記事そのものはこちら。最後の部分を引用しておきます。
レッテルとしてのフクシマ
ともあれ、自分たちが使っている「レッテル」と「思考停止ワード」を列挙して、互いにそれを含みおいた上で議論をすれば、論争の不毛さはずっと軽減される。そう考えて、せめてレッテルを貼る時には、そのレッテルに対して覚醒していようではないか。
【フクシマ】:福島県のこと。原発事故を「ヒロシマ」「ナガサキ」の悲劇と並列させる文脈で語る際に、好んで用いられる。カタカナ表記は、この用語が「国際社会に向けて発信されている言葉」だということを示唆している。しかしながら、「フクシマ」が“Fukushima”でない点に注意すれば、この言葉の使い手が、日本人を対象に向けて語っているのは明らかで、つまるところ、この言葉を使う人間は、自分が、「国際派の日本人」である旨をアピールしようとしているに過ぎないのである。
サムライ、ハラキリ、ゲイシャ、ツナミ、などなど、外人さんの視線を背景に語る日本人は、自国の文化や出来事を物珍しい陋習、ないしは恥辱として扱う植民地商人の手つきを……というのは、言い過ぎですね。はい。撤回します。
【原発ムラ】:原発利権を防衛するために団結している人々、またはその組織。メンバー構成や利権の配分状況が著しくムラ社会的であり、成員の行動原理がムラビト的(集団志向で、型にハマっていて、頑迷固陋で、秘密主義で、ウチに対しては横暴&従順で、外に対しては不誠実かつ冷酷)であることからこの言葉が使われる。ただし、適用範囲は、使う人間によってさまざま。電力会社社員、安全委員会、原子物理学者、原発選挙区の議員といった主要なメンバーのみを指す場合もあれば、原発労働者、原発シンパ、推進派の一般人、マスメディア社員、優柔不断なコラムニストなどを含めたすべてをムラビト視する論者もいる。私見を述べれば、この言葉を多用する人間は、「ムラ」を利害を共にする集団というよりは、陰謀の主体と見なす傾向が顕著で、ために、見解を異にする人々を迫害しがちで、最終的には自らがムラビト化しやすい。
【御用学者】:原発の推進と存続のために、原子力関係者に都合の良い理論とデータを提供する一群の学者を指す。研究テーマ自体が原発を前提としており、研究費の多くを関係諸団体に依存しているため、何を言っても信用されない。まあ、過去のいきがかりからして、仕方がない部分もある。ただし、誰を「御用学者」とするかについては、常に紛糾している。最も極端な一派は、「冷静に」という言葉を使っただけで、ただちに「御用学者」に分類する。冷静になってほしい。
【エア御用】:御用学者が、国なり原子力業界なりからなんらかの利益供与を受けているのに対して、「エア御用」は、具体的な利益とは無縁でありながら御用学者的な言説を提供している人々を指す。「ボランティア御用」とも呼ばれる。評論家、記者、新聞の解説委員、テレビのコメンテーター、小説家など、立場はなんであれ、原発に対して容認的な発言をする人物は、「エア御用」に分類される。ただしこの場合も、どこまでを「エア御用」とするのかについて、結論は出ていない。ちなみにでんこちゃんは隠れ脱原発だったことが発覚して、エア御用の広告代理店社員によって抹殺されたと言われているが、この最後の一文はエア御用コラムニストによる真っ赤なうそ。
【安全厨】:エア御用とほぼ同じ。ここで言う「厨」は「中学坊主→中坊→厨房→厨」という順序で連想変換された2ちゃんねる由来の接尾辞で、おおまかな意味は「(……を言い張る・に固着する)バカ」といったあたりにある。転じて「安全厨」は、「やたらと安全を連呼したがるアホなヤツ」ぐらいな意味になる。具体的には、原発や放射線について安易に「安全」という言葉を使う学者や評論家のこと。ただし、認定基準が用語使用者の恣意に委ねられている以上、実効的な意味は発言者の見識に依存する。東北新幹線に乗ったことをブログに書いただけで「安全厨」に分類された学者もいる。対義語として「危険厨」がある。
【放射脳】:放射能を過剰に怖がる人々、またその彼らの脳のありよう、およびその結果としての行動形態。主に理科系の学問をおさめた(自称も含む)研究者や、理性派を自認するグループが使う。対象は、反原発運動家や、非科学的な脱放射能健康食品の普及を進めている人々など。当然侮蔑を含んでいる。
以上です。今回はオチがありません。みなさん。福島に行きましょう。当地には素晴らしい春がやって来ようとしています。大丈夫。安全厨の私が保証いたします。
(文・イラスト/小田嶋 隆)
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原発事故 | 日記
Posted at
2012/04/02 07:16:36