
新しい直列6気筒ディーゼルエンジンを搭載した、ベンツSクラスに試乗してきました。
乗ったグレードはS400d。Sクラスのエントリーグレードになりますが、車両価格は税込(以下同じ)1138万円。試乗車にはさらにベーシックパッケージ(56.6万円)とレザーエクスクルーシブパッケージ(70.4万円)、AMGラインプラス(91万円)がついて、合計は1,356万円となります。
試乗したS400d。ボディカラーはイリジウムシルバー。
なお、以前にS450とS560にも試乗していますので、その時の印象を思い出しながらS400dの試乗記をまとめたいと思います。
こっちは以前に乗ったS450。
日本仕様のSクラスのエンジンは、ガソリンが3リットル直6(S450)と4リットルV8(S560)、6リットルV12(S600)の3機種で、プラグインハイブリッドが3リットルV6(S560e)の1機種。そして、ディーゼルが今回試乗した3リットルの直6(S400d)1機種です。
ちなみに、マイバッハは4リットルV8(S560)と6リットルV12(S650)のガソリン2機種、AMGは4リットルV8(S63)と6リットルV12(S65)のガソリン2機種になります。ガソリンもディーゼルもハイブリッドも、素のSもAMGもマイバッハもすべてターボを搭載。
222系Sクラスは登場から6年目で、当初はV型エンジンのみでしたが、マイナーチェンジ後しばらくしてから3リットルガソリンエンジンが直6に換装されました。ハイブリッドはV6のままですが、NAからターボ化。ディーゼルは当初直4ハイブリッドのみでしたが、これがディスコンとなって直6ディーゼルが登場しました。
OM656型ディーゼルエンジン。
DOHC直列6気筒ツインターボ、2,924ccで340PS/700Nmを発揮します。2006年にEクラスに搭載されて日本市場に久々に登場した、OM642型V6ディーゼルエンジンは同じ3リットルで211PS/550Nmでしたから、パワーもトルクもずいぶんアップしています。
S450に搭載されているM256型ガソリンエンジンと共通部分が多いといわれていますが、M256型は排気量が2,996ccとなっています。
下がM256型。確かに見た目はそっくり。同じ部品が使われているようにも見えます。
S450に搭載されているM256型は、過給がターボだけでなく電動のスーパーチャージャーとの2段式になっています。一方、OM656型は大小2つのターボで2段過給する2ステージターボ(ボルクワーナーの
R2S?)。しかも小さい方は可変ジオメトリ(VG)式。どちらもお金がかかっています。
なお、S450はフライホイールの部分にモーターが組み込まれているハイブリッド車ですが、S400dにはありません。純内燃機関車です。
OM656型の進行方向右側サイドのアップ。
M256ではターボと電動スーパーチャージャーと触媒のスペースですが、OM656には電動スーパーチャージャーが無いかわりにもう一つのターボとSCR(選択還元触媒)が加わります。以前はセンタートンネル内にあったSCRがエンジンサイドに移動し、DPF(ディーゼル微粒子フィルター)と一体化して設置されています。このスペースが確保できるのが直6を採用した理由の一つであるようです。
試乗したS400dはAMGラインプラス仕様。タイヤが一回り大きくなり、20インチとなっています(前245/40R20、後275/35R20)。ランフラットタイヤはS600だけになり、他のモデルは通常タイヤ+パンク修理剤の組み合わせになりました。
なお、以前選択できたAMGライン(19インチ)は廃止され、SクラスについてはAMGラインプラスに一本化されたようです。
ベンツではすっかりお馴染みとなった、液晶画面が2枚並ぶコクピット。
夜はこんな感じで、まあなんというか、キンキラキンで派手。
エンジンを始動すると、しっかりディーゼルエンジンの音が聞こえます。ただし、ディーゼルとしては自分史上最高に静かで振動が少ないです。欧州製ディーゼル車は2台ほど購入して乗った経験がありますが、S400dの音振性能には感服せざるを得ません。
ただ、ガソリンのS450はもっと静かで、ISGの効果でアイドリング回転数も低く抑えられ、アイドリングストップ・スタートはほぼ無振動。S400dと比べると明らかなアドバンテージがあります。Sクラスといえども、ディーゼルはやはりディーゼルです。
走りはかなりパワフル。アクセルを開けた分だけ車がしっかり押される感覚が気持ちよいです。ディーゼルらしく上の方は伸びませんが、下の方でほとんどの用事が済む感じ。
エンジン音は「グルグルグル……」という低音の効いたもので、アクセルを踏み込んで車内に入ってくる音にもかなり迫力があります。スウッーっと発進してシューンという感じでどんどん加速していくS450と比べると、同じような速さでも車を走らせている実感はS400dの方が強いといえます。
エンジンの性能もさることながら、9段ATをコンフォートモードでも1速発進させていることが、出足のよさを演出しているとも思われます。
なお、ドイツ本国サイトにある0−100km/h加速データは、S400dが5.4秒で、S450が5.1秒(ともに2駆)と、大差がありません。「400」と「450」という数字通りの差ともいえます。
モーターアシスト付きの同排気量ガソリン車と同等の勝負をしているわけですから、動力性能におけるディーゼルであることのハンデはほとんど無いといっていいと思います。
それにしても、0-100km/h5秒台前半というのは、ついこの前までスポーツモデルの数値だったと記憶していますが、Sクラスのエントリーグレードがこういう数字をたたき出す時代になったかと思うと感慨深いものがあります。
その分お値段も上がっているわけですが……
222系Sクラス自体は、商品として熟成が極まって、登場当初に感じていたチグハグ感がなくなりました。20インチタイヤにも関わらず乗り心地はまろやかで、かつ、フラットにビシッと走る芯の強さがあります。頼りないところがほとんどありません。
これまでに試乗したS560とS450、S400d、どれもハズレがないといえますね。
450か400dかは悩ましいところです。
人様にオススメするのは間違いなく450の方ですが、400dのワイルドさが個人的には捨てがたい。車両価格は400dの方が32万円安いですし、400dを買えば燃費という嬉しいボーナスもついてくるはず。「甲乙付けがたい」とはまさにこのことでしょう。
ケチらずに(本国にはデチューン版のS350dがある)、最強版から直6ディーゼルを導入してくれたベンツ日本法人に感謝したいと思います。
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2019/01/17 01:49:07