お久しぶりの投稿となってしまいました。
今回のブログは自身の備忘録も兼ねているので長いです(笑)
さて現在にゃんこ号に使用しているCUSCO SROTS ZERO-3Sですが、
3年4万キロの走行でいよいよショックが抜けてしまいO/Hすることが決まりました。
抜けた状態でリンク・SUGO・日光を走りましたが減衰が機能していない為
フロントのトラクション抜け・リアのオーバーステアがどうにもならず・・・
乗り方でうまく誤魔化すことは出来るのですが根本の解決にはならないので
O/Hついでにセッティングを一新することにしました。
そこでバネの選定方法を備忘録も兼ねて綴りたいと思います。
※選定方法は独学です。
今まで誰からも教えられることなく自身のリセッティングの経験に由来するので間違いがあると思います。
その際はコメント若しくはリアルで会ったときに指摘していただけると助かります。
【車両データ】
車両重量:1050kg
前々軸重:670kg
後後軸重:380kg
Fレバー比:1.15
Rレバー比(SPG):1.25
F片輪軸荷重:(670/2)*1.15=385.25kgf
R片輪軸荷重:(380/2)*1.25=237.5kgf
【ダンパーデータ】
F実質ストローク:95mm
R実質ストローク:90mm
①レートの選定(ストローク配分からの選定)
まずは1G状態でダンパー実質ストロークを50:50に配分できるバネレートを探します。
・フロントの場合…
8kgf/mmであれば
1Gでのダウン量(mm)=片輪荷重(kgf)/バネレート(kgf/mm)
=385.25kgf/8kgf/mm
≒48.1mm
この48.1mmがダンパーの伸びストローク量となるので縮みストローク量は
95mm-48.1mm=46.9mm
この状態での伸び・縮みストローク配分は約50:50。
もし完璧に50:50にするのであれば48.1mm-46.9mm=1.2mmのプリロードを掛けます。
リアも同様にレートを選定します。(省略)
②レートの選定(最大許容荷重量からの選定)
クルマは走行中1G状態で安定している訳ではなく路面の状況により常にGが変化します。段差や路面の穴等の強い衝撃があった際にダンパーが底付きしないか確かめます。
1GでのF縮みストローク量:46.9mm
バネレートが8kgf/mmの場合ダンパー底付きまでの許容荷重は
46.9mm*8kgf/mm=375.2kgf
8kgf/mmを選定した場合の最大許容荷重は
385.25kgf+375.2kgf=760.45kgf
これをGに換算すると
760.45kgf/385.25kgf≒1.97G
つまり8kgf/mmのバネを選定した場合760.45kgf(1.97G)でダンパーが底付きする計算になります。車両にかかる荷重は片輪走行時でMAX 2G、通常走行時での想定最大荷重は1.7G程なので、最大荷重1.7~2Gで底付きしないようなレートを選定する必要があります。
また選定するバネの最大許容荷重が車両の最大許容荷重(760.45kgf)を下回らないようにします。
※低いレートを使っていたり縮みストローク量が少ない場合に、プリロードを掛けて縮みストローク量を増やし、許容荷重を増やすという手段もあります。しかしその分伸び側ストロークが減少しダンパーの伸び切りが発生、乗り心地の悪化を招く可能性があります。
ちなみにプリロードはダンパーストロークの伸びと縮みの配分の為に行われる手法です。初期反応を良くしたり、表記レートより硬くなるといった事はないので誤解無きよう。
③レートの選定(固有振動数からの選定)
今回は前後バランスを合わせるための確認ツールとして使用します。
k=(2πf)^2*m
k:バネレート(N/m)
f:固有振動数(Hz)
m:バネ上荷重(kgf)
※今回は前後バランス確認のために使用する為、簡潔にするためにバネ上荷重=片輪軸荷重にします。
フロント8kgf/mmのレートを選定した場合
8kgf/mm*9.80665≒78.4532(N/mm)
k(N/m)=78.4532*1000=78453.2
78453.2=(2πf)^2*385.25
15193.6436f=78453.2
f≒5.16(Hz)
m=片輪軸荷重としている為本来とかけ離れた数値が出ています。固有振動数をレート選定の基軸とする場合はバネ上軸荷重をしっかり割り出すと正確な数値が出ます。
この計算を前後行い固有振動数がほぼ同じになるか確認します。
(セッティングや好みにより前後の固有振動数を変えるのもアリです)
④自由長の選定(有効ストロークからの選定)
レートが確定したら自由長を選定します。
ストロークの観点からだと,
(バネの最大許容作動長)≧( ダンパーのストローク長)がベストです。
⑤自由長の選定(車高からの選定)
レートは変えたいけど車高は現状を維持したい時は、基本は全長調整機構でブラケット位置を変更させて車高を変更します。
もし現状で調整できるほどの幅が無い場合はバネの自由長を変更することで車高の調整が出来ます。
仮に6kgf/mm 200mmのバネを使い全下げ状態、8kgf/mmのバネを使う場合
6kgf/mm 200mmのバネの1G状態のバネ長は
200mm-(385.25kgf/6kgf/mm)=135.8mm
8kgf/mm 自由長xmm のバネを使うと仮定、その1Gのバネ長は
x mm-(385.25kgf/8kgf/mm)=(x-48.15)mm
クルマの車高は1G状態でのバネ長+バネ下の長さに由来するので
選定するバネの自由長は
(x-48.15)mm=135.8mm
x=135.8+48.15=183.95mm
さらに自由長を変化させたことによるバネ下の長さの変化量は
200mm-183.95mm=16.05mm
つまり6kgf/mm 200mm→8kgf/mmへレートアップする場合同じ車高を実現するには
自由長を183.95mm、ダンパー長を全長調整により16.05mm短くすればいいという事になります。
しかし市販直巻スプリングはinchサイズの展開がほとんど。一番近くて7inch(178mm)なので178mmのバネを選定した場合その差の分だけ(183.95-178=5.95mm)さらにダンパー長を短くしてやります。
さてここまでの検証を経た結果、
選定するスプリングは8kgf/mm 178mm という結論に至りました。
ただこれはあくまで計算上の話。乗り心地やフィーリング等は組み込んでから実走セッティングを繰り返して改善していきます。
また伸び側ストロークが不足している場合はヘルパー・アシスト・プライマリースプリング等で確保していくのですが、そこはまだまだ勉強不足の為次回以降に…
以上が自分が独学で導き出したバネの選定方法です。
忘れないように備忘録としてまとめたのですが是非参考にしてくださいね♪
(間違いがあったらゴメンナサイ笑)