
「電気自動車(EV)って排気ガスが出ないから、ガソリン車より100%クリーンでしょ?」
そう思っている方は多いのではないでしょうか。
実はこれ、半分正解で、半分は間違いなんです。
自動車メーカーのカタログをじっくり見ていると、面白いデータに気づきます。そこには、排気ガスの出ないEVのはずなのに
「1km走行あたりのCO2排出量比較」という項目が書かれているのです。
「電気しか使わないのに、なぜCO2が出るの?」
その答えは、
「充電する電気を、発電所がどうやって作っているか」にあります。
今回は、知られざる「EVのエコ度と電気の裏話」を、日本国内から世界の大逆転劇まで、わかりやすく解き明かします!
国内のEVたちを「ガソリン軽自動車」とガチ比較してみた
国(環境省・経済産業省)が法律に基づいて算出した、日本全体の公式な電気の基準値(代替値:1kWhあたり422gのCO2排出) を使って、人気車種の「1km走るごとのCO2排出量」を計算してみましょう。
対戦相手は、燃費25km/Lの優秀なガソリン軽自動車
(1kmあたり92.8g-CO2)です。

※電費データを基に算出。
あれ……?「EVならCO2は完全にゼロ!」と思いきや、日本の平均的な電気で充電して走ると、
ガソリン軽自動車の半分くらい(約44%〜59%削減)に留まるんです。
これだけでも十分にエコですが、「思ったより大したことないな?」と感じた方もいるかもしれません。
実は、EVの本当のポテンシャルは
「どこで充電するか」で大激変します。
関西 vs 東京:同じ車でも「充電する場所」でエコ度が変わる?
なんと、日本国内でも「どこで充電するか」によってCO2の排出量が変わります。
最新のデータ(2024年度実績ベース)で、東京電力と関西電力を比べてみましょう。
• 関西電力:396g-CO2/kWh
• 東京電力EP:421g-CO2/kWh
関西電力の電気は、東京電力に比べて
CO2の排出量が約25%〜30%も低いんです。
もし、トヨタのbZ4Xをこの2つの地域で充電して走らせたら……
• 関西電力の電気で走る 43.9 g-CO2/km(全国平均より約6%クリーン!)
• 東京電力の電気で走る 46.7 g-CO2/km(ほぼ全国平均並み)
なぜ東西でこんなに差が出るの?
理由は、各電力会社の
「電気の作り方の割合(電源構成)」にあります。
1. 原子力の再稼働状況:関西電力は福井県の原発(大飯・高浜・美浜)の再稼働が進んでおり、電気の約3〜4割を原子力でまかなっています。一方、東京電力は柏崎刈羽原発などの再稼働が遅れており、現在はほぼゼロです。
2. 火力発電への依存度:東京電力は原発が動かない分、電気の半分以上をLNG(天然ガス)や石炭などの火力発電に頼らざるを得ません。
3. 豊かな水力:関西電力は歴史的にも「黒部ダム」に代表される豊かな水力発電ベースを持っています。
原子力や水力は、発電時にCO2を一切出しません。だからこそ、関西の電気はクリーンなのです。
世界に目を向けるとさらに過激!「EV天国」と「EVジレンマ」
世界に目を向けると、この「電気のクリーン度格差」はさらに狂ったレベル(二極化)になります。
世界トップクラスの「超クリーンな電気の国」
• フランス(約30〜50g-CO2/kWh):電力の約7割が原子力、約2割が再エネという圧倒的な原子力大国。
• スイス(約8〜30g-CO2/kWh):国内発電の約60%が豊かな水力、約30%が原子力という最強のハイブリッド。
もしスイスの電気で「bZ4X」を充電して走らせたら、1kmあたりのCO2排出量は
わずか1g〜3g台。ガソリン軽自動車(92.8g)がひれ伏すレベルの、圧倒的な「真のエコカー」に変貌します!
⚠ EVを走らせると逆効果!?な国々
• 中国 (約530〜550g):太陽光の導入量も世界一ですが、急激な需要を満たすため石炭もガンガン燃やしています。
• インド (約700g前後) / 南アフリカ (約700〜800g):安価で豊富な「石炭火力」に強く依存しています。
仮に同じトヨタのbZ4Xを走らせた場合、フランスなら「1kmあたり約5g」しか出さないのに、インドや南アフリカで走れば
「1kmあたり約80g」のCO2を出すことになり、エコカーとしての意味合いがまったく異なってきます。
まさに
「自国の自然環境ガチャ」によってEVのエコ度が100%決まってしまうのが、世界の厳しい現実です。
日本が誇る「世界3位の眠れる巨神」地熱発電の大逆転劇
他国と電線が繋がっていない島国・日本は、ヨーロッパのように「隣国からクリーンな電気をサッと分けてもらう」というワザが使えません。自力で電気を綺麗にする必要があります。
そこで今、大注目されているのが
「地熱発電」です。
実は日本、アメリカ、インドネシアに次ぐ
「世界第3位」の地熱資源を持つ世界有数の地熱大国なんです!しかも、地熱発電に使う巨大タービンの世界シェアの約7割は、日本のメーカー(三菱重工、富士電機、東芝)が握っています。
それなのに、なぜ現在は日本の電気の「わずか0.3%程度」しかまかなえていないのでしょうか?
そこには
「3つの高い壁」がありました。
1. 自然保護の壁:地熱が取れる火山地帯のほとんどが、法律で守られた「国立公園」の中にある。
2. 地域共生の壁:全国2万件以上の「温泉街」から、「温泉が枯れるのでは?」という懸念や反対が起こりやすい。
3. ビジネスの壁:井戸を1本掘るのに3億〜5億円かかり、ハズレるリスクもある上に、運転開始まで10〜15年という長い歳月がかかる。
2026年、国主導で大逆転へ!
太陽光や風力は天気に左右されますが、地熱は「24時間365日、いつでも100%安定して発電できる」という日本にとって夢のような強みがあります。
そこで国も本気で動き出しました!
温泉水をそのまま利用して温泉街と共生できる小型の「バイナリー発電」の規制緩和や、地下の熱水そのものを掘り出すのではなく、地下の熱い岩盤に地上から水を流し込んで人工的にクリーンな蒸気を作る
「クローズドループ」という次世代技術の開発が進んでいます。これなら温泉を枯らす心配もありません。
政府は
2050年までに国内118カ所で地熱開発を進める計画を発表しています。
まとめ:私たちの未来のドライブはどうなる?
EVが本当にクリーンな乗り物になるかどうかは、車自体の性能だけでなく、
「私たちが暮らす国や地域のエネルギー政策」と完全にセットで進んでいます。
日本でも地熱発電のイノベーションや洋上風力の拡大が進めば、私たちが普段何気なく充電しているEVのCO2排出量は、これからもっともっとゼロに近づいていくはずです。
ちなみに、「そんな未来まで待てない!」という方は、東京電力などのエリアであっても、新電力が提供している「再エネ100%プラン」や「CO2フリープラン」に切り替えるだけで、
個人の充電によるCO2排出係数を実質ゼロ(0.000)にすることも可能ですよ!
次に車を選ぶときは、ぜひ「電気の生まれ故郷」にも思いを馳せてみてくださいね。