インプレッサ WRX sti。
我が国において、この車ほど盗難対象となり易い車種もそう無いだろう。
このことは、警察庁から毎年発表される車種別盗難統計のデータにおいても如実に表れている。
どのように盗難対策を採るべきか。
他人の愛車を盗み去り車にも持ち主にも大きな傷を残してゆく。
そんな悪質極まりない窃盗犯の許されざる手口。
今回は、その手口に長けた小生がその一端をご紹介しよう。
インプレッサオーナー諸氏が常日頃頭を痛めるこの問題であるだけに、小生も特に力を置いて執筆する所存であるので、長文となるかとは存ずるが、是非とも最後までお付き合い頂ければ幸いである。
乗り逃げ

当車種のようにイモビライザーが付いていようとも、いたちごっこの如くイモビライザーカッターなる不埒な物品が直ぐに出回るせいで、むしろイモビライザーがあるから安心というユーザーの裏を掻き、いとも容易く盗難される悲劇が後を絶たない。
このGVF インプレッサ WRX sti A-Lineにおいても、既にイモビライザーカッターは出回ってしまっており、何らかの新たな盗難対策を速やかに施すべきであることを小生は強調しておく。
パーツ盗

車両そのものを持ち去るのではなく、エアロパーツ、マフラー、カーナビ等、凡そ売却出来そうな物は全てむしり取ってゆく迷惑千万な手口である。
まずはホイール。

これは、例えセキュリティナットを装着していようとも窃盗犯がアダプターを用意していれば容易く外されてしまうだろう。
酷い場合には破壊工具を用いて無理矢理に取り外し、オーナーが車に戻った時にはブロックの上にブレーキローターが載っているという悲惨な光景を目にすることとなろう。
マフラー。

言わずもがな、下に潜り込みボルトナットを外されればものの2,3分と掛からず持ち去られてしまう。
エクステンションを用い、多少無理をすればジャッキアップをせずとも外すことが可能であるので、油断は大敵である。
カーナビ。

サイドウインドーを割り、内装パネルをツメの損傷などお構いなく引き剥がした上で、配線もろとも力任せに引き剥がしてゆく。
こういった内装品が狙われる場合、指紋を抹消する為車内に消火器が撒かれるケースが非常に多い。
さらには、放火して痕跡を消そうとする言語道断な手口も存在する。
ホイール盗難、これにはセキュリティナットが効果的という考え自体は正解ではあるが、小生としては、決して満点を与えることは出来ない。
せいぜいが及第点といったところか。
と申し上げるのも、実際にはこのセキュリティナットのアダプターもまた規格品である以上、同製品のアダプターは全て共通規格で製造されており、このアダプターを用いさえすれば盗難されるのは全く以て時間の問題である。
可能であれば、さらにタイヤロック等で盗難対策車両であることを物理的・視覚的双方の観点でアピールすればひとまずは安心と言えようか。
ホイールでの抑止効果が一定の成果を上げれば、マフラー・エアロパーツ等の盗難の危険性も押し並べて下がるものとは思われるが、それでも不安をぬぐい去ることは出来まい。
そこで小生がお薦めする対策は、エンジン停止時にも長時間録画の出来るドライビングレコーダー。

これを前後に2つ装着することで心理的抑止効果を図る。
更なる対策を目指す場合はカーセキュリティとなってくる訳であるが、特に、フィールドセンサー・チルトセンサー・ショックセンサーの3点を備えているものを装着することが肝要である。
もちろん、ドライビングレコーダーによる録画は車両ごと盗難されてしまえば意味を成さない。
セキュリティシステムもまた、後述するがその警報音にすら全く動じない類の窃盗犯には効果は薄いと言わざるを得ない。
金銭的には比較的大きな出費を伴ってしまうが、様々な盗難対策を併用し、視覚的、物理的、電子的、全てにおいて隙の無い対策を取る以外に絶対的安心は得ることが出来ない以上、これらの出費は優先度の非常に高い必要経費である。
このポイントを諸兄には重く認識して頂き、決して「大げさだ」とか「脅している」と曲解し、よりによってこの必要不可欠な出費を惜しむ事の無いよう、充分ご留意願いたい。
いま、貴君の大切にしている愛車がもし明日なくなれば、
カスタムも、洗車も、写真撮影さえも
もう二度と叶わなくなってしまうのだから。
そこに残るのは、ただただ、出費を惜しんだ事への後悔のみ。
さて、タイヤロックで視覚的にも盗難対策車両であることがひと目で伝わる以上、ここまでの対策は必要ないのではと思われる向きもあるかとは存ずるが、ことインプレッサ WRX stiという車においてはホイールセキュリティナットあるいはタイヤロックに加え、さらに、一見厳重過ぎるのではと思われるレベルの対策を施す感心なオーナーが非常に多いことは周知の通り。
盗難多発車種であるがゆえ決してやりすぎという言葉は存在しないことがご理解頂けるかと存ずる。
車上荒らし対策、具体的にはカーナビ盗難に対しては、最近登場し始めたカーナビ専用のセキュリティナットを用いて取り付けることで、短時間で内装品を盗み去る車上荒らしが最も嫌う、「盗難に掛ける時間」を稼ぐことが出来よう。
これも、前述のカーセキュリティシステムを併用し対策を二重、三重に巡らせれば、まず車内に手を付けられる恐れも激減すると申し上げておく。
ここからがこの車種特有の、非常に頭の痛い問題点である。
「不良外国人」
と表現すれば賢明なる諸兄はどういった輩を想像するかピンと来ると存ずるが、彼らはカーセキュリティが付いていようとも、またそれがいくら大音量で発報しようとも全く意に介さずキャリアカーに積載し、ヤードまで運び込んでしまう。
これはいわば、例え目撃者がいようとも、通報を受けセキュリティサービス業者や警察が現場へ急行するまでの僅かな時間のうちにショベルカーを用いてATMを土台ごと破壊し、トラックに載せて持ち去ってゆく傍若無人な輩と全く同じ類の手口と言える。
インプレッサ WRX stiという車種は北米圏で非常に人気があり、現地では国内価格の倍の価格が付くことからこういった「需要」に応える盗難が多発しているのが現状である。
こうした手荒な手口に長けた不良外国人が前述の怖い物なしとも言える手口で豪快に盗難したインプレッサ WRX stiはヤードに運び込まれた後、車体番号の記載されているコーションプレート部分を大きめにくりぬ抜き、事故車から引っ張ってきた同部分の物と打ち替え、溶接の目を消して塗装される。
これがいわゆる目抜き。
さすがに目抜きの車両など、コーションプレートまわりをよく見れば気付くのでは、とお考えの諸兄もおられるかと存ずるが、甘い。
目の肥えた中古車業者やディーラーですらこれを見抜くことは困難であり、目抜きされた車両が気付かれることなくごく普通の中古車として堂々と出回っていることも多々あるのである。
この車種に限らず、盗んできた同車種のナンバーと封印を目抜きした車両のそれと付け替え、車検証と印鑑登録証を偽造した上で車両登録の不可能な土・日のうちに現金買取りの中古車店に持ち込んで売り抜けるという、卑劣かつ悪質極まりない手口も実際に横行している。
兎にも角にも、こうした上でオーナー・経歴ともに生まれ変わったインプレッサ WRX stiは何食わぬ顔で現地に持ち込まれ、荒稼ぎする為の好対象となってしまっているのが現実である。
もちろん、正規の手段で輸出されるインプレッサ WRX stiが圧倒的多数であることを申し述べておかなければ誤解を生じかねないが、その影で、こういった不正な手段を経て海を渡るインプレッサ WRX stiが全体のうち一定の「シェア」を占めるほどの台数に上り、需要が供給を大きく上回り続けているゆえに盗難が一向に後を絶たぬことも紛れもない事実だ。
こうなってしまえば、いくら盗難届を出していようとも、もうその車は決して発見されることは無い。
カーセキュリティすら用を為さない窃盗犯―むしろ強盗犯とも言えるが、こういった輩に対抗できる確実な対策は残念ながら今のところ存在しないものの、インプレッサAT WRX stiという車両窃盗犯にとっても大人気車種であるこの車には、いくら盗難対策を施してもやりすぎという事は無い。
タイヤロックといった物理的対策・カーセキュリティシステムといった電子的対策を二重に施した上で、更に考え得る様々な対策を取り、それを周囲にアピールすることでいわゆる窃盗犯にとって「メンドクサイ車」と思わせることに繋がれば、盗難のリスクは格段に下がる。
これは非常に大事なキーポイントである。
例えは適当では無いが、貴君が窃盗犯であったとしよう。
全く同じ2台のインプレッサ WRX stiが目の前に駐まっている。
片やタイヤロックが付けられ、ホイールにもセキュリティナットと、どうやら見るからにメンドクサイ車。
片やその横にあるのは何ら視覚的に見るべき対策も無く、どうやら車両盗難対策にも大して気を遣っていそうにないWRX。
さて、貴君はどちらを盗むだろうか。
車両盗難・車上荒らしは我々が想像する以上に全国的に頻発しており、「今日が無事だったから明日も無事だろう」「まあ大丈夫だろう」という性善説など、特にこのインプレッサ WRX stiという車種においては全く通用しないことを小生は重ねて申し上げておく。
誰も見向きもしないありふれた車で、アフターパーツも一切付けていない車ではないのだ。
窃盗犯が目を付ける程の人気車種で、さらに高値で売れるパーツがゴロゴロ付いていれば、例え窃盗犯でなくとも「いいなあ、欲しいなあ」と思ってしまうのが人の常という物であろう。
もっとも、道行く通行者らに「いいなあ、欲しいなあ」と感じさせるこの車のオーナーである小生としては、このあたり、痛し痒しといった感は否めないのだが。
盗難防止対策。
これは、小生も含めインプレッサ WRX stiという人気車種のハンドルを握る者としての自覚が問われる大きなテーマであり、この車を所有する者として決して対岸の火事では済まされぬ果たすべき責務とも言えよう。
1/100秒から1/1000秒の技術へ
GVF インプレッサ WRX sti A-Line。