あれれ、なんだか書いた覚えのない記事が、また公開されておる…。多分大酔したときに勢いで書いちまったのでしょう。なんだかマズローだのフランツ・カフカだのレイ・ブラッドベリだのを持ち出して好き勝手に書いておる。
今改めて読んでみて、要するに誰しもが、周りの事を考えないで生きているから、そしてそれでいても生活が成り立ってしまう世の中だから、「安全に対する欲求」が満たされていると錯覚して、より高次な「承認欲求」を持つようになる、ということを言いたかったらしい。なーんにも考えない奴ほど生きやすい世の中なんだ、と。
前回の冗長な記事が数行で要約出来たところで、今回の内容。
なんと
R-2はかの銀幕スターと共演しとった、という話。
なーんて書くと、ものすごく大層なもののように思えてしますな。例えばショーン・コネリーとアストンマーティン、みたいな。
ただ、聞いて驚くな、見て笑うな、指さして馬鹿にするな、なんとそのR-2が登場する映画のタイトルは、
「男はつらいよ 下町慕情」
――渥美清って「銀幕スター」だっけ、などというツッコミは置いておいて(重要な気もするが)、話を進めます。
この作品は1972年に公開された、「男はつらいよ」シリーズの9作目。森川信が亡くなった事で2代目おいちゃんの松村達雄が初登場する記念作です。また、吉永小百合演ずる「歌子さん」も初登場です。
因みに細かいことを言えば、スポンサーの関係なのかやたらとペプシコーラのロゴが登場し、とらやの玄関口にペプシコーラの冷蔵庫が置かれたりしてるんであります。
で、どういったストーリーかと言えば、例にもよって旅から帰ってきた寅さんは、寅屋の店先で絶句。そこにはなんと「貸間あり」の札が下がっている。せっかく帰ってきたのに自分の部屋(と言っても居候なのだが…)が勝手に貸しに出されている事を知り、スネて出て行ってしまう。そして追いすがるさくらに
「あの魔よけの札の下に貼った、あの札は何て読むんだぃ」
「あぁ、あの『貸間あり』の札のこと…」
「ほぉ、アレが『貸間あり』って読むのか」
「えっ?」
「俺にはね『もうお前の住む処は無いよーッ』っていう風に読めたなァ」
つーことで、「もうちっと落ち着くところ」を探すために、寅さんは不動産巡りをすることに。俺くらい高望みのない人もいない、と言いつつも
「親切なおかみの一人もいて、俺が仕事から疲れて帰ってくる。『おかえりなさい、疲れたでしょ』そんな一言言って呉れりゃそれで充分よ。あッ、風呂なくってもいいよ、おれ、銭湯大好きだから。『ひとッ風呂浴びてらっしゃい、晩御飯作っとくから』タオル、洗面器、シャボン…。『どうせアンタ、細かいお金ないんだろう』40円ポンと貰って、『じゃァ、行ってくるか』『行ってらっしゃい』やがて俺は風呂へ行く。帰ってくる。晩飯になる。ね。俺ァねぇ、おかずなんて何だって良いな。どうせ家賃は大したこと無いんだからサ。そうねぇ、おつまみに刺身一皿…煮しめにお吸い物、卵焼きなんかちょっとついてもいいし、おひたしなんかもあったらいいナ。お銚子を3本くらいスッと飲む。昼間の疲れでついウトウトッとなる。ねっ。女将はすっとそれを見て、『さくら、枕を持ってっておやり。ついでにお腰も揉んでやったらいいんじゃないかい』ね、さくらッたらその下宿の娘よ、ウン。…どうしたんだそのツラは」
当然のことながらそんな下宿は見つからず、不動産屋のたらいまわしの末、たどり着いたのが、佐山俊二演じる「不動産屋C」のもと。「家は古いが、その代わりお値段はぐっと安くなる」との事で、寅さんともどもそちらの物件へ行くことに。
そこで登場するのがR-2なんであります。
早速(と言いつつ例によって前置きが長いが)そのシーンを。
不動産屋C「ごめんください、先ほどお電話しやした」
おばちゃん「ご苦労様」
不動産屋C「お客様お連れしやした。好い方ですヨ」
おばちゃん「そうですか」
不動産屋C「お客さん、着きましたよ。さぁさぁ、あい、どうぞ」
寅、欠伸。
不動産屋C「(車が)狭いから窮屈でしょう」
不動産屋C「すみませんなぁ、車が小さいモンですから」
寅「おでんに茶飯…商いやってるね。『やらと屋さん』ね。おじさん、俺も以前ね、こうした家にご厄介になった事があるんだよ」
寅「バカヤロウッ、ここァ俺ン家だッ」
――と、こういうシーンなわけだ。
とらやの面々は新しい下宿人が「カタギの人ならいい(Byおばちゃん)」「公務員とか(By博)」と期待していただけに、またひと悶着あるのですが…。
さて、このワンシーンでR-2は退場です。
なんだ、まったくもって大したことないじゃねえか、という諸兄方のツッコミも聞こえそうですが、まあ、なんとなーく観ていて見つけただけに嬉しかったんです。
因みに個人的な観点で解説すると、おそらくもともと不動産屋さんは60年代前半にスバル360を購入したと予想できます。もしかしたら職業柄、発売された58年に買っていたかもしれません。R-2が登場するのは1969年の8月ですが、おそらくこの時点では買っていないでしょう。そうではなくて、スバル360が生産を終了する1970年にスバルのセールスマンが訪ねてきて、「もうそろそろ車がガタ来てるんじゃないですか?」だとか、「もうこの型の車は作ってないんですよ、じき部品の方もなくなってしまいますよ」等とささやいたのでしょう。で、「今ね、この新型のR-2が、車を下取りに出したらこのお値段で…」とか「今が買い時ですよ」と押しまくったのでしょう。――3年で生産終了するにもかかわらず。ヘタをしたら売れ残っていたA型を無理やりつかまされたのかもしれません。
なんにしても、このワンシーンは1972年という時代を、如実に表現しているとも言えます。こうした小道具の使い方がこの映画の上手いところ…とここまで当時の山田洋二が考えていたかどうかは分かりませんが。
ただひとつ、残念なのは寅さんがR-2に乗り込む場面や、走行シーンがないところ。確か第4作目だか5作目からは、とらやがセットでの撮影となったので仕方がないですが。
Posted at 2018/08/24 01:51:56 | |
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R-2(ハイマー号) | 日記