ハイマー号を車検に出して幾星霜…。機械と一体化し、最も風に近い存在となるあの感覚が忘れられず(そんな存在だった時があったのか、などという揚げ足はとらないようにッ!!)、日々悶々と過ごしていた。そんな中、とってもタイミングが悪いことにブックオフで『モーターサイクル・ダイアリーズ』のDVDを見つけてしまった。この表紙を見ただけで
「うぅっ、んもう原チャリでもいいからエンジンのついた乗り物を操縦したいぞ」
などという欲望がムラムラと頭をもたげ、どーしよーもなくなってしまった。
で、ヤフオクを見たワケだ。
そこでなんともミョーチキリンな原付を見つけてしまった。こいつは一体何なんだ!?
大変な近視の人が酒飲んで酔っ払ってその上に十六文キックをドタマにかっ食らった状態で見たら、ノートン500に見えないこともない訳ではなくもないかもしれないとも言えない事もないという可能性も否定できないかと思われようと信ずるに足るような要素も多少は持っていそう、という非常に説明のややこしいフォルムのカスタム・バイクが、そこにはあった。
なんちゅうか、ミョーに
カッチョいいぞう。
とりあえず25,000円まで入札して様子を見ることに。
——25,000円で落ちた。
商品の説明を読むに、このお店は正確に言うとバイク屋さんではなく、不要になったバイクを無料で引き取り、海外へ輸出するという仲介業者だそうで、そうして集まったものの中でも、なんとなーく目立った存在のモノをヤフオクに出品しているそうな。
なので、在庫の中には一発でエンジンのかかるものから、半分バイクの形を成していないようなものまで、状態は様々。機械の確認も行われず、軽く汚れを水洗いしただけ。まぁ、所詮原付。根気さえあれば、治せない事も無かろう。最悪エンジン拾ってきて載せ替えればいいんだもん。
で、そのお店の場所というのが私のお家の割と近所(その時はそう思ってたのよ、散歩の時によく通る辺りだったから)なので「直接引き取りに行って、手押しで持って帰りたいんですが…」と訊くと快諾してくれました。
そして今朝。昨晩のお仕事の疲れを引きずったまま8時にメールを確認すると、11時に取りに来てほしい、との連絡が入っておりました。
「つー事は10時に家を出れば余裕のヨッチャンで間に合うなー」
と考えていた時にはもうすでに夢の中。
で、9時40分に二度寝に気づいて、鯉の様に跳ね起きる。で朝飯抜いて急いで家を飛び出しました。
お店まで急ぎ足で30分(この時点で、思っていたよりも遠い、という事に気づきました。だって単純計算で2.5キロあるもんね)。近くの割と大きめのスーパーで時間をつぶし(主に排泄行為で)、車両を引き取ります。
お店の方から販売証明を受け取り、当該車両とご対面。思ったよりもキレイ(ワタクシにとってのキレイのハードルって、かなり低いらしいです)。「腰を痛めないようにねー」と心配の声をいただきつつ、店を後に。
——タイヤの空気圧が 超低い!!
押すたびにキュビキュビとタイヤが鳴っておる。あるいは私がそういう音の鳴る類の靴を履いているかのような印象を、周りの人々に与え続けておる。これのせいで重さは5割増し(しかも私は革底の靴を履いていた。というよりもスニーカーというものを持っていない…)。公式には車重74kgらしいのですが、やたらと重く感じる。カスタマイズされて、見たところかなり軽量化されているはずなのに。
で、日中の板橋の、しかもルート上にある駅前スーパー周辺って、やたらとお年寄りが多いんですよね。やっとスピードが乗ったと思ったらまた止まらざるを得ない状況になったり。押し始めが一番体力を使うのです。道行く御兄貴様御姉貴様方(ただし50年前の)にペースを合わせつつ、道を譲りつつ、妙なバイクを押しながらの珍道中。っていうか私ってよくよく車両を「押して」いますね。ハイマー号だって押して納車したし。
なんだかんだで近所まで来ましたが、ここで難所が待っています。自宅は山の上。急坂を登り切らねばならんのです。しかし革靴はやたらと滑って力が入らない。そのため、かなりの遠回りにはなりますが、坂の比較的緩やかなルートに変更しました。
エッチラオッチラ坂を登ります。…登ります。…そして登ります。…まだまだ登ります。
——し、死ぬる。
もうすぐ11月だというのに、滝のような汗がパンツの中まで濡らします。最初はジム・キャリーのような魅力的な笑顔(自分ではそう思っている)を振りまきながら押していましたが、今ではまるで阿修羅像の右の顔。
何とか坂を上りましたが、左腕と左のケツと腰が悲鳴を上げております。この坂を超えたらあとは平坦な道ですので、かなり楽になります。
で、歩道をギュピギュピと押していたら、なんと途中でトラックが前を塞いでいるではありませんかッ!! 確かに歩行者が通れるだけの隙間は空いておるのですが、バイクが通る余地などありません。直前まで行って諦めた私が言うのだから間違いない。仕方がないので泣きながら、バックで50メートルほど引き返します。それまで気づかなかったけど、この道ってこっちから見ると若干登ってるのね。
理不尽なトラップを何とか切り抜け、ラストスパート。ゴールは目前、あと100メートル。ただ、今度は高校生たちが学校からワラワラと出てきました。当然必死の形相でボロイ謎のバイクを押している者など、普段あまり居ません。あまり居ないからして彼ら、彼女らの注目の的となってしまいました(そー言えばハイマー号の時は小学生に指さして笑われたな)。
「何あのバイク?」
「判らん」
「ハーレー?」
「にしては小さ過ぎね?」
「自転車なんじゃないの?」
「言えてるー」
——おい、最後と最後から2番目ッ!! せめて聞こえない所で言ってくれッ!!
大体俺でも言われなきゃそうだと判らんようなシロモノなんだから。
こうした罵詈讒謗の雨アラレの中(疲れて精神がナイーブになっとるのです)、最後の難関。とりあえず保管場所は今空いている駐車場に決めていたのですが、これが曰く付きの場所。入り口が急なスロープとなっておるのです。だからハイマー号はしばらくここに入れなかったのです。このスロープを最後の力を振り絞り、一気に駆け上がる。
で無事到着。今調べてみたら、帰りの道程がちょうど4キロ。そのうち1キロほどはずーっと上り坂でした。左半身の筋肉もそうですが、左手の親指の付け根の皮が剥がれておりました。イテテ。
さて、ここまで画像が1枚もないので、さぞどんなバイクか気になった事でしょう。なので、ワタクシの新しいオモチャの画像を一挙公開いたします。
ジャン!!
ものすごくヘンな原チャリです。ベースのヒントはフロントフォークとバッテリー周りの一部、それとエンジンの形状です。言われてみればホンダのSOLOに似ています。というかこれが大ヒントです。
正解は後日発表。
それにしても、なんともビンテージ感のあるソロシートだと思っていたけど、コレって
自転車のサドルじゃね?
~おまけ~
タンクのフタにもキーがついておりました。
しかし渡されたカギは1本。イグニッションと共通のカギをわざわざ付けたのだろうか? まあ、仮に開かなくてもバラして何とかしよう。そう思ってカギを捻ってみると…。
おお、空いたぞ!! タンク自体は社外品なので、キャップも当然社外品がついていると思っていました。なんか、オレは今、モーレツに感動している!!
——キーが抜けん。
何度キャップを嵌めなおしても、カギが途中までしか回らず、従って唯一のキーがなかなか抜けないという、なんともオマヌケな事態。結局事態が収拾するまで20分かかりましたとさ。
——なーんて事を書いていたら、また仕事に行く時間になってしもうたぞ。あーたいへんだ。
Posted at 2018/10/30 14:04:45 | |
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スーパーカブC50(チャーリー号) | 日記