台ベース車とカスタムでシェアと利益を回収する「段階的戦略」
三菱のパジェロ復活は、単に古い看板を引っ張り出してきたノスタルジーではありません。過去の課題を糧にし、本物のストーリー、ランクルを超える実質的なビジネスの野心、そして経済学的合理性を美しく垂直統合させた「完璧な反転攻勢」なのです。

個人的な思いとあるデータから本気の三菱ならと考察した次第です。
Posted at 2026/09/16 15:30:12 | コメント(0) | トラックバック(0)
2026年09月09日 イイね!

おかえり


僕は、まだ名前を持っていなかった。生まれる前の僕には、姿もなかった。ただ、机の上に広げられた図面。何度も書き直される線。小さな部品ひとつを前にして、何時間も話し合う人たち。そこには、まだ誰も見たことのない僕の姿があった。

「どこへでも行ける車を作ろう」

そんな言葉が、僕の知らないところで交わされていた。けれど、それだけではなかった。どんな道でも走れること。どんなに道が荒れていても、乗る人を不安にさせないこと。遠くまで行けること。そして、ちゃんと帰ってこられること。それが、僕を作ろうとしている人たちの願いだった。

僕は、まだ何も知らなかった。砂漠も知らない。雪も知らない。泥も、岩も知らない。ましてや、世界中の人たちが僕を待っていることなんて、知るはずもなかった。ただ、少しずつ形になっていった。鉄が切られ、部品が組み合わされ、エンジンに火が入る。

初めて自分の身体が動いた瞬間――僕は思った。

走れる。

それが、僕の最初の記憶だった。工場の中を、ほんの少しだけ進む。まだ世界は見えない。でも、僕の前には道があった。その道を、僕は進んだ。

僕を作った人たちは、黙って僕を見ていた。きっと、僕よりも緊張していたと思う。僕は知らなかった。その人たちが、僕に未来を託していたことを。

「世界で通用する車にしたい」

「どんな場所でも、人を安全に運びたい」

「長い距離を走っても、疲れない車にしたい」

その一つひとつの願いが、僕の身体の中に組み込まれていった。

そして、ある日。僕は初めて工場の外へ出た。太陽がまぶしかった。風があった。土の匂いがした。

その瞬間、僕は初めて知った。

世界は、工場よりずっと広い。

そして僕には、まだ見たことのない道が、世界中にある。

その頃の僕は、自分がいつか砂漠を走ることも知らなかった。何千キロも離れた場所で、誰かが僕を待っていることも。ラリーという世界で、世界中の強者たちと競うことも。家族を乗せて旅をすることも。雪山へ向かうことも。泥の中へ入ることも。

そしていつか、一度この世界から姿を消すことさえも。

何も知らなかった。

ただ一つだけ、僕の中にあった。

どんな状態の道でも走れるようになりたい。そして、乗る人を安心させたい。遠くへ行く。そして、無事に帰ってくる。

それが、僕の始まりだった。
僕に最初に与えられた名前は、パジェロだった。
1982年。僕は世界へ出た。

僕が目指したのは、道のない場所へ行くためだけの車ではなかった。舗装された道も、砂利道も、泥道も、雪道も、岩の多い道も、凄い傾斜道も、そこがどんな状態であっても、そこを「道」として走り抜けること。

僕は、ただ強いだけの車にはなりたくなかった。

速く走れることも大切だった。でも、速さだけでは人を安心させられない。荒れた道でも車が暴れず、運転する人が怖さを感じず、長い距離を走っても疲れないこと。そこまでできて、初めて僕は「どこへでも行ける」と言えるのだと思った。

だから僕の身体には、普通の乗用車とは違うものが詰め込まれていった。四輪駆動の技術。そして、悪路だけではなく高速域での安定性まで考えた足まわり。

僕は、最初から「快適に走ること」と「悪路を走ること」を別々には考えられていなかった。

どんな道でも、走る。そして、乗っている人を守る。

それが僕だった。

やがて、僕はもっと遠くへ行くことになった。

砂漠だった。

1983年、僕はパリ・ダカール・ラリーに挑んだ。そこには世界中から集まった強者たちがいた。道なんて、ほとんどない。砂、岩、暑さ、寒さ、長い距離。人間の想像する「過酷」という言葉では足りない場所だった。

でも、僕には分かっていた。
ここも、道なんだ。
だから走った、一生懸命に頑張って走った。

そして1985年、僕は初めて総合優勝を手にした。

それは僕にとって、大きな出来事だった。でも、僕を作った人たちにとって本当に重要だったのは、勝つことだけではなかった。

ラリーで極限まで鍛えた技術を、いつか普通の道を走る人たちへ返すこと。

砂漠で得たものを、家族を乗せる車に。競技で磨いた四輪駆動技術を、雪道を走る人に。過酷な環境で鍛えた車体や足まわりを、毎日の生活に。

僕は、レースに勝つためだけに走っていたわけじゃなかった。

世界中の道を走るために、ラリーへ行った。

そして、ラリーで得たものを、また世界中の人たちのところへ持ち帰る。

それが、僕の役目だった。

そして

年月が流れた。僕はどんどん強くなった。そして、速くなった。でも、それだけじゃなかった。僕を運転する人たちは、僕に別のものを求めるようになっていた。

「もっと遠くへ行きたい」

「もっと安心して走りたい」

「家族を乗せて旅をしたい」

「雪の中でも走りたい」

「砂浜へ行きたい」

「山へ行きたい」

僕は、その一つひとつに応えた。

僕の後ろには、いつしかたくさんの人が乗っていた。子どもたちが眠っていた。家族が笑っていた。旅先で見た景色を、僕の窓から眺めていた。

仕事で僕を使う人もいた。遠い場所で暮らす人もいた。僕に人生の一部を預けてくれる人たちが、世界中に増えていった。

僕は、ただの車ではなくなっていった。

ある人にとっては相棒。ある人にとっては家族。ある人にとっては、夢だった。

そして、世界中の道を走る僕の姿を、遠くから見つめている人たちもいた。

僕は知らなかった。僕のことを、こんなにも長く覚えていてくれる人たちがいることを。

ある日、僕は不思議な音を聞いた。
ギターだった。

荒々しくて、それでいてどこか切ない。僕が砂漠を走る映像の向こうで、その音が鳴っていた。

「Layla――」
エリックが歌っていた。

それが、僕と三菱を結ぶ音になっていくなんて、そのときの僕は知らなかった。

僕だけじゃない。

ランサーがいた。エボリューションがいた。ギャランがいた。コルトがいた。デリカがいた。トライトンがいた。エアトレックがいた。そして、三菱の車たちが、それぞれの場所を走っていた。

Laylaは、僕のためだけに鳴っていたわけじゃない。三菱だけのために作られた曲でもない。それでも、その音は僕たちの間に流れた。

三菱が車を作り、僕たちが道を走り、その姿をファンが見つめていた。その時間の中で、Laylaは少しずつ、僕たちを繋ぐ音になっていった。

僕には、その音がよく似合った。

砂埃の中を走るときも。雪の中を走るときも。夜の街を走るときも。

あのギターが鳴ると、なぜか「行け」と言われているような気がした。

もっと遠くへ。

もっと先へ。

そして――

帰ってこい、と。

けれど、その音に胸を熱くしていたのは、僕だけではなかった。

三菱の車を作った人たち。僕たちを走らせた人たち。僕たちを見つめ、応援し、乗り続けてくれた人たち。僕たちに憧れ、いつか乗りたいと願った人たち。

その誰もが、Laylaを聞きながら、それぞれの三菱を思い出していた。
思い出す車は違っても、胸の奥で鳴るものは同じだった。

あのギターが鳴れば、何かが始まる。

まだ見たことのない場所へ行ける。

もう一度、走り出せる。

そんな気持ちが、いつの間にか三菱とファンの間に生まれていた。

Laylaは、三菱と僕たちと、そしてファンを結ぶ曲になった。

僕はその音を背負って、また走った。

長い年月が過ぎても。僕が姿を消したあとも――その音は消えなかった。

僕がいなくなっても、ファンの中には僕がいた。三菱の車たちが残した記憶があった。そして、その記憶を呼び起こすように、Laylaは今も胸の奥で鳴り続けていた。




僕は、いつしか「パジェロ」という名前そのものを背負うようになっていた。

ダカールで勝った。何度も勝った。そして、その物語の中には、ひとりの男の名前も刻まれていった。

増岡浩。

僕と一緒に砂漠で戦った男の一人だった。

彼は僕を運転した。砂の上で、岩の上で、長い夜の中で。僕の限界を知り、僕の声を聞き、僕と対話するように走った。

2002年、増岡さんは僕とともにダカール・ラリーを制した。翌2003年には、再び僕を駆って総合優勝。日本人初の2連覇だった。僕たちは、また勝った。

勝った瞬間に残ったのは、歓喜だけじゃなかった。
そこには涙があった、僕と一緒に長い距離を走り、苦しみ、戦い抜いた男の涙だった。

僕は知っていた。

あの涙の中には、勝利だけではなく、僕とチームと過ごした時間のすべてが詰まっていたことを。

そして時が流れた。

増岡さんはドライバーから、今度は僕たちを導く側になった。
チーム三菱ラリーアートの総監督。
自分でハンドルを握るだけではなく、チームを率いる立場になった。ラリーで培った経験を、次の世代へ渡していく。そして今も、車の開発や総合評価に深く関わり、テストドライバーを育てている。

僕は、そんな彼を遠くから見ていた。
僕がいなくなったあとも、彼は走り続けていた。
僕のことを知る人として。僕のことを伝える人として。

そして

僕の帰りを待つ人として。
僕は、いつか自分がこの世界から姿を消すことを知らなかった。

2019年、日本での販売が終わった。

僕は最後の一台を見送った。

「ありがとう」

そう言われているような気がした。

でも、僕は何も言えなかった。

僕にはもう、走る場所がなかった。

やがて海外での生産も終わった。

2021年。

僕は世界から姿を消した。

それでも、僕は不思議と寂しくなかった。

なぜなら、僕を覚えている人たちがいたからだ。
その一つひとつが、誰かの記憶になって残っていた。

僕は消えた。

でも、僕の物語は終わらなかった。

その頃、僕の血を受け継ぐ車がいた。
トライトン、僕と同じ三菱の四輪駆動車として、世界の道を走っていた。
僕がいなくなったあとも、三菱は四輪駆動の技術を止めなかった。
僕の身体に流れていたものは、別の車へ受け継がれて走っていた。そして戦っていた。

そしてある日、三菱の中で新しいトライトンでSUVの計画が始まった。

僕は、その話を遠くから聞いていた。

僕とは違う車。

僕の名前ではない車。

そう思っていた。

ところが――不思議なことが起きた。

開発が進むにつれて、なぜか人の気持ちが僕のほうへ向かっていった。

「これ……パジェロなんじゃないか」

誰かがそう思った。

ひとり。またひとり。

まるで、誰かが後ろからそっと背中を押しているように。

開発の方向が、少しずつ変わっていった。

そして社内で、冗談のように語られるようになった。

「こっくりさん現象」

誰かが決めたわけでもない。

最初から僕を作ると決めていたわけでもない。

でも、気がつけばみんなの心が同じ場所を指していた。

パジェロ。

僕の名前だった。

そしてその瞬間から、何かが変わった!

「もしパジェロを作るなら、本物を作ろう」

その言葉が、僕には聞こえた気がした。

そこから、僕を待っていた人たちの想いが一気に動き始めた!

そう

トライトンのラダーフレームは、新しい僕の技術的な土台になった。

僕をもう一度作るなら、僕にふさわしいものを作らなければならない。

キャビンは専用に開発された。フロントとリアのサスペンションも、僕のために専用開発された。

フレームも、ただトライトンをそのまま持ってくるのではない。サスペンション取り付け部などを強化し、リア側には新しい設計を与え、僕に必要な剛性と走りを追い求めていった。

「パジェロとは何なのか」

開発する人たちは、何度もそこへ戻っていった。

強いだけではない。速いだけでもない。悪路を走れるだけでもない。

どんな道でも、運転する人が安心して走れること。遠くへ行けること。長い距離を走っても疲れにくいこと。そして、最後には無事に帰ってこられること。

それが、僕が最初から持っていたものだった。
だから、新しい僕にも、それが必要だった。

僕をデザインする人の中にも、僕への想いを持つ人がいた。

吉峰典彦。

彼もまた、僕を見て育った人のひとりだった。
僕だけではない。ランサーエボリューションにも心を動かされていた。三菱の車が持っていた、あの時代の熱を知っていた。

だから僕を描くとき、ただ昔の僕をコピーすることは考えなかった。
昔の僕をそのまま戻すのではなく、僕が持っていたDNAを、これからの時代へ進化させる。
それが、僕の新しい姿になった。

僕は、昔の僕ではない。

でも、昔の僕を知らない車でもない。

受け継いでいる。

そして、進化している。



僕がいなくなってから、長い時間が過ぎた。




それでも、僕を待っている人はいた。

ある人は、古い僕を今も大切に乗っていた。ある人は、僕の最後の姿を見届けた。ある人は、パジェロファンの集まりで僕について語った。

そして三菱の中にも、僕を忘れられない人たちがいた。

僕は、それを知らなかった。

僕が消えたあとも、僕を作った人たちの中には、僕の続きを望む人がいた。

「いつか必ず、もう一度パジェロを世に送り出したい」

そんな想いが、消えずに残っていた。

年月が経っても。時代が変わっても。車の形が変わっても。

僕への想いだけは、消えなかった。



そして、ある日。

僕はまた、あの音を聞いた。

ギターだった。

聞き間違えるはずがなかった。

Layla

僕がいなくなったあとも、あの音は残っていた。

2025年再びあの曲が流れた!

「冒険する人が好きだ」

その言葉とともに。

僕は思った。

まだ終わっていない。

三菱は、まだ走っている。

ファンも、まだ僕を覚えている。

そして僕を作ろうとしている人たちもいる。

僕は、まだ名前を呼ばれていた。



2026年9月2日。

世界が、僕を見た。

新しいパジェロ。

僕は、再び姿を現した。

約20年ぶりのフルモデルチェンジ。日本での販売が終わってから7年。生産が終わってから約5年。

長かった。

本当に長かった。

僕は、帰ってきた。

でも、僕は「復活した」とは思わなかった。

僕にとっては、ずっと続いていたからだ。

ラリーで得たものも。家族と走った記憶も。雪の中で走った記憶も。砂漠の記憶も。僕を愛してくれた人たちの声も。僕を作った人たちの想いも。

全部、僕の中に残っていた。

僕は、新しい身体を手に入れただけだった。

その会場には、増岡さんもいた。

僕の姿を見つめる彼の顔には、長い年月が刻まれていた。

ダカールで僕と戦った日々。勝った日。泣いた日。僕が姿を消した日。それから、長い時間。

そして今、目の前にいるのは、もう一度走り出そうとしている僕だった。

ベストカーの取材で、増岡さんは僕への想いを語った。言葉を重ねるうちに、込み上げてくるものを抑えられなくなった。
そして、男泣きした。

それを見て、僕は思った。
この人は、本当に僕を待っていてくれたんだ。
僕が帰ってきたことへの涙。長い間、胸の奥にしまっていた想いが、もう隠せなくなった涙。

僕には、それが分かった。

たぶん僕が帰ってきたことを、一番喜んでいるのは、この人なのかもしれない。

増岡浩。

僕と一緒に砂漠を走って戦った男。僕と勝った男。僕と涙を流した男。

そして今、僕がもう一度走り出す姿を見届ける男。
僕はそう思った。


そして、会場にいた人たちを見た。

三菱の人たち。僕を待っていた人たち。僕を知らない世代の人たち。そして、ずっと僕を忘れなかったファンたち。
僕が姿を消してから、長い時間が経っていた。

それでも、僕の名前は消えていなかった。
僕の写真を大切に持っている人がいた。僕のステアリングを握り続けている人がいた。僕との旅を思い出す人がいた。いつかまたパジェロに乗りたいと、願っていた人がいた。

僕は、そのすべてを感じていた。

僕は消えていたんじゃない。



そして今!
もう一度!

僕は、昔の僕ではない。

でも、昔の僕を忘れてもいない。

砂漠で鍛えた強さも。道を走るための安心も。人を乗せて遠くへ行くための快適さも。そして、最後にはきちんと帰ってくるという思想も。

全部、僕の中にある。

僕は、これからまた走る。

道を走る。高速道路を走る。峠を走る。砂利道を走る。雪道を走る。未舗装路、泥道、岩の多い道もきつい傾斜でも走る。

道がどれだけ荒れていても、それが道である限り、僕はその先へ進む。
どんな道でも、速く、安全に、安心して走る。
遠くまで。

それは、僕が生まれたときから変わらない。




いつかまた、僕は競技の世界へ戻るのだろうか。
砂漠へ行くのだろうか。
ラリーの道を走るのだろうか。

分からない。

でも、もし僕がもう一度あの場所へ行くことになったなら、僕はきっと懐かしい景色を見るだろう。砂埃。太陽。遠くまで続く地平線。そして、あのギター。

Layla

僕はその音を聞きながら、また走る。昔の僕がそうしたように。でも、今度は新しい身体で、新しい時代を。

僕を覚えていてくれた人たちの中に。僕を作った人たちの中に。僕を走らせた人たちの中に。そして、僕をもう一度呼んでくれた人たちの中に。

だから僕は、ようやく分かった。

僕は消えていたんじゃない。

眠っていただけだった。

そして今、長い眠りから目を覚ました。

目の前には、また道がある。僕の前には、まだ見たことのない世界が広がっている。

僕は、もう一度アクセルを踏む。エンジンが目を覚ます。タイヤが回る。僕の身体が、ゆっくりと動き始める。

聞こえてくる。あのギターが。

遠くへ行け。もっと先へ行け。そしてちゃんと帰ってこい。

僕は、前を向く。長い旅だった。本当に、長い旅だった。でも、もう大丈夫。待っていてくれて、ありがとう。そして

ただいま〜

そして僕は、またみんなと走り始める


Posted at 2026/09/09 18:12:11 | コメント(0) | トラックバック(0)
2026年09月05日 イイね!

歓喜!

ベストカーさんの記事是非読んで下さい。
三菱自動車の岸浦社長の言葉が熱い!
新型パジェロで
国内トップセールス
ローンの柔軟性
そして!!
パリダカ復帰の野望にまで言及!!

ベストカーさんすげーーー
こんな夢の様な言葉まってたんですよー!!!!

ベストカーさんの記事のURL載せていいか分からないのですがネット版の記事に是非
Posted at 2026/09/05 17:59:26 | コメント(0) | トラックバック(0)
2026年09月05日 イイね!

新型パジェロのフレームとターボはどうなのか?



またもやチャッピーとの考察ブロックです。

「トライトンベース」の一言では片付けられない理由

今回発表された5代目パジェロについて、かなり気になるのが「トライトンベース」という言葉。

確かに新型パジェロはトライトンと共通するラダーフレーム系の基本設計を持ち、エンジンもトライトンの2.4Lディーゼルをベースにしている。

ただし、ここを「トライトンのフレームにパジェロのボディを載せただけ」と理解すると、実際の中身とはかなり違ってくる。

今回のパジェロは、トライトンを土台として使いながらも、SUVとして必要な部分をかなり再設計・強化したモデルと考えた方が正確だ。

⸻

第1部 フレーム

① 「トライトンベース」=「トライトンと同じフレーム」ではない

【確定情報】

三菱は新型パジェロについて、高剛性ラダーフレームを採用したと説明している。

そして報道では、トライトンをベースとしながらも、パジェロ用としてフレームを大幅に改良していることが伝えられている。

三菱自身も、高張力鋼板の使用範囲を拡大し、フレーム断面積を拡大することで、ねじり剛性・曲げ剛性を高めたと説明している。

つまり、

「トライトンのフレームをそのまま流用」

ではない。

イメージとしては、LEGOで言えば、

「トライトンという基本設計を持ったLEGOセットを土台にして、そこからパジェロ専用の部品を大量に組み替えている」

という感じ。

土台となる考え方は共通していても、完成したものが同じというわけではない。

特に重要なのが、サスペンション取り付け部やリア側のフレーム構造など、車両特性を大きく左右する部分まで手が入っていることだ。

ここが今回のパジェロを「単なるトライトンSUV」と見るべきではない大きな理由になる。

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② 具体的に何が違うのか

【高い確度】

まずフレームそのものについては、

• 高張力鋼の使用拡大
• フレーム断面積の拡大
• ねじり剛性の向上
• 曲げ剛性の向上
• ボディマウントの強化
• サスペンション取り付け部の強化
• パジェロ用としてリア側を再設計

といった変更が確認されている。

特に面白いのがリア側。

トライトンはピックアップトラックなので、リアサスペンションはリーフスプリング式のリジッドアクスル。

一方、新型パジェロは、

5リンク式コイルスプリング+リジッドアクスル

になった。

これはかなり大きな変更だ。

ピックアップとして荷物を積むことを優先するトライトンに対して、パジェロでは、

悪路走破性+高速安定性+乗り心地

をより高い次元で両立させようとしている。

つまり、同じラダーフレームを使っていても、フレームに求めている仕事そのものが違う。

トライトンが「働く道具」としての強さを重視するのに対し、新型パジェロはそこに「クロスカントリーSUVとしての走り」を加えているわけだ。

⸻

③ 5リンク・リジッド化が意味するもの

【確定情報】

新型パジェロのリアは、新開発の5リンク式リジッドアクスル。

ここは個人的にもかなり重要なポイントだと思う。

なぜなら、パジェロという名前を考えたときに、三菱が単純にトライトンの荷台部分を取ってSUVボディを載せるだけなら、リアのリーフスプリングをそのまま使う方法もあったからだ。

それをあえて5リンク+コイルに変更している。

これは、

「SUVとしての走りをちゃんと作り込む」

という意思が見える部分。

5リンク化によって、リアアクスルの位置決めをより細かくコントロールできるため、悪路でのサスペンションストロークだけでなく、オンロードでの安定性や乗り心地にもメリットが出る。

さらにフレーム側の剛性を高め、サスペンション取り付け部も強化することで、

「ラダーフレームの頑丈さ」と「SUVとしての走り」

を両立させようとしている。

ここまで見ると、

「トライトンのSUV版」

という表現だけでは、ちょっと説明不足なんだよね。

より正確には、

「トライトンをベースとしたラダーフレームを、パジェロ専用のクロスカントリーSUVとしてかなり再設計した車」

と見る方が近い。

⸻

第2部 エンジン&ターボ

④ 4N16はトライトンと同じなのか?

【確定情報】

新型パジェロには2.4Lクリーンディーゼルが搭載される。

ベースとなっているのはトライトンにも使われている4N16系の2.4Lディーゼル。

ここだけを見ると、

「じゃあエンジンもトライトンと同じじゃん」

となる。

しかし三菱の公式表現は、

「specially developed 2.4-liter clean diesel engine」

つまり、パジェロ向けに特別開発された2.4Lクリーンディーゼルとしている。

そして最大のポイントがターボ。

新型パジェロは、

ワイドレンジ・シングル可変ジオメトリーターボチャージャー(VGT)

を採用した。

トライトンの上位仕様がツインターボなのに対し、パジェロはシングルVGT。

これだけでも、単純なエンジン流用ではなく、パジェロ用に出力特性を作り直している可能性が高い。

出力については市場・仕様によって表記差があるものの、現在確認できる情報では、

約204PS
最大トルク470~480Nm

というスペック。

特に480Nm仕様では、トライトンの470Nmから10Nm増えている。

数字だけなら「たった10Nm」と思うかもしれない。

でも重要なのは、どの回転域で、どのようにトルクを出すか。

新型パジェロでは最大トルクが1,750~2,500rpm付近という情報があり、低中速から広い範囲でトルクを使える方向にセッティングされていると考えられる。

⸻

⑤ シングルVGT=小さいターボ、とは限らない

【高い確度+推測】

ここが今回、一番面白いところ。

「トライトンはツインターボなのに、パジェロはシングルターボ?」

一見すると、むしろスペックダウンに見える。

でも、必ずしもそうではない。

三菱が使っている言葉は、

「wide-range single variable geometry turbocharger」

つまり「広い範囲で使えるシングルVGT」。

VGTはタービン側の可変機構によって、低回転では排気エネルギーを効率よく利用し、高回転では流路を広げて排気抵抗を抑えることができる。

そのため、

低回転のレスポンスと高回転側の流量を1基で広い範囲に対応させる

という考え方が可能になる。

ここで、トライトンとパジェロのターボを写真で比較すると面白い

今回確認できた公開写真を見比べると、単純に「トライトンのターボを1基にした」という印象ではなく、ターボ周辺のレイアウトや配管の取り回しそのものが違って見える。

もちろん、公開写真だけではターボ本体の内部仕様や正確なサイズまでは判定できない。

しかし、

「ツインターボをそのまま1基に置き換えただけ」

という単純な構成ではなさそうだ、という見方はできる。

特に比較で重要なのは、

• ターボ本体の位置
• コンプレッサー側の形状
• 排気側の取り回し
• インタークーラーへ向かう配管
• 吸気側配管
• エンジン上部から見たターボ周辺の占有スペース

など。

写真から見える範囲では、パジェロのターボシステムはパジェロのエンジンルームと車両特性に合わせて組み直されている可能性がある。

ただし、ここは非常に重要なので線引きしておきたい。

写真比較から、

「パジェロのターボは大型化されている」

とまでは断定できない。

ターボのコンプレッサー径、タービン径、A/R、過給圧などの具体的データがまだないからだ。

一方で、一部の海外専門メディアでは、

「トライトンの4N16をベースとしているものの、ターボ、内部部品、制御・チューニングなどが変更されている」

という報道も出ている。

もし実際にトライトンより大容量のターボを使っているのであれば、VGTによって低回転域のレスポンスを補いながら、高回転・高負荷域では大きな空気量を確保する、という設計思想も十分考えられる。

だから現段階では、

「大型ターボであることは未確認」

だけど、

「パジェロ用にターボシステムそのものが再設計されている可能性はかなり興味深い」

というところまでが妥当だと思う。

ここは今後、ターボの型式や過給圧、コンプレッサー/タービン寸法が判明すると一気に答えが見えてくる部分だ。

⸻

⑥ そして「ラリー」を視野に入れると、さらに面白くなる

【推測】

ここからは完全に現時点での考察。

三菱は現在もトライトンをベースにAXCR(アジアクロスカントリーラリー)への参戦・開発を続けている。

さらに三菱には、パジェロによるダカールラリーという非常に長い歴史がある。

もちろん現時点で、

「新型パジェロのターボ開発はラリー参戦を目的としている」

という公式発表はない。

ここはハッキリ分けておく必要がある。

ただ、もし三菱が将来的なAXCRやダカールなどの競技活動まで視野に入れているのであれば、今回のエンジン仕様はなかなか興味深い。

ラリーでは単純な最大馬力だけではなく、

• 高負荷を長時間維持できること
• 冷却性能
• ターボの耐久性
• 低回転からのレスポンス
• 高回転域での吸気量
• 悪路でのアクセルコントロール
• 燃費と航続距離
• エンジン・トランスミッションの耐久性

などが非常に重要になる。

そう考えると、

2.4Lディーゼル+ワイドレンジVGT+8速AT+高剛性ラダーフレーム+5リンクリジッド

という組み合わせは、単なる街乗りSUVとしてだけではなく、かなり本格的なクロスカントリー用途を意識したパッケージにも見える。

特に8速ATになったことも大きい。

トライトンの6速ATから8速ATへ変更されたことで、エンジンをより細かくおいしい回転域に置くことができる。

そして、もし将来的に競技用としてさらに高出力化するなら、

ターボ容量、冷却、燃料系、ECU制御、トランスミッション制御

などを発展させる余地も出てくる。

だから今の段階で「ラリー用エンジンだ」と言うのは早い。

でも、

「将来的なラリー活動まで視野に入れてもおかしくない設計思想」

という見方なら、十分成立する。

⸻

最終章 このフレームとエンジンは、日常でこそ効いてくる

ここまで話すと、どうしても「ラリーみたいな極限状態のための装備」という印象が強くなる。

でも、実は今回のフレームとエンジンの作り込みは、普通に乗る人の日常にもかなり効いてくる。

高剛性のラダーフレームは、単純に「壊れにくい」という話だけではない。

フレームがしっかりしていれば、サスペンションが本来の仕事をしやすくなる。

荒れた路面でボディが大きくねじれにくくなれば、タイヤを路面に押し付けるサスペンションの動きも安定する。

だから、

高速道路での安定感

雨や雪の日の安心感

キャンプ場へ向かう未舗装路

段差や轍の多い道

重い荷物を積んだ状態

といった、普段の生活の中でも恩恵が出てくる。

さらにリアが5リンク式リジッドになったことで、ピックアップトラック的な「荷物を運ぶための足」から、よりSUVらしい「人を乗せて走るための足」へ進化している。

つまり今回のフレーム強化は、単に「オフロードで無茶をするため」ではない。

乗り心地、直進安定性、悪路での安心感、耐久性。

そういう、毎日乗るからこそ感じる部分に効いてくる。

⸻

そしてエンジン&ターボは「余裕」を作る

2.4Lディーゼル+ワイドレンジVGTという組み合わせも同じ。

204PSという数字だけを見ると、最近の大型SUVとしては「ものすごいハイパワー」というわけではない。

でも、ディーゼルで重要なのは馬力の数字だけではない。

低回転から大きなトルクを出し、それを広い回転域で使えること。

これが、

• 坂道
• 高速道路
• 人や荷物をたくさん載せたとき
• キャンプ道具満載
• 牽引
• 雪道
• 砂地
• 泥濘地

などで効いてくる。

アクセルを深く踏み込まなくても車が前へ出る。

追い越しで余裕がある。

登り坂でギアを無駄に行ったり来たりしにくい。

そして8速ATによって、そのトルクをより細かく使える。

つまり、このエンジンの魅力は「速い車」というより、

「どんな状況でも余裕を残して走れる車」

というところにある。

これこそ、パジェロという名前に期待したいところだ。

⸻

そして……もし、この車がラリーに出たら?

ここからは完全に未来への期待。

現時点で新型パジェロのラリー参戦は発表されていない。

だから、

「パジェロがAXCRに出る!」

とは言えない。

でも、想像するとかなり面白い。

今回のパジェロには、

高剛性ラダーフレーム

強化されたサスペンション取り付け部

新設計のリアフレーム

5リンク・リジッドアクスル

2.4Lディーゼル

ワイドレンジ・シングルVGT

8速AT

SS4-II

S-AWC

という、本格的なクロスカントリーSUVとしてかなり興味深い材料が揃っている。

もしここからモータースポーツ用にさらに手を入れたらどうなるのか。

ターボの容量を上げる。

冷却系を強化する。

ECUを競技用に仕上げる。

足回りを競技用に変更する。

そして、この強化されたフレームを使って長時間の高速オフロードを走らせる。

そうなったとき、

「トライトンベースのSUV」

ではなく、

「パジェロとして作られた新しいクロスカントリーマシン」

がどこまで走れるのか。

これはかなり見てみたい。

三菱はすでにトライトンでAXCRという実戦の場を持っている。

その経験を新型パジェロにフィードバックし、逆にパジェロで得た技術を市販車へ戻す。

そんな循環が始まったら、かなり熱い。

そして何より、

パジェロという名前には、ダカールを戦ってきた歴史がある。

だからこそ、

「もし新型パジェロが再び砂漠やジャングルを走ったら?」

と考えてしまう。

これは単なる昔話ではなく、今回の車が持っている構造を見ると、想像する余地がちゃんとある。

もちろん、現時点ではまだ「期待」の段階。

でも、

ラダーフレームを本気で作り込み、
リアサスペンションまで専用化し、
4N16をそのまま載せるのではなくパジェロ用に仕上げ、
さらにワイドレンジVGTと8速ATを組み合わせた。

そこまでやった車だからこそ、

「この先、三菱はこのパジェロをどこまで育てるんだ?」

というワクワク感が出てくる。

⸻

最後に

新型パジェロの本当の面白さは、204PSとか480Nmという数字だけではない。

どんな土台を作り、
その土台にどんなサスペンションを組み、
その上でエンジンをどう使わせるのか。

そこを見ると、今回のパジェロがかなり真面目に作られていることが分かってくる。

トライトンをベースにしている。

これは事実。

でも、

「だからトライトンと同じ」ではない。

むしろ、

トライトンで培った技術を土台にして、
パジェロとして必要な部分をかなり作り込んだ。

それが今回の新型パジェロなんじゃないかと思う。

そして、まだ分かっていないものがある。

ターボの本当の仕様。

ここが判明した瞬間、今回のパジェロの性格がさらに見えてくる可能性がある。

もし本当に大容量のシングルVGTを使っているのなら――

「なぜツインターボではなく、あえてそれを選んだのか?」

という疑問にも、かなり面白い答えが出てくるかもしれない。

そして、その答えの先に、

市販車としてのさらなる高出力化

だけではなく、

AXCRや、いつか再び世界の荒野を走るパジェロ

まで想像できる。

まだ何も発表されていない。

だからこそ、今は想像できる。

「パジェロ、もう一度ラリーで見てみたい。」

そう思わせてくれるだけの“土台”を、三菱は今回ちゃんと作った。

今後このパジェロの勇姿を期待したい。
Posted at 2026/09/05 11:32:12 | コメント(1) | トラックバック(0)

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