
BMWの新型3シリーズ(G20)が発売になりました。
発表されたのは1月末。すでに先行受注はスタート。2月末頃から、正式発売に向けて各店舗に展示車や試乗車が続々と配備されました。
先日、試乗の機会を得ましたので記事にまとめておきましょう。
カタログモデルとしてまず登場したのは320i(184PS/300Nm)と330i(258PS/400Nm)。
320iはスタンダード(税込(以下同じ)523万円)とMスポーツ(583万円)が基本。その他に、スタンダードから運転支援系などの装備を省いたSE(452万円)が受注生産で用意されますが、実質的には2グレードといえます。
330iはMスポーツ(632万円)のみの設定。
写真は320iMスポーツ。販売の主力になると思われるグレード。ボディカラーはミネラルグレー。
320iは「日本専用」という記事がネットで流れてくるのですが、本稿執筆時点では、ドイツ仕様G20にも320iは設定されています。エンジンスペックも日本と同じ184PS/300Nm。どういうことかと思いましたが、
こちらをよく読んでみると、本国に設定が無いのではなく、発売が遅れるということのようです。「専用」というのはどうかという気はします。
「日本専用」といえば、先代F30と先々代E90系では全幅を1800mmに抑えてありましたが、G20ではついに1825mmに拡大しました。こちらに関しては、残念ではあるものの、ここまでよく頑張ってくれたという思いの方が強いです。
ちなみに、ドイツ仕様では、ガソリンが320iと330iに、M340i(374PS/500Nm)を加えた3機種がラインナップ。ディーゼルが318d(150PS/320Nm)と320d(190Nm/400Nm)、330d(265PS/580Nm)の3機種となります。
M340iと330dが直列6気筒で、それ以外は直列4気筒。
さらに、プラグインハイブリッドの330e(2リットル直4ガソリンターボ+モーター、システム出力252PS/420Nm)もラインナップされます。
先代F30系から、ラグジュアリーやスポーツといった多グレード展開が始まりました。G20についても、本国ではアドバンテージ、スポーツ、ラグジュアリー、Mスポーツの4グレードが提供されているのですが、日本市場では実質2グレードのみに絞り込まれています。
320iスタンダードとMスポーツの価格差は60万円。この間に複数グレードを展開してもあまり意味が無いと判断されたのかもしれません。もっといえば、日本ではもうMスポしか売らないという意思表示なのでしょうか。
これまでMスポーツは後から追加されていましたが、G20は本国でも日本でも最初から用意されます。わかりやすいスポーツ性を求めるのは世界共通の傾向なのかもしれません。
日本仕様G20は、グレードだけでなくボディカラーも売れ筋に絞り込まれています。
カタログで選べるのはアルピンホワイトIII、ミネラルホワイト、ミネラルグレー、ブラックサファイアの4色だけ。
ホワイト系はソリッドかメタリックかの選択なので、実質的には白・黒・灰の3色。Mスポ限定でポルティマオブルーが選択できますが、それを入れても実質4色。
赤などの暖色系はおろか、なんとシルバーも未設定。ずいぶんと思い切ったことをやったものだと思います。結局は白か黒しか買わないとしても、迷った末に無難な選択に落ち着くのと、最初から無難な選択肢しか無いのでは、購買意欲にも差が出てくるような気がします。
もちろん、ドイツ仕様には豊富なカラーバリエーションが用意されています。
次も同じ320iMスポーツですが、デビューパッケージの装着車。19インチタイヤが外観の大きな特徴。ボディカラーはポルティマオブルー。
320iMスポーツをもう一台。こちらはアルピンホワイトIIIのボディカラー。もっとも売れ筋の組み合わせになるのでしょう。

今度は330iMスポーツ。ボディカラーはミネラルホワイト。330iも19インチタイヤはオプション。
この車はファスト・トラック・パッケージを装備しているので、19インチタイヤのほか、Mスポーツ・ディファレンシャルとアダプティブMサスペンションが追加されています。
7シリーズで始まったレーザーライトはパッケージオプション。装着するとこのように光ります。ロービームでも内側が点灯し、ポジションランプがランプ上半分まで伸びてきます。
標準のヘッドランプは、SEを除いてアダプティブLEDライトを装備。レーザーライトと違い内側は光りません(ロー・ハイとも)。また、ポジションランプはランプの下側だけで、上の方には伸びてきません。
他のランプ類もほぼLED。明るく均一に光り、上質感があります。
フロントグリルにはシャッターがつき、中の「つっかい棒」は見えなくなりました。
F30では18インチだけでしたが、G20では19インチにもリアに貼付フェンダーが必要になりました。確かに、G20はF30よりもタイヤが外側に出ているような感じがします。
給油口。320dの追加が示唆されていますが、ディーゼル車では左側がアドブルーの注入口になるのでしょう。
320iのエンジン。B48B20B型、1998cc直4ターボ。形式は330iも同じです。
インテリアを紹介しましょう。320iMスポーツ標準車。
シートはアルカンターラと合皮のコンビ。
こちらはデビューパッケージ装着車。ヴァーネスカレザーに青いステッチが入っています。また、トリムはアルミから木目に変更。
少々わかりにくいですが、個人的にはこの木目のトリムの方が好みです。
デビューパッケージ装着車のリアシート。全長もホイールベースもF30より延長されたためか、スペースには余裕があります。
「ライブ・コックピット」とよばれる、新しい全面液晶インパネ。SEを含めて全車標準です。写真はデモ中の画面。タコメーターが反時計回りになるなど思い切ったレイアウトですが、見やすくまとまっていると思いました。
液晶上部中央には、レベル3以上の自動運転時のドライバー監視カメラがついていますが、現時点ではその機能の存在はアナウンスされていません。
ただ、カメラを向けると写真のように赤外線(たぶん)が照射されているのがわかります。作動はしているようです。
ランプのスイッチがロータリー式からボタン式になったのは大きな違い。なぜか、メーター照度調整だけはダイヤル式を踏襲。
パーキングブレーキも電動化され、ブレーキホールドが装備されました。エンジンスタートボタンはセンターコンソールに移動。中央のナビ画面の精細さ・美しさは印象的。ほとんどの操作がタッチで可能で、idriveの出番は少なくなりそう。
内装の質感は、とくに高級というわけではないが、安っぽいわけでもないという、BMWらしいポジションにうまくまとめてきたと思います。F30で見劣りしつつあった部分のリカバリには成功しているのではないでしょうか。
ここからは試乗の印象を。お店のはからいで、320iと330iの両方を乗り比べることができました。
外から聞くエンジン音はまぎれもなく直4の音ですが、車内の静粛性はかなり高くなっています。エンジンの回転感もあまりザラついた感じがなく、直4の中ではかなり上質だと思いました。
330iにはアダプティブMサスペンションが装備されていました。このサスペンション、初めての体験だったのですが、かなり堅いのですね。コンフォートに設定しても、歩道の段差を乗り越えるとドシンと来ますし、道路の凹凸もかなり拾います。後席はかなり厳しいかもしれません。
一方、ノーマルサスの320iはそこまで堅くはありません。もちろんソフトというところまではいかず、市街地ではBMWらしい引き締まった乗り心地が味わえます。
ただ、スピードを上げるとアダプティブMサスペンション車の方が挙動が落ち着き、ノーマルサスよりもフラット感が増してきます。高速道路を運転する際には、アダプティブMサスの方が快適だと思いました。
320iと330iのパワー差ははっきりと感じます。ドイツ仕様の0-100km/hデータはそれぞれ7.1秒と5.8秒。5秒台に入る330iはなかなかの俊足。個人的には330iくらいの加速性能は確保したいところです。
F30デビュー当初の320と328には120万円近くの価格差があったのですが、G20は50万円ほどの差に縮まったので、330iの方に相対的なお得感が出てきました。性能差を考えると、私のチョイスはやはり330iになりますね。
新型3シリーズ、なかなかいいんじゃないでしょうか。ただ、330iMスポで私好みの仕様にするとコミコミ730万円くらいになってしまいます。この値段では他を探したくなりますが、いずれ値段もこなれてくるでしょうし、選択肢も広がるでしょうから、その時になったらまた考えたいですね。
試乗の機会を提供してくださったセールスさん、どうもありがとうございました。