
セパハンのバイクが好きなんです。
という一文を書くにあたって、はて?私の好きなのはSSなの?レーサーレプリカなの?それともセパハン&フルカウルバイクと呼ぶべきなの?という定義に迷った末に書いたのが前回のブログでした。
別にSS好きというわけではない。もっといえば狭義のSSなんて乗ったこともない。でももうちょっと広い意味でのセパハンバイクは好き。だからそう書くことにする。
そう、私はセパハンが大好き。
免許を取って2台目に買ったアプリリア・RS250に始まり、これまでに計6台のセパハンバイクに乗ってきた。ちょっと書き出してみる。
(1) アプリリア RS250
(2) ドゥカティ 400F3
(3) ドゥカティ 851SuperBike
(4) アプリリア RS250(買い直し)
(5) ドゥカティ SuperSportS
(6) MVアグスタ Superveloce800
うち、ドゥカティのSuperSportS(スパスポ)だけ、まだ手元にいる現職さん。
この中で単独所有していた(1台だけで運用していた)バイクは2回目のアプリリアと、リターンバイク1台目だったスパスポの最初の2ヶ月だけで、あとは複数所有バイクの中の1台だったけど、心の中ではどれもその時の「メインバイク」の位置づけだった。
バイクにまた乗ろうと決めたのも、身体に残っていたセパハンの感覚のおかげだった。
数年前にリターンを考えはじめたとき、自分が本当にまだ乗れるのかどうかを確かめようと、2台レンタルしてみた。最初に借りたW800は「うん、まあこんなもんかな、一応まだ大丈夫そうだね」という感じだった。でも次に借りたCBR650Rに跨って走り出したとき、「これだよこれ!」と、忘れてた感覚がすぐに蘇ってきた。20年近く失われていた身体の一部が戻ってきたみたいな感じ。それでもう答えは出て、結果的にセパハンの中でも前傾が楽で足つきの抜群にいいスパスポが私のリターンバイクとなった。
古いほうの所有バイクが、前傾度や特性の上でどのくらいアグレッシブだったのかはあんまり覚えてないけど(というか、20代の頃の感触と50代になった今の感触では比較できないじゃないか)、現職スパスポが激マイルドだとしたら、アグスタがややマイルド、残りはハードモード、というところだろうか。
それでも、スパスポくらいのマイルドSSも含めて、セパハンバイクが手元になきゃ寂しいって人はたくさんいることだろう。
私はあのセパハン独特の、ほうきに乗って空を飛んでるような感覚が好きだ。乗り物に乗って身を任せているというよりも、スキーの板を履いているような、バイクが自分の身体の一部になったみたいな感触。それに比べるとクルーザーなんかは空飛ぶ絨毯に座ってるみたいな感じ(もちろん、それはそれでまたよい)。
だから歳を取ってだんだんきつい前傾が耐えられなくなってきても、反射神経が追いつかなくなってきても、まったり景色を楽しみながらトコトコ走るほうが楽しくなってきても、それでも1台はセパハンのスポーツバイクをいつも手元に置いて置きたいんですよ。
そんなことないですか?
私は現在バイク3台体制でやってるんだけど、他のバイク(ドゥカティ・スクランブラーとトライアンフ・スピードマスター)に比べて、スパスポの出撃頻度は明らかに少ない。
ほかの2台が「行ってみたいところがある」「走ってみたい道がある」というような動機で出動するのに対して、スパスポだけは「バイクとひとつになりたい」みたいな、バイクそのもののが目的化したような選び方になる。
だからこいつには荷物を乗せることもないし、走る道もだいたいいつも同じ。1日に乗る時間もずっと短い。
別に走り屋やってるわけじゃないですよ。全身フルつなぎの元ひざすり峠小僧のおじさんたちみたいなアタオカなことはしません。でもまあ、私なりに全身の身体感覚を研ぎ澄ましてタイヤのグリップと対話しながらスポーツライディングをするわけです。そしてその行為そのものが目的なわけです。セパハンバイクに乗るのって、やっぱりすごくスキーに似てる。
そして、我がスパスポは前傾が楽だから首を無理にそらしたり上目遣いをしなくてもいいし、足付きも私はかかとがちょっと浮くくらいだから神経使わないですむ。比較的たまにしか乗らないバイクだけど、それだけで持っておく価値あるよなあ。
とそんなふうに思ってたのは、つい先週までのこと。
2ヶ月ちょっとぶりにスパスポを引っ張り出して箱根を走ってみて、思ったんですよ。
このパワーと重さはもう私には要らないかもなって。
スパスポはSS的な顔とツアラー的な顔が高度に両立していてどっちにも使えるんだけど、複数台持ち(特にドゥカの複数台持ち)するなら、大型ツアラー要素のほうはもう要らないんじゃない?って。
そして何より、たとえ本格SSじゃないマイルドSSだとしても、もうこんな大型バイクのパワー(109ps/210kg)要らないし、使いこなせないし、ワインディングで使うべきでもない気がする。世間の目と警察の目を割としっかり気にする私としては、傍若無人な大型SS的カットビ世界観はもはや公道で楽しめる気がしない。
そもそもこのテスタストレッタ・エンジンの上3分の1の回転域なんて使ったこともないよ。
そんなんだったら、少ないパワーの小排気量エンジンを上まで使い切りたい。カタログスペックなんてどうでもいい。軽い車体を操って、バイクにどんな力を加えるとどんな挙動になるのかという運動力学の基礎をあらためて知りたい。そう思っちゃったんですよ。(そう思っちゃったのは、こないだたまたま現行型マツダ・ロードスターに試乗したせいもあるかもしれない。あれもまた、「足るを知る」を体現したような車だ。)
そうすると、スパスポにはもはや大型ツアラー要素しか残らないんです。昔のドゥカにも通じるドコドコした味わいは捨てがたいけどね。
そしてツアラーとしては他のバイクのほうが優秀なのですよ。というか、スパスポをツアラーとして使うのはなんか本来のキャラとは違う気がして、個人的にはしっくりこない。こいつはやっぱり、年齢や体格的にフルSSがキツい人がそれでもSS的スポーツライディングを楽しめるように歩み寄ってくれたスポーツバイクなんだ。
はい。そんなわけで、125ccクラスのセパハン・スポーツバイク(つまり、スズキのアレとヤマハのアレ)を検討しはじめてます。
ポジションは今までよりきっときつくなる。でも、近所のワインディングを1周するための専用マシーンとして、今までよりずっと低い速度領域でも思い切り楽しめるんじゃないかな、という期待をしています。
「125ccなんて遅くてつまらんよ、900ccからダウンサイジングするならせいぜい600ccくらいにしとけば?」なんて、生粋の公道レーサー(笑)たちはアドバイスしてきます。でもそうじゃないんだよ(ていうか一体どんなスピード感覚してるんだか)。小さい軽い遅いは、ぼくらの手の届かない世界に行ってしまった乗り物(4輪も2輪も)と生身の人間との一体感を、もう一度取り戻してくれるんだよ、きっと。
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欲しがり | 日記
Posted at
2025/06/03 19:37:47