『堕天使のパスポート』

　前回の更新から1ヶ月過ぎてしまいました。人間には向き不向きがありますが、僕は研究員（大学院生）は向いていないと嫌でも気付きました。でも今更辞めて仕事を探したとしても、今よりマシな状態になるとは到底思えません。恐らく世の中の少なくない人たちがこんな感じで身動きが取れなく、仕方なくどうしようもない状態で生きているのではないでしょうか。
　「どうしようもない」というと僕は一つの映画を思い出します。『堕天使のパスポート』という映画です。国際線の飛行機の中で観たこの映画、久々にこの映画を観たくなったのでDVDを買っちゃいました。

登場人物
　オクウェ（キウェテル・イジョフォー）：ナイジェリアからの不法移民。母国では医者だった。
　シェナイ（オドレイ・トトゥ）：トルコからのやはり不法移民。NYに行くことを夢見る。
　グオイ：中国系の検死官？　正式な移民。オクウェをしばしば助けてくれる
　ファン：ホテルの支配人。英国人なのにメルセデス･ベンツに乗る屑。最後まで屑。

ストーリー
　ロンドンで同居生活を送るオクウェとシェナイ。2人とも不法移民であり、オクウェはとある理由で帰れなくなってしまった母国への帰国、シェナイはNYへ行くことを夢見てホテルで働く。ある日オクウェが510号室の詰まったトイレを点検すると…。
　ネタバレは敢えてしない方向で。派手なアクションはない映画ですが、オクウェの悲しいまでの誠実さ、シェナイの薄幸さが涙を誘います。後味は悪くない映画ですので、翌日まで引きずることはないでしょう。



　初めて観たとき、私は10歳かそのくらいでした。偽造パスポート、臓器売買、セックス…どう考えても11歳の子どもが観る映画ではありませんね。当時はセックス、処女、娼婦、ピル等の意味がよく分かりませんでしたが。

名台詞（雑な意訳）
　「チェスが上手い奴は世渡りが下手だ」
　「現実を生きるしかないんだよ」

　原題である“DIRTY PRETTY THINGS”は作中に台詞があったように、ホテルは「夜はダーティな行為をするが、朝には綺麗な状態にしなければならない」場所であります。また、私が思うにロンドンは世界有数の大都市であり、歴史や伝統、政治や富などが共存する町です。同時に普段目にすることのない人たちのはたらきもあって、大都市は成り立ちます。私がキングスクロス駅に行ったとき、移民っぽいアフリカ系のオバチャンがトイレ掃除をしていました。そしてバスの中ではアングロサクソン（だと思う）の兄ちゃん達がマクドナルドのゴミを放置して下車していく様を見ました。当時は何も思いませんでしたが、これは現代イギリスを象徴する風景です。プリティな舞台の裏には、必ずダーティな面があります。

　とまぁ、映画を観たのでまた頑張りますか。