
誰もが認めるとおり、ベースとなったのはRA107
加えてシーズンオフは資金難の影響で、ほとんどテストが出来ず・・開幕戦への参戦もあわやという状況だったスーパーアグリと琢磨の2008年
それでもなんとか開幕戦にこぎつけ、予選ではルノーのピケを上回った・・
2008.03.17 AUSTRALIAN GP(今宮雅子さん著 スーパーアグリ伝説より)
「それより亜久里さん、あのクルマ、ものすごい大変ですよ」
「そんなに運転しにくいの?」
「うん、ホントに難しい。もう、びっくりした」
「去年のクルマのほうが乗りやすかったの?」
「乗りやすかったですね。たぶん、まっすぐ走ってる状態では、今年のクルマのほうがダウンフォースが出てるんだと思うんですよ。でも、それを上手く使えない。空力の重心があっちに行ったりこっちに行ったりで。去年のクルマはそのあたりがすごいフラットで、ドライバビリティは良かったのね。ダウンフォース自体はないけど、どこに行っても、どんなコーナーでも同じ感じだから、僕の好きなように上手く乗れたんです。このクルマ、1回風洞に入れましょうよ」
19位のグリッドからスタートして、絶妙の操作で混乱を潜り抜け、1周目には11位までポジションを上げていた。スタートでは必ずジャンプアップして帰ってくる・・
2008.04.05 BAHRAIN GP(今宮雅子さん著 スーパーアグリ伝説より)
「走行が進むにつれて路面は良くなってきて。でも、普通はそれでクルマのイヤな部分がひとつにまとまって良くなっていくのに、ちぐはぐなままなんです。コーナーの入り口と、ミッドと、出口で全然違う性格が出ちゃって」
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ベースはミニッツF1のマクラーレンMP4/22ホワイトボディ・・
SA08はHONDAのRA107がベース
今回、
BAR006、
SA07(RA106)、SA08(RA107)と
3台製作してきて
あることに気づいた
BAR006(04年)は
フェラーリF2005(05年)をベースに・・酷似してるからつかった
SA07(RA106 06年)は、
フェラーリ248F1(06年)をベースに・・これもそっくり
SA08(RA107 07年)は、
マクラーレンMP4/22(07年)をベースに・・
ここでわかった事・・
デビット・リチャーズ体制だった頃のHONDA、すなわち2004年度は空力は抜きに出ていて、あのフェラーリを脅かし、ついには翌年のF2005として真似される側にあった・・
しかしフライ体制にかわった2005年度、きわめて保守的になったチームは、あの鈴鹿で魅せ付けられたマクラーレンライコネン、すなわちMP4/20以降現在につながるエアロトレンドのもつ速さに度肝を抜かれ、今度は追いかける(真似する)側に回ってしまったのだ・・
そしてポイントとなるのはMP4/18(初期型の大失敗作に)見る、この手の超センシティブなエアロパッケージのきわめてリスキーな両刃の剣的な危険性・・
エイドリアン・ニューエィほどの、超絶対的な空力へのこだわり、コミットメント、そしてそれに全信頼を寄せるチーム体制をもたず、トレンドを取り入れてみただけ(のように映る)のRA107は、もはや完全にHONDAがF1という厳しい技術競争のなかでフォロワーに回ってしまった事を意味していると、こう感じるのだ・・
SA08はきわめて写真がすくない
そして、バーレーン仕様ともなると、詳細を調べて行くと、中古のカウルが一部継ぎはぎされていたり、開幕時にいたスポンサーがいなくなっていたりと、つくっていて本当につらくなってしまうことの連続であった
そしてF1がスーパーアグリを失ったあの日・・
必ずSA08を完成させて走らせる!!と誓ったあの日から、はやくも1年が経った
SA08が完成したとき、僕は泣いた
涙がボロボロと溢れ出てきた・・
悔しくて、せつなくて・・
僕はスーパーアグリを忘れない

「諦めるのは簡単なんだけど、もともと性格的にそうはできないし、この状況の中でも限界まで攻めて、少しでもクルマを速くはしらせたい・・・・」

ノーズコーンの両脇にあるはずの整流翼板が、琢磨だけなぜか決勝では片方付いていない。
バーレーンではいくつか中古パーツを組み合わせてレースに臨まざるを得ない状況だった

開幕戦でいくつかあったスポンサーたちも、バーレーンではほとんど無くなっていた。
オートバックス、サマンサキングズ、そしてHONDAと日本企業のみが残った

・・このカラーリングでF1に臨むのも最期
まるで60年代第一期ホンダF1のような、純HONDAレーシングを彷彿させる・・

SA07と並ぶ・・
大活躍したSA07とちがって、SA08はもの悲しいオーラを発している・・

以下、今宮雅子さん著 スーパーアグリ伝説より転載
琢磨ファン、スーパーアグリファンのみなさん、
この本はぜひ読んでみてください!!
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資金難と、カスタマーカー問題。わかっていても、納得できないというのがスーパーアグリを応援してきた人たちの正直な気持ちである。これは、理詰めの話ではないのだ。もともと、存在すること自体”あり得ない”と言われた、現代のおとぎ話と言われたチームが本当に存在し、メーカー顔負けの活躍まで見せてくれたのだから。みんなが探していた瞬間を”これだよ!”と示してくれたのだから。
「欲しいものが手に入らないのは、大きな問題じゃないんです。お金を貯めていつか手に入れればいいし、そうじゃないなら自分で作ればいいんだから。だけど、お金で買えないものがあるじゃない? ハートだったりね。このチームには、それがあるんです。」
後ろが”グニャグニャする”マシンで、パワーアシストの利かないステアリングを握り、両手に何重もの”マメ”を作りながら琢磨が話していたのは、06年のこと。
「これだけ組織化されオーガナイズされたF1でも、人間の力でどこまっでやれるか。僕らは、それを見せたいんです」と言ったのは、チームに初めてのポイントをもたらした07年 ーーーー。
F1チームとして生き残り成長していくため、スーパーアグリには資金も設備も足りなかったかもしれない。しかし、潤沢な資金や設備を手にしたメーカーチームに欠けているスピリット、お金で買えない、上層部が号令をかけても生まれないレーシング精神が、SAF1には備わっていた。
ひとりひとりの心と身体の中から自然に発散されるエネルギーを、たったひとつの方向に結集する ーー そんなスピリットを持ったチームは、つくろうとしてもつくれない。私たちはきっと、もう二度と、スーパーアグリのようなチームには出会えない。
負けたのは、スーパーアグリではない。 F1が、スーパーアグリを失ったのだ。
Posted at 2009/07/11 12:41:09 | |
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