今回は直接作業とは関係ありませんが、防錆剤について。
連続で紹介している作業。自身で何気に読み返してみると、傍から見てて何だコイツ?
てな位、やたらと錆・さび・サビ・・・
しつこい程に連呼しながら各最終行程で何かにつけて防錆剤を多用していますね。
実際、相当神経質な程に気を使って作業してるのですが・・・(笑)
実は、下地の鋼板処理に自信がないのを、こだわって仕事をしているように見せかけてるだけ?とか、材料に頼り過ぎなんじゃね?そもそも、そんなに効果があるのか?なんて懐疑的な方もいらっしゃるんじゃなかろうかと?
なので、もうちょっと補足があればいいかな?と(^_^;)
まず、鉄というものはご存知のとおり
酸化鉄である鉄鉱石の塊を人為的に莫大なエネルギーでもって精製します。
そして、鉄(金属)として精製された瞬間から酸化(錆)方向へとしか変化しないものです。
つまり、遅かれ早かれ錆びる運命。正直なところ、自然の摂理に抗うには限界がありますが、それに対してどのように対処するか?いかに長持ち、延命させるか?
が修理、特にレストアの分野に関しては重要になるんです。
日常業務において、本格的とまでは行かないにしてもレストア的な作業も数多く引き受けています。これはある意味仕方のない事かもしれませんが、
エンジンのメンテナンスには注意を払われている方が多い割には、ボディーに関しては錆びてどうしようもなくなってから相談に来られる方が多いんですよね(^_^;)
そして、それらの作業の際に発生する、錆びて朽ちた鋼板や新品鋼板の端切れは大事な実験用の宝物。
ボディー鋼板の端切れを利用し、各材料を試しているテストピース類の集合写真です。
錆びた鋼板をいかに処理するか?
錆びていない鋼板をいかに強固に防錆するか?
また、同じ目的の防錆剤や錆処理剤でも様々なメーカーがあり、どのメーカーの物がベストなのか?
その実験結果の中で(現時点においては)最良であると結論づけているものを使用しています。
下の写真はテストピースの拡大写真ですが、鋼板の素地を露出させて3パターンの実験。
廃材置き場に放置、スクラップ屋さんに回収されてしまわないように注意しながらの暴露テスト(笑)
別々のテストピースではなく、こうすることで同一条件下での比較が容易になります。
左端が今回使用している防錆剤(透明タイプ)。
中央が鋼板素地のまま露出させた状態。右が他社メーカー防錆剤(黒色タイプ)
裏側に製品メーカー(核心部分ですのでボカシてます)と作業日が記載しています。
但し、作業日は記載ミス。約1年月の表記も1年間のミスですね(~_~;)
正確には2014/1/13ですので、約1年間、野外の暴露実験を行なった状態です。
ね!1年間風雨に晒されながらも流れ落ちる事なくキッチリ仕事してくれているでしょ。
これを最終処理に使えば、どれだけ心強い事か!
行うべきことをキッチリ行った上で、最後に使用する最強の御守りです(笑)
この他にも状況に応じて多種多様の防錆剤や錆処理剤を使用します。
実際に実験をしてみると、
有名どころの商品がそれ程でも無かったり、逆に、期待していなかった商品が物凄く良かったりと案外面白い結果が見えてきたりもします(笑)
ちなみに、
「防錆剤」は錆びていない鉄を錆ないようにするもの。
「錆処理剤」は錆びてしまった鉄に対し、錆の進行を抑制するものです。
下の写真は錆処理剤の一例で錆転換剤。
錆チェンジャーとか色々な言い方がありますが、タンニン(簡単に言うと柿渋ね)の成分を利用し、酸化した錆から酸素を抜き出す還元作用が有る薬剤。還元と同時に、乾燥すると樹脂皮膜で錆をコーティング(覆い隠し)します。
話ついでに今回の作業では使用していませんが、錆処理剤については?と言うと、
プロユース、DIYユース問わず、錆びた鉄もこれを塗れば・・・!!
みたいな、いかにも効きそうな謳い文句の商品が多数販売されていますが
錆は人間の癌と同じで、錆処理剤は抗がん剤と同じ様なものになります。
確かに、使用方法によっては有効な物ではあるのですが、
癌(錆)の進行速度を可能な限り遅らせる役割をするものですので、
最大の処置は発見次第、早期に除去し切ることが先決!
話は飛びますが、塗装の目的は見た目(美観)だけじゃないんです。
車に求められる塗装の役割として、
外観(美観)性、耐候性(車体の保護)、意匠性(色合いやデザイン)、耐チッピング(石はね)性、防錆性があります。
つまり、最も強固かつ堅牢な防錆皮膜は塗装そのもの。
だから外的要因の影響を一番受ける車両の外装に採用されている訳で、その補助のために使用するのが防錆剤になります。
錆というものは、その強固な皮膜を突き破って出てくる訳ですし、表面が錆びていればその裏側や周囲、さらに奥(根っこ)にも生じているんです。
錆処理剤で、見えている錆の表層のみを科学的に転換させようが、強固な皮膜で覆い隠そうが・・・
もちろん、個々の作業の予算や依頼内容によっても状況が変わりますので一概にダメだとは言えません。それらの制約によるものや、物理的に除去しきれない場合等、限定的な使用方法であることが重要になります。
ただ、もしも、実際にレストアや錆処理の相談に伺った先で、錆処理剤を過信し、無闇やたらと多用しようとする様な所があるならば、そういった所は控えるべきでしょうね(笑)
神戸ボディショップ カテゴリ:その他(カテゴリ未設定) 2010/08/26 19:14:56 |
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