某人気走り屋マンガでこんなセリフがありました。
「スープラっちゅうクルマはなんだかんだ言うてもグランツーリスモなんですわ。」
「FDみたいな本気のスポーツカーとは方向性が違うといいますか……」
どちらとも一般に「スポーツカー」と呼ばれるRX-7とスープラとを比較したこの一節は私に
「スポーツカーって何だ?」
との疑問を抱かせるに至りました。
自身の考えを整理するため、ここにその分類を記していこうと思います。
「ピュアスポーツ」
それはまるでカミソリのように。
この世に「スポーツカー原理主義」なる思想を持つ人がいるならばこれに属さない車を「スポーツカー」とは呼ばないことでしょう。
走る・曲がる・止まるという運動性能を限界まで追求し、速く走ること以外に機能を持たないとさえいえるクルマがこう呼ばれます。
専用のエンジンはそのクルマの代名詞ともなり、専用のシャシー、ボディには人が2人乗るくらいしかスペースがありません。
尖りに尖った性格ゆえにともすれば扱いにくいとも評されますが、逆にそれがこのクルマのカリスマ性を高めていくことでしょう。
走りを愛する誰もが一目置く存在。それがピュアスポーツです。
「グランツーリスモ」
一言で表すなら「余裕」
ゲームの名前として有名ですがもともとの意味は自動車カテゴリを表すイタリア語。
長距離移動に適したクルマ、という意味になります。
その名が表す通りこのクルマの真骨頂は長距離を速く、なにより快適に走ることにあります。
エンジンは大排気量のものが多く、常用とする低中回転域から豊かにトルクを生み出し優雅な加速を演出します。
ボディサイズは比較的大きめで、少々のことでその走りがブレることはありません。
ピュアスポーツとは対極とも呼べるこのクルマですが、「走り」に重きを置くこと。まぎれもない「スポーツカー」の証左をグランツーリスモは持っています。
「ライトウェイトスポーツ」
「すべての道がコーナーであったら良いのに。」
クルマの動作は車体が軽ければ軽いほど洗練されたものとなります。
このクルマの多くは特筆するようなエンジンを載せてはいません。
しかし隅々まで軽量化が行き届き、煮詰めそして磨かれたシャシーとボディがこのクルマを最高の「おもちゃ」へと仕立て上げます。
「速い」よりも「ラク」よりも、何よりも「楽しい」。
あなたがライトウェイトスポーツのステアリングを握ったなら峠道で煽られたって満面の笑みで道を譲ることができるでしょう。
「スペシャルティカー・ラグジュアリーカー」
デートに乗ってくハイソなクルマ。
高いお金を出して買うクルマが人も物も載らないなんてよく考えなくてもすごいぜいたく。
ドライブに非日常を求める人がこのクルマを選びます。
低廉なものはあまり走行性能を突き詰めず「見かけだけ」などと言われることもあるでしょう。
でもコストをかけて行きつく先は視線をくぎ付けにするカッコよさ、息をのむ美しさと確かな走りをあわせ持つ「スポーツカー」のひとつの理想形です。
10人に聞いて10人が「スポーツカー」と答える点は他のクルマとなんら遜色ありません。
「走り」と同じくらい「見た目」もスポーツカーにとって大事なことです。
「スポーツセダン・ホットハッチ」
羊の皮を被った狼。
位置づけ的には乗用車の最スポーツグレードでありシャシー、ボディの面である種の制約を受けます。
しかしそれを補って余りある性能のエンジンやデバイスがこのクルマには与えられ、スポーツカーと呼ぶにふさわしいパフォーマンスを身に着けています。
乗用車ベースのボディは実用性にも長けている上、専用パーツも少ないためコストパフォーマンスは抜群です。
総合的にもっとも身近なスポーツカーと呼べるでしょう。
このクルマを選ぶあなたは普段優しく、怒らせるとすごく怖い人かもしれません。
おわりに
ここまでに挙げてきた分類と「スポーツカー」たちの現状とを比べてみますとこれらにぴったり当てはまるクルマが少なくなっているように感ぜられます。
スーパーカーは速さと快適性を兼ね備え、乗用車のスポーツグレードは独立した一車種となり、見かけだけのクルマは買う層が消えてすでに過去のものとなっています。
後年の私がこの文を若気の至りと笑う頃には新たな「スポーツカー」が確立されているかもしれません。
といったところで、最後に往年の名自動車評論家・故徳大寺有恒さんの言葉を記してこの記事を結びたいと思います。
「クルマ趣味に関しては少数派のほうが楽しい」
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Posted at
2016/07/30 00:16:26