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2024年01月04日 イイね!

C6 Z06 アルミフレームの困惑 (1/n)

C6 Z06 アルミフレームの困惑 (1/n)うちはC6Zが来てからずっと2台体制を続けてるから、Zに乗ったあとにもう1台に乗り換える機会が結構ある。そんな中でずーっと感じてたのがZのボディ剛性の独特な雰囲気。端的に言ってしまえば 「明らかに弱いのに、なんか嫌じゃない」

そもそもC6 Z06といえば専用のアルミスペースフレームが華なのに、なんでこんな感覚を覚えるのかがずーっと気にはなっていて、色々と文献を漁ってたんだケド、知れば知るほど、どうもここだけに注目するのはちょっと違う気がしてきた。
じゃあどこまで下るのかといえば、C6標準車を通り越してC5まで。そしてその位置づけを俯瞰して眺めようと思ったら、C7についてもどうしても触れたくなる。足掛け20年以上のフレームの進化の歴史、それがC6 Z06を理解する上でのポイントになるんじゃないか、って。

なので整理し始めたらもう止まらない。結果的に超長文になったので複数回にまとめて書いてみようと思うの。

―――

で、なぜ冒頭がC6ZどころかC6でもなく、C5からなのか…になるんだケド
これはC5のコンセプトに起因するところが大きいと思うの。

よくモダン・コルベットの歴史を外から語る時に「コルベットがワールドクラスのパフォーマンスを手に入れたのはC6から」みたいな言説を見かけることが多いけれど、個人的にはそれは若干近視眼的だと思ってるのね。
というのもクルマの基本的なエンジニアリングにおいて、C6はC5の踏襲でしかないから

もともとコルベットはGMの技術的なスピアヘッド・テストベッドなので、C1から最新技術の取り込みには積極的。
しかもそこにFather of the Corvetteであるゾーラ・アーカス・ダントフの意向も入り、ボディ・シャーシの構成っていうのは世間で言われているほど古臭いものでは無かったりする。

ボディオンフレームとはいえ、C2の時点でエンジン搭載位置は完全なるフロントミッドだし

C3の時点で大勢のアメリカ車を差し置いて足回りはしっかりと4輪独立懸架

確かに10年以上のMalaise eraを乗り越えて、パワートレインこそ情けないことにはなっていたけれど、それも根強い需要を抱えて生き残ったコルベットをC4として進化させた際に、King of the hill CorvetteとしてZR-1を復活させたことで払拭

C4 ZR1の5.7L DOHC 48V V8は、確かにロータスとマーキュリー・マリーンの手を借りてはいたものの、それを乗せたC4 ZR-1が、Car and Driverのテストで当時の964ターボより
 ・5-60mphで0.4秒速く
 ・70mphから12ft短く止まり
 ・スラロームコースで2mph速く
 ・サーキットで2.5秒速い
という記録を残しているのは、単に「真っすぐだけが速いアメ車」では到底無理な結果だと思うのだ。

#なお、ここあたりはHagertyのRevelationsが詳しく触れてる


―――

だからこそ、そんなコルベットをC5に進化させる上でカギになったのが
どうやってそのランニングシャーシーを次世代に進化させるか?

ここでもカギになったのはロータスだったと、C4の主査であるデイブ・マクレランは残してる。
C5のコンセプトメイキングは、C4 ZR-1の開発と並行して1889年から始まるんだけど、そのタイミングで彼は当時GM傘下だったロータスにも助言を求めてるのね。そんなロータスの回答は
「(コルベットには)Torsionally-stiff backboneが必要だと思う」


元々C4はボディ・オン・フレームでこそ無くなっていたけれど
コンバーチブルが必須なわりに、ゼロからアーキを起こす台数でもない、という微妙な台数もあり、モノコックよりはペリメーターフレームに近い構造になってる。
この構造だと曲げにはそこそこ強くても、ねじり方向には部材が足りない。これが高出力だけど超重量級のLT5+315mmのリアタイヤのトラクションを与えたときに懸案になってるとロータスは指摘したのだ。

もちろん彼らの頭の中には初代エランのようなバックボーンフレームのイメージがあったんだろうけど、これは簡単な話ではなく、これを実現するには高いセンタートンネルとそこに繋がる骨格が必要
しかもコルベットは大排気量V8に耐える大容量MT/ATの搭載が必要なわけで。そんなミッションがセンタートンネルに収まるわけもなく、当然トランスアクスルが前提となる。

両方ともに運動性能という意味ではぜひともやりたい項目であり、C5の最初期からのパッケージ要件でもあったとデイブ・マクレラン、そして彼から主査を引き継いだデイビッド・ヒル両名ともに残しているんだけど、最大の問題はこのタイミング。

これらC5の基礎要件が固まりだしたのは1988年。
この時C5は1993年のコルベット生誕40周年記念を祝う車になるはずだった。
だけどGMはこのタイミングで強烈な業績悪化の真っ最中。開発予算はどんどん削られ、量産時期は1994年、1995年、1996年と延々と遅れる。 そして主査がデイビッド・ヒルに変わる1992年の10月には、量産時期は未定になるぐらいの厳しい状況に。
そんな中で完全新規のプラットフォームを実現するには、あらゆる絡め手と徹底的なコストダウンが必要だったのだ。

―――

技術開発であれば絡め手が使える。それについては百戦錬磨のコルベットチーム。
トランスアクスルATの開発予算については、デイブ・マクレランがGM Powertrainのジム・ミネカーと結託し、ピックアップトラック用4WDミッションの開発予算に潜りこませた。
トランスアクスル試作車は、伝統のコンセプトカーであるCERVシリーズの名目でC4の量産予算をくすね、簡単にバレないようエンジニアリング会社に外託してまで製作。

でも量産に向けたコストダウンについては根本的なエンジニアリングが必要。
C5のフレームの場合は、ハイドロフォームの実用化がこれを担うことになった。

元々エランのようなバックボーンだけのフレームでは、90年代の量産車としては成立しない。側面衝突された場合に、乗員がクランプルゾーンになっちゃうからね。なのでペリメーターフレームに当たる環状骨格はまだまだ必要になる。
それそのものはボディ・オン・フレームのフレーム部分みたいなモノだから、作るだけなら難しくはないけれど、当然乗降性を考えるとこのフレームは薄く・軽く作りたいし、ボディ剛性の連続性を考えると、なるべく断面変化はスムーズにしたい。

結果として、C4のサイドペリメーターフレームは28点の板金部品を溶接して制作した複雑な部品になっており、C5はこれをひとつながりのパイプをハイドロフォームで成形することで簡略化を狙ったのだ。
一体成型できるということは、溶接しろも削減でき軽く・安くできることにも繋がるわけで。

―――

こうして数多くの課題を乗り越えて生まれたC5のシャシーは、C4から10年以上の技術進化を織り込み、更にスポーツカーとしても大幅に進化したものになった。

高剛性のバックボーンを追加し、更に大型鋳造のアルミクロスメンバーを追加した新フレームは、ルーフを外した状態でも曲げで 7660kN/mm (C4比 1.9倍)、ねじりで720 kNm/rad (C4比3.4倍)の改善を達成
これは当時のオープントップの車両と比較してもかなり良好な値となる。

その上で、断面形状の最適化によりサイドシル高さは3.7インチ下げて乗降性を改善。
トランスアクスルに軽量な新型V8 (LS1) を組み合わせることで、重量配分も52:48だったC4 ZR-1に対して51.4:48.6と改善。センタートンネルからミッションが無くなったことで助手席のレッグスペースも拡大と、当初狙い通りの全方位進化を達成したのだ。

もちろん、この進化したフレームをベースにしたC5はC4に対してハンドリングでも大幅な進歩を遂げていて、モデル中期に追加されたZ06は 360モデナや996ターボに対しても

・1/4mile 12.7sec/113mph で並び (360モデナ : 13.1sec/110mph, 996ターボ : 12.3mph/116mph)
・70mphブレーキング 152ft でトップ (360モデナ : 165ft, 996ターボ : 163ft)
・スキッドパッド G 0.98g でトップ (360モデナ : 0.92g, 996ターボ : 0.93g)

と完全に並ぶ性能を達成しているのね。ワールドクラスのパフォーマンスというのであれば、コルベットはC5の時点ですでに世界に肩を並べていたのだ。

(つづく。いつになるかは知らない)
Posted at 2025/01/05 01:38:22 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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