2021年07月18日
どうしてこんなに焦がれるのか。
青春の甘酸っぱい恋が唐突に終わり、胸につかえていたからか。
名前も顔も変わって現れた彼女に、同情したからか。
献身的に支えてくれたことで、絆されたのか。
きっと、どれも正しい。
けれど、それだけじゃない。
理屈じゃない、本能が楽を求めている。
きっと、手を重ねたあの瞬間から――。
シーツを握る楽の手に、自分の手を重ねた。
彼女の手は、あの頃も今も俺の手にすっぽりと包まれてしまう。
初めて彼女の手に触れた時も、今も、気持ちは変わらない。
この手を離したくない。
楽がシーツを離し、俺の手を握った。
指と指が交差する。
彼女が首を傾け、握った俺の手の甲に口づけた。
その横顔が、なんだか今にも消えてしまいそうなほど儚くて、俺は彼女を強く抱き締めた。
「愛してる」
先端を蜜口に当てると、彼女の蜜でぬるりと滑った。
挿れると見せて、わざとそらす。
ぷっくりと赤く熟んだ膨らみに擦りつけながら、両胸の形が変わるほど指を沈ませた。
「あんっ」
甘ったるい声が弾み、楽が恥ずかしそうに唇を結ぶ。
この数日、こうして毎晩身体を繋げているが、彼女は相変わらず恥ずかしそうで、声を我慢する。
結果的には我慢しきれずに喘ぎ悶えるのだが。
そんな楽だから、めちゃくちゃに蕩けさせて、乱れさせて、求めさせたい。
ストーカー染みた真似をしてしまうほど俺を想ってくれているのだとわかっているのに、いつも欲しがるのは俺ばかりな気がする。
萌花のように跨ってくるのも興醒めだが。
いや、楽になら、跨られたい。
数回、膨らみに猛りを押し当て、俺は上体を起こした。楽の腕を掴んで抱き起す。
「悠久?」
「挿れて、楽」
「え?」
「自分で挿れてごらん」
俺は正座をして、彼女を跨らせた。楽は膝で立ち、俺を見下ろす。
戸惑いながらも、嫌だとか無理だとかは言わない。
もちろん、楽が本当に嫌がるのなら、させるつもりはなかった。が、どうやら経験がないから戸惑っているだけのよう。
「ゆっくりでいいから」
彼女の瞳を見つめて言った。
楽は、おずおずと俺の肩に腕を回す。
それから、腰を揺らして、俺の先端を蜜口に当てがった。
「痛く……ない?」
「痛くない」
失敗だった。
ゆっくりと俺の反応を見ながら飲み込まれるのを、じっと耐えているのは想像以上にもどかしい。
一気に奥まで貫きたい。
が、せっかく楽が頑張ってくれている。
俺は吐息を震わせた。
気が緩むと、腰を振ってしまいそうだ。
「ん……っ」
楽が喉を鳴らし、目を細めた。首を傾げ、悩まし気に腰をくねらす。
「楽、気持ちいい?」
息を吐きながら俺を見る。
「う……ん」
小さく頷く楽の、その恥じらう表情が堪らなく官能的で、俺は彼女の腰を抱き寄せた。
目の前に迫る両丘に顔を埋めた。
至福の時だ。「まだ、挿入るの?」
「もうちょっと。痛い?」
楽が首を振る。
「気持ち、いい……っ」
背を弓なりに逸らせると、ツンと尖った果実が目の前に現れた。思わず口に含む。
「あんっ!」
耳元で喘がれ、我慢なんて言葉はどこぞに吹っ飛んだ。
俺は腰を突き出し、最奥まで一気にねじ込んだ。
「ひゃ……あ――!」
温かくて柔らかで滑らかい。
俺は尻の下で足を立てると、腰を彼女に打ちつけた。
赤い果実に吸い付きながら、何度も、何度も。
いつもより深く、繋がる。
楽の嬌声が「もっと」とねだるようで、腰が加速する。
「はる……かぁ……」
楽が宙に伸ばした手に自分の手を重ねた。指と指を絡め、シーツに着地させる。
「らくっ!」
きっと、どこかのネジが飛んでる。
壊れたおもちゃみたいに、狂ったように腰を振る自分は、発情期の獣さながら。
いつか、満足する時がくるのだろうか。
こんなもんだろ、と慣れる時が。
今の俺は楽に溺れきっていて、想像できない。
けれど、そんな日がくればいいと思う気持ちもある。
一緒にいることが当たり前に思える日。
二人で目覚める朝が当たり前に訪れる日。
それでもきっと、満足なんて出来ないだろうけど。
ただ、何の不安もなく一緒にいられる日が欲しい。
誰にも咎められることなく、一緒にいられる日々が。
「悠久!」
悲鳴にも似た楽の声にハッとした瞬間、訪れる絶頂の波に抗うことが出来ず、俺は一ミリにも満たない薄い膜越しに精を吐き出した。
Posted at 2021/07/18 19:54:42 | |
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