先日のブログ で少しベートーヴェンの第九交響曲の事を書きました。
師走と言えば「第九」。
「第九」自体の演奏会が年末に多いので中々実演を聴くという事は少ないのですが、過去に何度か行った演奏会ではやっぱり客席の埋まり方が普段から見ると多いのです。
黒柳守綱さんの目論見は正鵠を射ていたことの証左なのかしらん(^^)
さて、そんな第九交響曲ですが演奏会に行きたくとも面倒というか電車と地下鉄に乗るのがイヤというかで結局CDで聴くことになります。
第九の代表的名盤と言えば・・・
まずはこれを外すわけにはいかないでしょう。
VIDEO
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団
Sop エリザベート・シュヴァルツコップ
Alt エリザベート・ヘンゲン
Ten ハンス・ホップ
Bas オットー・エーデルマン
1951年のバイロイト音楽祭におけるライブ録音(疑似ステレオ版)
もう、この「第九」は私が音楽を聴き始めた頃、生意気にも「レコード芸術」とか「音楽の友」とか読みだした頃から「決定版」扱いでした。
何も分からない小学生、早速買ってみたのですが「モノラル録音」という事を知らず(笑)音の悪さにガックシ・・・
まだガキには「音の良さこそ一番!」みたいな感情がありフルトヴェングラーの第九はCD棚の片隅に埃を被っていました。
が、中学に進学し、その学校の理科の先生が所謂「フルトヴェングラーキ○○イ」でして(^^;)
その先生が言うわけですよ。
「フルトヴェングラーこそ五線紙の間から宇宙を見た唯一の指揮者だ」
とか
「指揮者はカッコではない。どんな音楽を創るかなのだ。フルトヴェングラーこそその最大の具現者だ!」
とか・・・(笑)
私は「この先生はなんで音楽の先生にならなかったのだろう?」という素朴な疑問が湧いたのですが(笑)
その先生が色々と彼のライブラリーから「カセット」にLPやらCDから落としたフルトヴェングラーの音源を沢山私にプレゼントしてくれたのもいい思い出です。
(ただし、定期考査の理科で100点取ったらとか、小テスト満点連続5回で1カセットとか今にして思えば結構、無茶というか怒られそうな感じでしたけどね笑)
お陰でフルトヴェングラーの世界に少し?引き込まれた吾輩がおりました。
「12月27日:追記
フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルの二次大戦中の第九の映像がありました。
断片映像ですが「振ると面食らう」と言われたフルトヴェングラーの指揮姿を見ることが出来ます。
現在の端正ばバトン・テクニックを持つ指揮者達とは違った指揮ぶりですね。
VIDEO
最前列にゲッベルス宣伝相とヒムラーゲシュタポ長官?の姿、そしてハーケンクロイツがナチス統治下のドイツですね・・・
演奏終了後に握手を求めるゲッベルスに応えるフルトヴェングラー、その心中は如何に・・・
もう一人、フルトヴェングラーと並び称される巨匠、ハンス・クナッパーツブッシュの第九。
VIDEO
こちらも戦中のライブとのこと。
長いタクトを悠々と振り下ろす姿はフルトヴェングラーとスタイルの違いこそあれ19世紀生まれの巨匠の一種の「凄み」を感じさせます。」追記ここまで
音楽の世界(と言っても聴き専ですが笑)に完全に引きずり込まれたのは恐らく中学の頃だったのだと思います。
でも周りでクラシックを聴く友人はおりませんでした(^^;)
なのでこの理科の先生と・・・もうお二方、思い出深い先生との出会いがきっと音楽の世界へのめり込むきっかけだったと思い出しています。
一人は当時の音楽の先生。
まだ当時30代なのに髪の毛は真っ白で長髪という出で立ち(秋篠宮殿下の白髪時代みたい)で
我々が付けたあだ名は「シロクマ先生」(笑)
今にして思えば「マエストロ」とかあだ名を付けるのでしょうが、中学生のガキの考える事ですから面白おかしいあだ名を付けるわけです。
彼は「カール・ベーム教信者」でした(笑)
「いいか?ベームのゆったりしたテンポこそ音楽の真髄と温かみを融合させたこれこそ指揮者の真髄なのだよ。モーツァルトやベートーヴェンを聴くならベームを聴きなさい」なんて授業で言ってました(笑)
当時、小遣いから買えるCDなんて月に1枚~2枚、お年玉で徳間シャルプラッテンの1,000円シリーズとかドイツ・グラモフォンのなんとかベストの1,450円と言った廉価版を買い溜めていた私でしたが、彼からもカセットに落としたベームの音源をたかっていました(笑)
彼は「お前、楽器やらんか?」」と言われ放課後にピアノのレッスンを一週間程つけてもらったのですが・・・
楽譜もろくに読めず(笑)
「うん、お前には才能無いね。でも良い音楽はこれからも聴きなさい。」で終わりました(大笑)
そんなカール・ベームの「第九」
VIDEO
カール・ベーム指揮 ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団
Sop エリザベート・グリュンマー
Alt クリスタ・ルートヴィヒ
Ten ジェームズ・キング
Bas ヴァルター・ベリー
日生劇場でベームがベルリン・ドイツ・オペラを率いた公演のライブです。
これ、確かシロクマ先生に感化されて買ったはずなのでどこかに有るはずです。
もう一人の恩師。
それは数学の先生でした。
彼は所謂「トスカニーニオタク」で(笑)
彼曰く「トスカニーニの音楽こそ楽譜に如何に忠実に演奏するかということを追求した音楽なのだ。聞いてみろ。無駄なテンポの揺らしとか無いだろう。トスカニーニは良いぞお」
とのことで(^^)
理科・音楽のお二人の恩師とともに彼にもテープをたかっていました。
でも、トスカニーニの録音も古い物が多いのでモノラルなんですよねぇ・・・
当時の私ではその良さが全く理解できなかったのが正直な所でした(笑)
でも、その先生から頂いたトスカニーニ指揮NBC交響楽団のショスタコーヴィチの第七交響曲「レニングラード」は音の悪さを通り越して感動しましたね。
そんなトスカニーニの「第九」
VIDEO
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 ロバート・ショウ合唱団
Sop アン・マックナイト
Alt ジェーン・ホブソン
Ten アーウィン・デロン
Bas ノーマン・スコット
師走と言えば「第九」。
その第九交響曲の思い出深い指揮者達の演奏を改めて聴いてみて・・・
フルトヴェングラーのものはテンポの揺らし方は勿論、第四楽章終結部のプレストがオケが破綻寸前になりながらも進んで行く推進力とオケの爆発力、合唱とソリストの素晴らしさ、どれをとってもやはり決定版と言っても良い出来ですね。
彼が長生きしてステレオ録音を残してくれていたなら・・・
といつも思います。
当時、ステレオ録音の技術はあったようですが、まだ実験的要素が強く当時のマエストロ達は懐疑的だったとか。
(因みに1944年にカラヤンが実験録音の一環としてステレオ録音されたブルックナーの交響曲第八番第四楽章のCDが出ています)
また「フルトヴェングラーのステレオ録音」というと「ゴルゴ13」にそれを主題とした話がありました(^^)
ベームの演奏はステレオとなり大分、聴きやすくなっていますが、会場が日生劇場故かちょっとデッドです。
しかし彼の誠実な音楽に向き合う姿勢を感じることが出来る演奏です。
トスカニーニは恩師がおっしゃったとおり余計な贅肉を削ぎ落としたソリッドな演奏です。
しかし音楽が平板というわけではなくトスカニーニというマエストロがこれでもか!という位にスコアを読み込み、そこから生み出された素晴らしい演奏であることが分かります。
恩師、三人の思い出。
とても懐かしく思い出されます。
私が合唱コンクールで指揮者賞をもらい(笑)卒業式の「大地讃頌」の指揮を任された時、このお三方と私、四人でお話をすることがありました。
「お前はどんな風にやりたいんだ?」
と聞かれて
「カラヤンのようにやりたいです」
と言ったら。
その恩師三人は口を揃えて
「何?カラヤン?いかんいかん!」
どうやら信奉する指揮者は違えど「アンチ・カラヤン」という点では一緒だったようです(笑)
でも中学生にはカラヤンの目をつむりながらのあの神秘的な指揮姿に憧れていたのですよ(^^;)
そのカラヤンの第九。
VIDEO
やっぱり、カラヤンの指揮は惚れ惚れしますね(^^)
で、結局は「お前の好きなようにやれ」という事になったのです。
感動的な「大地讃頌」が終わり卒業式が終わった後に三人の恩師に「どうでしたでしょうか?カラヤンになってましたか?」と聞くと。
お三方とも口を揃えて
「カラヤンというよりヤマカズさんだな」
との論評が(笑)
当時「山田一雄」先生を知らなかった私には「?」でしたがヤマカズ先生の指揮姿の映像を見つけました。
VIDEO
山田一雄指揮 読売日本交響楽団
G・マーラー 交響曲第一番「巨人」より第四楽章
ちょっと前のブログでも書きましたが、その指揮姿はVHSに保存され同級生全員に配布されました。
私もDVDに落としたものを見かえましたが確かにキューは出しまくってるわ、指揮台の上で飛んだり跳ねたり・・・(笑)
しかも鼻水と涙でひでぇ(大笑)
未だに同級会のネタにされるのも致し方ない仕上がりです(^^;)
本当はこの若い指揮者のようにスマートに指揮したかったのですがねぇ・・・
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レナード・バーンスタイン「Young People’s concert」より
W・A・モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」より序曲。
若き日の小澤征爾さんです(^^)
バーンスタインが前説で言っていますね。
「三人の副指揮者の中で最も若い、日本からやってきた26歳の指揮者。あなた達は将来、この名前を頻々に聞くことになるでしょう。セイジ・オザワ」
26歳にして天下のニューヨーク・フィルを斎藤メソッドのスマートな指揮でドライブ。
カッコいいなぁ・・・
そんなこんなで年末、第九のシーズンとなり昔話を思い出しています。
今にして思うと彼ら恩師は不惑の歳になった私よりも当時、若く熱血教師達でした。
よくもまぁ生意気盛りのガキ達を根気よく教育してくれたものだと感謝・・・
ま、悪いことすれば鉄拳制裁なんて当たり前の時代でしたし(^^;)
そんな彼ら恩師に数年前に同級会でお会いした時は校長先生とか教頭先生とか、えらーくなってました。
「お前らの頃は先生の言うことを素直に聞いてくれる生徒ばかりでよかった」
とか「平気でバシバシ殴ってたなぁ」とか(笑)
だって親父やお袋も「悪い事しでかしたらどんどんぶん殴ってください」とか言ってましたもん(^^;)
学校で怒られ、帰宅すると今度は両親に怒られるという(笑)
自然に悪いことしなくなりますよ(^^)
「そんなお前が官僚様になるとは・・・」とも(大笑)
って、既にその時は辞めた後でしたが。
「今でも聴いてんのかい?」
なんて酒が飲める年齢になってからする恩師との会話、最高に楽しかったですね・・・
(朝まで連れ回して申し訳ありませんでした、先生笑)
え?今聴いている第九ですか?
これに何故かハマってまして。
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マキシミアンノ・コブラ指揮 ヨーロッパ・フィルハーモニア・ブダペスト管& 合唱団
Sop イングリッド・ケルテージ
Alt ベルナデッテ・ヴィーデマン
Ten ヨーゼフ・ムック
Bas イシュトヴァーン・ラーツ
指揮の往復運動を一拍として数える理論「テンポ・ジュスト理論」を実践するマクシミリアンノ・コブラ。
前に拙ブログ
「珍」な演奏と曲 で紹介しましたが、あれ以来、この演奏が面白くて(笑)
なんというか「くさや」的な味わいと言いますか・・・(コブラさん、ゴメンナサイm(_ _)m)
やはり何度見ても第四楽章のオケと合唱団の「死んだ目」状態が笑いを堪えるのに(^^;)
でも何度も見てしまう中毒性があります(笑)
皆さんの年末の「うた」や今年の「うた」はなんでしょうか?
今年も残る所、数日となりました。
残りの日々が良い年になりますよう。
本日も最後までお付き合い頂きありがとうございました。