
ある日のこと。私は友達と3カップルでドライブに出かけました。私は当時中古のカローラⅡという車に乗っていました。車のことがよくわからなかったため、やすくて程度がよいと言うことだけで買った車でした。
福岡にすんでいた私たちのとっておきのドライブコースは福岡から呼子までのシーサイドロード。3台のなかに1台だけブルーのオープンカーがありました。これがロードスターとの出会いでした。
その日はよく晴れ、風も適度に冷たく、キンモクセイの香りがする初秋でした。その中を私たちは気持ちよく走っていたのですが、信号待ちの間にロードスターの彼がおもむろに幌をおろしたのです。
それを見た瞬間に、彼が感じるであろう感覚が私の中に飛び込んできました。そこには私の知らない車の楽しみ方がありました。それ以後、私はいつもロードスターで走ったときの感覚をあれこれと想像していました。
まもなく私はレンタカーでロードスターを借りることにしました。当時は学生だったのでお金もなく、それなのに車を持っているにもかかわらずレンタカーを借りることはとても無駄に思えることでした。しかし、そうまでしてあの感覚を実際に体感してみたかったのです。
走り出したのは夜。気がつけば見下ろせば夜景、見上げれば星空が見える高速道路の上でした。周りを走る車の音がすごかったのですが、想像以上の快感に、オーディオの音量をおもいっきり上げ、そして思いっきり空に向かって「わー!すげー!」と叫んだほどでした。それ以後私はロードスターの虜になり、数年後マイカーにすることができました。
私は教員、そして会社員になって結婚するまでの間ロードスターとつきあってきました。たぶん私の人生の中でもっとも変化に富んだ時期を共に過ごしたことになります。
ロードスターは平凡な生活に非日常をプレゼントしてくれます。これがこれまでの私を支えてくれました。私が生きていくうえで一番重要なのは「自由」ですが、ロードスターが生み出す非日常へのトリップが、私に自由を与えてくれたのです。
ロードスターはゴーカートで外を走りたいという子供の頃の夢を叶えてくれました。そして大人になった私の心の支えになってくれました。また出会えることを楽しみに、初めて出会ったときのような心地よい秋に一旦お別れします。
ありがとね、ロードスター。