8月28日。
この日は、朝からバタついていた。
取引先の広告代理店から、前日までに貰う約束だった9月分の見積が貰えていないことが分かり、担当者に催促と怒りを交えたメールをし、ようやく貰えた資料をすぐに決裁に回しつつ、本部長に内容の説明・確認と承認を取り付け、昼食もそこそこに、13時からのクリエイティヴ会議に間に合うよう、同じ広告代理店から送られてきた新しい広告のクリエイティヴデータをチェックし、会議に。
約1時間のオンライン会議が終わりやっとひと息、と思ったそのときだった。
スマホが鳴ったので、何かと思い画面を確認すると、
「安倍首相、辞意を固める」
の、ヤフーニュース速報のポップアップ。
「え!?」
と思わず声を漏らしてしまった。
直近の健康診断の結果が思わしくないなど「健康不安説」は囁かれていたものの、辞任??
にわかには信じがたい思いを持ちながらも、事の真相を確認したくなり、すぐにテレビをつけた。
この時間に放送されているニュースらしい番組は「ミヤネ屋」しかないと思い(時として、NHKよりも民放の方が情報、第一報が早いこともある)チャンネルを合わせたら、別のニュースの途中だったが画面が突如切り替わり、やはりこのニュースがすぐに始まった。
その後は夜まで放送各局ともこのニュース一色となり、夕方の会見で安倍首相自らの口で、このことを説明する、という流れだったことは多くの方々がご存知だろう。

(安倍首相の記者会見の様子)
会見を見ていて、ある意味ひとつの時代が終わったのかな、とも思った。
今から遡ること、約15年前のある日。
当時まだ大学生だった僕は、所属していたゼミの教授に連れられ、同じゼミに所属していた学生と共に、ある議員の議員パーティーに出席するため紀尾井町のホテルニューオータニを訪れた。
先生の専門が「政治とメディア」「情報操作・印象操作」というテーマだったこともあり、永田町にも頻繁に出入りされていて、その関係で党派を超えて議員や官僚などに知り合いや友人もたくさんいらっしゃり、そういったことからこのパーティーに僕ら学生も呼んでもらえたのだった。
その場には、森喜朗氏をはじめ、政治家のみならず著名な方々が多く訪れており、来賓挨拶・スピーチが次々と行われ、その中に安倍首相も含まれていた。当時、安倍さんの肩書きは内閣官房長官だったと思う。第一次安倍政権が始まる直前だったはずだ。
幸運なことに、スピーチ後、壇上から下りてきた安倍さんを囲む形で安倍さんと僕ら学生とが直接話せる機会をいただけた。
いろいろ質問させてもらったのだが、柔和な雰囲気でありながら僕ら学生のような身の人間にも真摯に応答くださる姿に、僕はとても好感を抱いた。そして、同時に思った。
この人に、この国のリーダーになってほしい、と。
その後の第一次安倍政権は、あまり大きなことを成し遂げられず、また安倍さんの健康問題を理由にわずか1年で終了。そのときにはやや失望感を覚えたが、2012年末に再登板。
民主党の度重なる失政に大きな失望感と閉塞感が漂っていた、当時の日本。
安倍さんの再登板で、日本はきっと良い方向に変わる。僕はそう期待していたし、事実、そうなったと言って良いだろう。
安倍政権発足の前営業日にはわずか1万80円だった日経平均株価は、昨日の終値で2万2882円にまで回復。

(日経平均株価の推移のグラフ)
野田内閣当時(2012年12月)0.82倍だった有効求人倍率は1.43倍(2017年1月)にまで回復。
野田内閣当時(2012年12月)は259万人にも上った完全失業者数は、195万人にまで減少(2020年1月)。
こういったプロセスを経る中できっと、多くの国民は思ったに違いない。
「オレ、やれば出来るんじゃない?」
「日本って、実はとても良い国なんじゃない?」
景気や経済を回復させるには、数々の政策・施策を実行することも勿論だが、人々の自信やモチベーションを上げること、保つこともとても大事だ、という趣旨の記事をビジネス誌などで何度も目にしたことがある。
そう考えたとき、多くの日本人に日本人としての自信と誇りを取り戻させ、モチベーションの好循環を招き入れた安倍さんは、日本経済を、そして日本を立て直した立役者と言っても良いだろう。
「野党がだらしないだけ」
「悪運が強いだけ」
「在職日数が長いだけで首相として何もしていない」
安倍さんのことを面白く思わない人や、マスコミ各社はほぼ同じ論調で安倍さんのことを批判する。
たしかに安倍政権下でも成し遂げられなかったこと、内政、外交の両面で成果が出なかったこともあるだろう。
憲法改正、北朝鮮拉致問題、ロシアとの平和条約締結などなど。
では、安倍さんに批判の矛先を向ける人たちが同じ立場になったとして、同じだけのことを出来るのか?と僕は声を大にして言いたい。
それに、周りの自滅や運の良さだけで、「憲政史上最長の内閣総理大臣」として君臨できるのだろうか。油断すると同じ自民党内からも足を引っ張られかねないような、魑魅魍魎たる政治の世界で、運が良いだけで7年8か月にも及ぶ長期政権を樹立・運営することなど、到底不可能だろう。
冷静になれば、誰がどう考えたって分かる話だ。
安倍さんを批判する人々やメディアにはこのような視点が欠けている。対案や代案すらロクに出さず、口先だけの批判ばかり。
実に愚かだと思うし、実に見苦しい。
更に、様々な情報に触れるなどして多くの人の情報リテラシーが向上し、メディアが伝える内容に誤りや偏りがあることに気づき始めている中でもなお、操作された情報を意固地になって伝え続けている姿は、あまりにも滑稽で、あまりにもみっともない。

(国会議事堂)
今回、安倍さんが再び健康問題を理由に辞任されるという話を聞いて、とても残念に思う。
だが一方で僕は「今までありがとうございました」という思いも持っている。
長期にわたり日本を牽引してきた、歴史上も名前が残りそうな、安倍総理。
米国大統領のトランプすら一目置き、言うことには熱心に耳を傾けると言われる、安倍総理。
総理大臣、政権運営という「表舞台」からはさよならすることになるが、今後も議員として是非、日本のために奮闘してほしい。
僕は安倍さんのこれまでの歩みと功績を、心から賛えたい。
そして安倍さんに、心からの敬意を表したいと思う。
Posted at 2020/08/29 07:46:39 | |
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