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2023年02月13日

C6 Z06の空力、標準車からの進化

C6 Z06の空力、標準車からの進化 まだBoss302についても書ききってないというのに、次に行っちゃうのもどうかとは思うんだけど、こっちにしても書かないと忘れちゃいそうで…

ということで去年の夏ごろに調べながらつぶやいてたC6Zの空力について、さらっと纏めてみるの。




―――

そもそもZ06に入る以前に、コルベットチームはC6標準車でもかなり大幅な空力対策をやってる。これは主査のデイブ・ヒルたっての思い。

彼はC5でトランクアクスル化を含めた大幅なシャーシー性能改善を行ったにも関わらず、相変わらず北米以外の市場では
 --- コルベットは見掛け倒しで、20年近く時代遅れのクルマ ---
と思われていることを認識していて、C6ではそれを打開しないといけない、と本気で考えてたと残してる。そのためにはただ見た目が良いだけではなく、本物の空力を纏ったカタチに意味のあるスタイリングでなければいけない、と。

さらにスポーツイメージを求めて参戦したルマンシリーズで、コルベットレーシングが駆るC5Rは順調な成績を収めてはいたものの、現場からは流麗なスタイルがゆえの巨大な前後オーバーハング、冷却開口の少なさがゆえ、あちらこちらにベントを開けないと冷却できないエンジンルームなど、さまざまな課題も打ちあがってきた。


だからこそコルベットチームは社外レース活動の経験が豊富なカーク・ベニオンをエクステリアスタイリストに据え、C6ではプロポーションからの改善を狙った。
センターにまとまったラジエーター開口と固定ヘッドライト。これらは1962年以降コルベットには無かったもの。この伝統から脱却を図ったスタイリングも、全ては形状からスポーツカーであることを追求するために必要だった、と。

でもこの短いオーバーハングと大きな冷却開口は、それ単体では空力に対して不利に働く。
というのもC6は動力性能目標として、最高速度を186mph (300km/h) と定め、400馬力でそれを達成するのに必要なCd値を0.28と定めていたから。
この0.28は数字だけ見ると大したことが無いように見えるけれど、C6は大きな冷却開口を要求し、タイヤも太いスポーツカー。根幹のトコロで一般的なセダンより圧倒的に不利な条件。

これを覆すためには、C5のような流麗な面だけで構成するのは難しく、どうしてもシャープな角と面構成の組み合わせになる。それが最終的に500時間に及ぶ空力試験で磨き上げられたC6のスタイリング。
チーフデザイナーのトム・ピータースが「カール・ルイスのような一切贅肉のない形状」と表現したカタチ。

―――

そんな標準車から派生するのがZ06。
標準車がCdの削減に重点を置いていたから、Z06での開発の焦点は「(Cdの悪化を最小限に抑えつつ)そこからリフトをどれだけ切り詰められるか」だったと空力チーフエンジニアのトム・フローリングは残してる。 馬力が上がり・ワイドタイヤで進化した運動性能に対して、高速域でのスタビリティの確保が必須だったんだろうね。

標準車が500時間に及ぶ風洞試験の元に生まれたのに対して、Z06に掛けられた時間は240時間。
最終的なCd値はC6標準車の0.28に対して、C6 Z06は0.342。これは先代C5 Z06と全く同じ値。100馬力上がった馬力と、さらにワイドなタイヤを履かせたにも関わらず、同じ数字を保ったところがコルベットチームの意地。



Cdの悪化は不回避として、むろんダウンフォースの増加 (リフトの削減) は必須なのだけれど、その中でまずコルベットチームが一番重点を置いたのが、前後ダウンフォースのバランス。

高速走行の時に、前輪だけリフトを切り詰める (ダウンフォースを高める) と、車はオーバーステア傾向になりかねない。 なので静的な前後軸重からリフトを引いた値が全速度域で50:50~48:52(リア勝ち) になるように空力パーツを設計したのだ。

ただし興味深いのが、その結果として各部に取り付けられた空力デバイスをまとめていくと、比較的フロント側に偏ったリフト削減量になることなのね。逆に言えば標準車は安定性を取って、かなりリア勝ちなダウンフォースバランスだったということ。
スポーツグレードとしてニュートラルに近づける改善をした結果、フロント側のリフト削減量が増えた、というバランス。

―――

フロント側では、まず目立つのが大きくなったスプリッター。
この部分だけで、全体量の67%に及ぶ92kgのダウンフォースを300km/hで発生させる。
もちろんスプリッターはリフト削減だけでなく、分流点を前に出すことで冷却開口に向かう流れが増えるので、冷却性能改善にも寄与してる。そんなグリル自体もエンジン放熱量の増加に合わせて開口高さが25mm増し。



興味深いのが、そんなバンパー形状による冷却性能向上代は、80km/hで1m^3/minとなってる。
比較対象になるのが、バンパー下に取り付けられたエアダムの効果なんだけど、最低地上高に関係なくアチラコチラで擦るこのエアダム、単体での冷却性能改善代が3.0m3/min @ 80km/h。つまりスプリッター+バンパーの効果より3倍高いのだ。
これは冷却系を入口から出口まできちんとダクトで流し、床下に抜く設計ができているからこその効果だね。

ついでに言うとZ06の特徴になる、バンパーのNACAダクト。これについてはコルベットチームは目的も効果についても、どこにも残していない。まぁあれ吸気開口に見せかけて、実は吸気系に繋がってないからだろうね。

その他の追加デバイスでは、フロントホイールハウスエクステンションが10kg (7%)、リアスポが36kg (26%)のリフト削減。フロントがトータルで102kgに対して、リアは36kgという点からも、標準車がかなりリア勝ちのリフトバランスだったことが改めて解るの。


空力面では、他にフロントとリアのブレーキダクトを標準車から拡大してる。
これについては標準車がさんざニュル詣をしていた関係から、既にパッド温度に対する風量の目標値が定まっていて、風洞でチューニングされた値は最終的にC5 Z06比フロントで400%増し、リアは200%増しで設定。

サイドミラーは、標準車の形状が風切り音とダウンフォースのバランスが良かったので、そのまま流用。これについてはあまりに出来が良すぎてC6Rでもそのまま使ってたりする。


―――

と、ここまで全体を数字を中心に束ねてきたけど、ここまできて一つ気づくことがあるの。
それが空力開発に、実走に関連する話があまり出てこないところ。

実際に色々な文献を当たっていても、C6の開発時におけるニュル詣の話は出てきても、C6Zの開発におけるニュルの話はあまり出てこない。 更に言えばC6Zの空力開発においても、数字はあくまでも「リフト削減量」で表されていて、「ダウンフォース量」という表現をしていないこと。

だからこそ思うのね。
コルベットチームはZ06について、スポーツ走行という用途はしっかり見据えていても、トラックスペシャルであることは追及していない。 彼らにとって、Zはあくまでもスポーツカーであって、トラックカーではないのでは?って。



その印象は自分で乗っていても感じるの。
この車はFK/FLタイプRやR35 GT-Rのような、トラックスペシャル特有の色々と切り詰めた「遊びのなさ」がない。

LS7はボアスト100mm超えを7000rpmまで回すって数字に目が行きがちだけど、本当に凄いのは演出が全くないこと。
排気量こそあるけれど、可変バルタイがない上に強烈なバルタイだから低回転域はそれなり。
でもそれをまったく隠してない。DBWにもかかわらず、どの領域でもスロットルは常にリニア。
それでいてバルタイが揃う中回転から一気に吹けて、7000rpmまできっちり回る。
そんなどこまでも真っ直ぐに丁寧なキャリブ、その有り様が逆にキャラクターになってる。

シャーシーも、ノーズの強烈な入りとロールの圧倒的な少なさには感動するけれど、これはあくまでも軽い車重・低い重心という車の素性の良さに起因するもの。
丁寧にキャリブはしてあるけれど、要素を削いで研ぎ詰めていったようなキャラクターではない。

何処からでも自在に吹けて、演出が一切ないエンジンと、軽い車重に合わせたガチガチじゃないシャーシーが相まって、コントロール性がえらく良い。
冗談じゃなく、S2000を通り越してロードスターに近いぐらいの素直な扱いやすさがある。

車重が軽いからこそ、ダンパーのこの手のクルマとしては絞まってないし、120m/h 6速で1600rpmなんてギアレシオができるから、結果としてクルーザー適正まで生まれちゃってる。
それに気づくと、サポートが少なくてふっくらしたシートも、そこら辺を踏まえた意図的なものなんじゃ、と思うくらい。



それを踏まえて、改めて車の開発記録を拾っていくと、彼らが思い描いていたC6Zの姿って、ニュルをアンジュレーションを飛び越えて疾走する姿ではなく、週末に北米のワインディングを駆け抜ける姿だったんじゃ、って思うのだ。

だからこそ、そんなZを本気のニュルアタック仕様に仕立て直した時には
ZR1でギア比すら変え、Z07パッケージとして空力も全面的にダウンフォース特化にやり直し、流体磁性ダンパーで足回りを締め上げる必要があった。そういうことなのかな、って。


でもだからこそ、自分はこの車が好きなんだよね。
自分が探してたのはトラックスペシャルじゃなくて、スポーツカーだったから、さ。
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Posted at 2023/02/13 08:34:09

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