
波状攻撃を仕掛けてくる刺客をバッタバッタと薙ぎ倒してきたわけですが、私も刃折れ尾羽打ち枯れてきまして、残る手立ては如何にスムースに部屋を変えてもらえるかという局面になってきました。再び荷物をスーツケースに入れ戻す作業を行い、その日の仕事の準備も終え、万端、整ったその時、三たびチャイムが鳴りました。約束のピックアップ時間の直前でしたので、少し気忙しかったのですが、ドアを開けるとそこには紺色のスーツに身を固めた妙齢の女性が立っておりました。このホテルのマネージャークラスの方でしょうか。この人は少しだけ英語が話せました。
てっきり新しい部屋の案内に来てくれたものと思いましたので、荷物を持って部屋を出ようとすると、「チョット待って、私がシャワーを直します」と言われます。「もおぅ、時間ないのに堪忍してよー」というのが偽らざる気持ちだったのですが、特に強く拒絶する理由もなく、好きにさせてあげました。すると、バスルームに入ってものの30秒も経たないうちに、おいで、おいでの手招きをしています。え、まさか直ったの?半信半疑でバスルームに入り、差し出されたシャワーに手をやると、滔々と熱いお湯が出ているではありませんか。
狐につままれたようです。いったいどのようにしてお湯だしたの?と聞くと実演してくれました。ここのカランはひとつのハンドルを上下左右に操作するタイプで、中央から右約60度がお湯、左約60度が水です。水量は同じハンドルで調整することが出来て上に上げれば「開」、下で「閉」です。今、お湯が出ている状態でハンドルの位置を確認してみると、おお、あらぬ方向を向いております。左に120度くらい捻り上げられています。そう、一旦左(水側)に一杯捻って、突き当たったところからさらに力ずくで殆ど無理矢理に左に押し込むとお湯になるのです。驚愕の裏技です(笑)。
このシャワーの温調操作方法というものは、国により、地方により、はたまたホテルの築年数などにより実に様々なタイプがあります。分かりやすい2コックの混合式は今ではマイナーで、多機能ハンドル式、ダイヤル式、ボリュームレバー式、トラックボール式、デジタル式などその種類は多岐多彩を極めており、もはや知恵の輪的機器となりつつあります。が、これはないでしょう(笑)。ハンドルの位置とその下の弁機構の位置との角度同調が取れていなかったのだと思われます。それで、本来のお湯の位置で「お漏らし」程度のお湯が出て、水側のさらに奥の通常ではあり得ない角度、ブチ壊す直前の開度でやっとお湯が出るルートが開かれているのだと理解しました。そしてそのカラクリを知っていたのが、このホテルでは彼女一人であったというわけです。
とにかくお湯は出ました。勉強になりました。楽しめました。さて、荷物を出したり入れたりまた出したり、私としてはなんのこっちゃ、という気もしましたがこのドタバタこそ旅の情緒であり、よき思い出です。今回は、仕事面でもそれなりのドタバタを経験し、思い出に残る出張となりました。感謝、多謝、謝謝。それで、まだ、少し続きがあります。
この後、滞在中に私を悩ませ続けたのが、写真の建物です。これは6階の私の部屋の南側窓から撮った写真です。このホテル、6階建で、多分6階がスイートで、部屋数が少ない、ということで5階に屋上部分が少しあります。これです。ここになにやら怪しげな建屋があり、この中で、早朝から激しく騒音が撒き散らされるのです。ババババッ!というエアツール的な音と、ガーンガーン!と鉄を鍛えているような音が朝の7時くらいから始まります。いったい何をしているのかはさっぱり分からないのですが、男女数人が材料を運び込んだり出したりしながら働いておりました。
日本の建築基準法に鑑みればこのような行為は思いっきり引っかかると思うのですが、こちらではその方面の規制は緩いようです。また省や州によって法律もまちまちのようで、早い話がなんでもありになっているように感じます。5階や下の4階の客室に入った人は堪ったものではないと思うのですが、クレームが出ないのでしょうか、私の滞在中は、毎日作業が遅滞なく続けられました^^;。恐るべきバイタリティーを垣間見た気がします。場所と時間をわきまえず勤労勤勉です^^。
さらに、右側に道路が見えるでしょ。その右側が学校(多分高校だと思います)なんですが、そこでは朝の8時から、全生徒が校庭に出て、大音量の音楽と先生の掛け声のもと、集団演技の練習を始めるのです。相当な数の生徒さんがいるように見受けましたが、全員が規則正しく、右に左に、あるいは交差したりしながら訓練に励んでいるのです。ここが一党独裁政権社会であることを再認識させられました。「イーッ!アーッ!サンッ!スッ!、イー、アール、サン!」。耳に焼き付いて離れません・・・。
また長くなってきました。明日、最後の一話を。
Posted at 2008/09/11 22:47:03 | |
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