2007年12月21日
奴はロードスターで水の匂いがする
間道を走るのが好きだ。
飽くことなき美しいシルエットが更に映えるからなのだろう。
視線は五感の助けをかりて、3つのミラーとフロントガラスに散りばめられた極彩色のパノラマを調合し、奴の心に掛けられた頑強な掟をいとも簡単に解き放つ聖なる鍵”を創造する。
五感は全ての日常の機能を停止する代わりに奴の命を
透明な意識に替えて分離させていく。
双頭の五感を自覚しはじめるとロードスターをあやつる
奴とは別に360度のあらゆる視線で自らの疾走する姿を
自由に眺める超感覚を宿す。
不思議な空間・・・これが六感・・・四次元・魂の開放。
小気味よく流れ飛ぶパノラマのステージでバラードを
奏でながら穏やかだが規則正しい心臓の鼓動を感じる時に
奴はこの現象に抱かれる。
悲しくも、淋しくもない。
かといって、格別に嬉しくも、楽しくもない。
だだ、全身が軽くなる。楽になる。
水の匂いが、いよいよ強く香る淵にたたずむ。
愛おしいフロントノーズ越しに見る水面の壮麗さに言葉
さえ失う。
奴はこのまま時間が止まってくれたらいいと思う。
わずかに時間が止まったかのような時間・・・
無情にも煌く水面に相応しくない役割を終え
朽ち果てたペッドボトルを見つけてしまった。
その瞬間に奴の五感が、一瞬にして本来のそれに回帰する。
奴は我にかえるのと同時に苦笑しながら・・・
「くゆらせた煙草が天に召されたら拾ってこよう」と
誰にともなく呟く。
焦燥に身をゆだねてやってきた誰かが・・・
もう少しだけゆったりとこの現象に身を委ねられる様に。
貴方は奴の様な現象体験は・・・?
Posted at 2007/12/21 10:38:19 | |
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交遊録 | 日記