
一般的に製造業のマーケティング論では、作り手が作りたいものを作る「プロダクト・アウト」ではダメで、市場調査をして消費者が欲しがっているものを探り出して作る「マーケット・イン」のほうが正しいとされています。
ところがこと自動車に関しては、市場に媚びること無く作り手の情熱だけを原動力に生み出されたプロダクト・アウトな車こそが時代を超えて評価されたりします。
4Cもそんな車のひとつで、アルファロメオの設計者やデザイナーたちが「俺たちの考えるいちばん魅力的なスポーツカーとは何か」を赤ワイン片手にさんざん語り合った末に生まれたような熱量を感じます。
この車に、「想定される使用場面」なんてものはありません。峠に行って、サーキットに行って、オーナーズミーティングに行って、ガレージで眺める。それ以外の用途はありません。
そういった意味で、これは定義どおりのスーパーカーです。
あるいは、この車を所有することは旧車を持つのにも似ています。ほぼ現代の車なのに立ち位置的にはネオ・ヒストリックカー。
だけど残念ながら、旧車のようにメカいじりを楽しめるわけでもないし、ただゆっくり走っているときの心地よさを追求した味付けでもない(スーパーカーとしての非日常感と注目される満足は味わえると思いますが)。
楽しめる速度領域やシチュエーションの狭さは現代の多くのスポーツカーが陥っている罠です。運動性能を楽しめる速度域が高すぎかつ狭すぎて、危険だし社会的にも許されなくなっている。かといってサーキットだけで遊ぶなら本物のレーシングカーのほうが楽しい。
そうやって突き詰めて考えていくと、いわゆる「公道を走るレーシングカー」や「スパルタン」と形容される車って、もはや居場所がなくなってるんですよね。
スポーツカーに公道で乗るなら、もっと移動そのものを楽しめる心地よさがあったほうがいい。そう思って手放しちゃいました。