体調不良によりブログをサボっておりましたバーンスタインです(汗)
お陰様で完調のほぼ戻りました。
みん友をはじめMyファンの方々からのお心遣い溢れるメッセージや投稿、本当に感謝感激です(^^)
さて、体調も大分良くなりましたのでちょっと離れた本屋までドライブしてきました。
欲しい本が出ていたのですが、上のような理由で中々出不精になってしまいまして・・・
てか「Amazon」で買えばいいじゃんと思ったのですが「読みたい」と思うと一日も待てないという悪癖が顔を出しまして(笑)
何のためのprime会員なのか最早意味不明です(大笑)
さて、そこまでして読みたかった本。
↓これ

朝日新書 「山本直純と小澤征爾」(柴田克彦氏著)
「世界のオザワ」の存在は我が国音楽界の頂として君臨していることは言うまでも無い事実ですが、この本ではその小澤さんと生涯を通じて友情関係に有り、我が国の音楽啓蒙でその存在を忘れることが出来ない存在である「山本直純」さんの話です。
我々世代以上の方だと「直純さん」の存在を知らない方は少ないと思いますが、若い世代の方には余り聞き慣れない名前かもしれません。
山本直純

山本直純は指揮者としてのみならず作曲家としても高名な存在でした。
例えば映画「男はつらいよ」のテーマや「8時だよ!全員集合」のOPテーマ、あの旋律を聞いたことが無いという方はいないと思いますが、あれは直純さんの作品ですし「一年生になったら」や「歌えバンバン」と言った童謡作品も彼の作品です。
映画「男はつらいよ」テーマ
テレビ「8時だよ!全員集合」オープニング
「8時だよ~」のいかりやさんの「行ってみよ~!エンヤー♪コーラ」なんて懐かしいですねぇ・・・
子供の毎週の楽しみはこれでしたね(^^)
他にも大河ドラマの「武田信玄」や「あの」笹川良一さんがご存命の頃の「日本船舶振興会」のCM「火の用心のCM」も彼の作品として知られています。
日本船舶振興会「火の用心のうた」
これのCMも子供の頃、よく見ていました。
「笹川良一」という人は子供心に「きっとなんか偉い人なのだろう」と思っていましたが戦前から戦後にかけてあのような大きな存在の方だったと知ったのは学生になってからでした(笑)
だってこのCM見たらどうみても「普通のお爺ちゃん」ですもんね(^^;)
「一日一善~!」懐かしい・・・
直純さんはテレビや映画向けの音楽だけでは無く硬派なクラシック作品も残しています。
国連から委嘱されて作曲したオーケストラ作品「天・地・人」(直純さんは人を作曲)や札幌五輪の入場曲「白銀の栄光」等、彼の存在が大きかったからこそ委嘱された作品もあります。
また「クラシック音楽」を堅苦しく考えてほしくないという理由から「ジョーク」として笑いを誘う曲も造っています。
交響曲第45番「宿命」(ベートーヴェンの全9曲の交響曲の旋律が次から次へと現れ、かつその中に日本の民謡の旋律が出てきたり、ベートーヴェンを冒涜した!と怒ったお客に指揮者が鉄砲で撃たれ倒れる→救急車登場→復活なんてくだりもあります。直純さんが第45番まで交響曲を作ったわけでは無くベートーヴェンの全9曲の交響曲、1+2+3+・・・+9=45番というわけです笑)やこれまたベートーヴェンの有名なピアノ協奏曲第五番「皇帝」をモチーフにしたピアノ協奏曲「ヘンペラー」(皇帝=エンペラーを変曲(敢えて「編曲」と書いていないところが直純さんらしいです)したので「ヘンペラー」)やメンデルスゾーンのこれまた有名なヴァイオリン協奏曲をもじったヴァイオリン協奏曲「迷混」(メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はよく「メンコン」と略されますがそれをもじって)等・・・
如何に彼の才能が豊かだったかお分かりになると思います。
さて、そんな直純さんですが、指揮者を志した学生時代からその死まで盟友であった小澤さんとの話を絡めながら本書は進んでいきます。
まずは帯タイトルからしていいんですよね。
「埋もれた天才」と「世界の巨匠」~この二人がいなければ、日本にクラシック音楽は存在しなかった~
天才同士がなんの因果かクラシック音楽黎明期の我が国において邂逅した事実は非常に興味深いところです。
今回この本を呼んで興味深い関係者の証言を知りました。
例えば直純さん、小学校1年生の時の日記。
「今日はベートーヴェンの第一交響曲の出だしの和音を、山田一雄先生(※我が国の指揮者の大先達の1人)の所にいって勉強してきました」
小学校一年生で早くもベートーヴェンの交響曲を勉強していたとは・・・(驚)
もうこの時期からその才能を発揮し始めていたことがわかりますね(^^)
そんな直純さんですから東京芸大の学生時代から映画音楽やテレビ音楽で引っ張りだこの存在となり当時のサラリーマンの給料より稼いでいたとか(^^;)
同じ時期、小澤さんはヨーロッパへ行って修行したいも、伝手も無くフランス政府給付留学生試験を受験し、最終選考の二人まで残るものの不合格。
それでも欧州行きを諦め切れない小澤さんは女友達でヴァイオリニストだった水野ルミ子さんに「何をしょげた顔してるのよ」と言われ経緯を話すと「うちのパパに話してみたら?」となり会ってみると・・・
当時の「フジサンケイグループ」の総帥であった水野成夫だったと(笑)
「男に生まれたからにはやってみたいものが三つある。連合艦隊司令長官、オーケストラの指揮者、そしてプロ野球の監督だ」は氏の言葉でした。
小澤さんの言葉を聞くと水野は「本気なんだな?」と念を押すと「すぐに文化放送へ行け」と一言。
行ってみると渡航費用「50万円」が用意されていたとか・・・
また、三井不動産社長の江戸英雄氏や日興証券会長の遠山元一氏も小澤さんの話に理解を示し、三井船舶の貨物船で渡欧することが可能になったそうです。
その小澤さんの欧州行きが決まった頃、直純さんは小澤さんにこう言葉をかけたそうです。
「音楽のピラミッドがあるとしたら、俺(直純さん)はその底辺を広げる仕事をするからお前(小澤さん)はヨーロッパに行って頂点を目指せ。征爾が帰ってきたら、お前の為のオーケストラをちゃんと日本に用意しておくから」と。
「天才は天才を知る」とはこの事なのでしょうか。
普通、自分より才能がある人物を見ると「ジェラシー」を抱いてしまうものですし、芸術家の分野ではそれが物凄く多いと聞いたこともあります。
しかし、直純さんはその「天才的才能」故に小澤さんの「天才的才能」に気付きこのような言葉をかけたのでしょうね。
この後の小澤さんの快進撃は言うまでもありませんし、直純さんの活躍も上で挙げたとおりでまさに二人共に「時代の寵児」となって行きました。
今回、この本読んで知ったのですが、上で挙げた「音楽のピラミッド~」の話に対する小澤さんの反応が面白かったのです。
「僕(小澤さん)は彼(直純さん)の陰にいました。でも対抗心なんて全く無かった。なぜなら彼の方が圧倒的に上だったからです」
天才同士、お互いを認めていた事の証左ですし「世界のオザワ」となっても「山本直純」の才能には敵わないと実感していたのでしょうか・・・
やはり天才は天才を呼ぶのでしょうか。
(因みに直純さんは岩城宏之さんとも親友でした。やはりこの事も天才は天才をひきつけた典型なのでしょうね)
山本直純というと「ひげのおじさん」として親しまれなんとなくボードビリアン的な感じを抱いている方もいらっしゃるかと思いますが、今回のこの本を読んで「作曲」「指揮」「啓蒙」の三つをこなし、同業者たちからも「本当の天才」と呼ばれ、それでいてお茶の間でもその名をしらぬ存在はいなかった人物。
「山本直純」という存在は、まるで「我が国のレナード・バーンスタイン」と言ってもよい存在だったのでは無いかと思いました。
テレビ等で忙しく指揮活動から遠ざかっていた直純さんを小澤さんと岩城さんが示し合わせて「もう一回、こっちの世界にきてやろうよ」という誘いに乗った直純さんはNHK交響楽団の定期演奏会デビューが決まりますが、その直後に交通違反を起こし、それがキャンセルとなってしまったことは我が国の音楽界の痛恨の出来事の1つであったと思います。
もし、あの時何事も無くN響定期を振り指揮活動を本格的に再開させていたら・・・と著者も嘆いていました。
歴史とはときに皮肉な出来事がありますね・・・
書きたい事はまだまだありますがネタバレになってしまうと恐縮なので、この辺で。
ただ、この本、クラシックに興味がない方でも楽しめる内容になっていますよ(^^)v
最後に直純さんを師と仰ぎ、そして友人としても長年の付き合いだった「さだまさし」さんの言葉と直純さんの映像を紹介して本日のブログを終わりたいと思います。
「世界中に指揮者の中でベートーヴェンの交響曲、1番から9番まで頭に入っている人は直純さん以外に何人いただろうか?楽譜が全部頭に入っているということはまっさらな五線紙を渡すと1番から9番まで全部書けるということ。」
(訃報を聞いて)「裏切られた感じがした。「こんなにあぅさり死んじゃだめでしょ」。俺になんにも言わず。「それはないよ、直純さん」って感じだった。その後、しばらくはなんにもやる気が出なかった」
「小澤さんと面識はありませんが、僕にとって小澤征爾は「神」です。自分の音楽の貫き方が凄い。だから直純さんが世間に評価されなくても、小澤征爾が山本直純を認めてくれている。あの小澤征爾が山本直純を大事に思ってくれているというのが直純さんの家来としては救いであり、誇りでもあります。勿論、直純さんも「神」の領域ですけど、僕にとってはちょっと違う「神」ですね。結構、我々下々の話も聞いてくれて、ときどき迷惑をかける神様(笑)」
最後の言葉にさださんの直純さんへの思いが詰まっていると思いましたし、言い得て妙でした。
その直純さんの指揮姿。
ベンジャミン・ブリテン作曲 「青少年のための管弦楽入門~パーセルの主題による変奏曲とフーガ」
管弦楽 NHK交響楽団
この曲は英国の作曲家、ブリテンがオーケストラの楽器を分かり易く解説するために作曲した曲です。この動画で直純さんが指揮と解説をしています。クラシックを聴く方にも、これから聴いてみたいと思っている方にも、またあまり興味が無いなぁという方にも聴いて頂きたい名演です\(^o^)/
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お客を飽きさせる事無く、分かり易く、尚且つ楽しい解説。
これも「山本直純という天才」の存在を如実にあらわした動画ですね。
山本直純という名は忘れ去られる事は無いでしょうし、これからもその名前は我が国の音楽界に燦然と輝き続けることでしょう。
山本直純よ、永遠なれ。
本日も最後までお付き合い頂きありがとうございました。