文字だけですので興味のない人はスルーで。
ロングストロークのエンジンはトルクが強いと言われている。
そして何故そうなのかの解説に「テコの原理」を使う方が多くいる。
クルマモノ知り系YOUTUBERにもこの解説を得意げにする人が多い。
そして誰かさんが嫌いなおべんちゃら賛同コメントも多し。
しかし私はコレはウソだと思う。
ウソと言ってはいけないな、間違っていると思う。
この件について、以前garage Kさんが書いている。
ロングストロークはトルク型!?
今回の私のブログは面倒なので図解は一切なし。
図解はgarage Kさんのブログを良く見てきて欲しい。
で、私も以前これを目にした時は”その通り!!”と思ったし今もそう思っているのだが、今一歩自分の理解が薄い感じがしていた。
結論としてロングストロークがトルクフルな理由はテコの原理では無い点や、冷却損失がその差の理由である点に異論は無いのだが。
と言う事で自分なりにもうちょっと具体的に考えてみよう。
まずそもそも燃料と酸素量と圧縮比が同じであれば燃焼室の形状は関係なしに仕事量は一緒だろう。50㏄→500㏄に爆発するエネルギーに違いはないはずだ。
(ここでは一時、冷却損失や燃焼速度、火炎の伝播、摩擦抵抗などは無視する)
だからストロークの長さ自体はトルクに影響しないはずだ。
伝わり方でエネルギーが変わってしまうならエネルギー保存の法則を超越した画期的な発明じゃないか?
シンプルに言うとこういう事だと思うのだが、もうちょっと具体的にしてみよう。
まずうちのゴルフのエンジンはボア82.5Xストローク92.8の1983.286㏄でちょっとロングストローク。
例えばコレをボア90×ストローク77.97の超ショートストロークエンジンと比べてみる。
排気量はほぼ同じ1983.088㏄。
まずそれぞれのシリンダー断面積を計算すると
ロング 3.14*(82.5/2)*(82.5/2) = 5,342.90625
ショート 3.14*(90/2)*(90/2) = 6,358.5
となる。
次にパスカルの原理的には単位面積あたりにかかる力はシリンダーが太かろうが細かろうが同じはずなので、仮に圧力をAとするとそれぞれのピストンには便宜上だが
ロング 5,342.90625A
ショート 6,358.5A
の力が掛かっていると表せるだろう。
で、仕事量とは
仕事量W = 力F * 変位量x
なので変位量xをストロークとすればピストンの仕事量は
ロング 仕事量W = 5,342.90625A * 92.8 = 495,821.7A
ショート 仕事量W = 6,358.5A * 77.97 = 495,772.2A
こう表現できると思う。(比較したいだけなので単位は無視)
ほとんど一緒だね。微妙に違うのはたぶん端数の影響。
ではクランク軸から見たらどうだろう。
トルクとは
トルク(ニュートン・メートル) = 力(ニュートン) * 長さ(メートル)
なので先のピストンの受ける力がクランクにかかるのだから
ロング トルク = 5,342.90625A * 92.8 = 495,821.7A
ショート トルク = 6,358.5A * 77.97 = 495,772.2A
ん?さっきの仕事量の式と一緒である。
そりゃそーだ、エネルギーは一緒なんだから。
テコの原理説がおかしいのはココで、ピストンに加わる力が同じだとして説明している。
例えば
ロング トルク = 6,358A * 92.8 = 590022A
ショート トルク = 6,358A * 78 = 495924A
こう言っているって事。
同じ排気量なのにボアXストロークの違いだけで19%も出力が違う訳無いよね?
しかも4気筒だからその差はこの4倍って事?
多くの人はテコの原理をイメージする時に自分がスパナでボルトを締めている様をイメージするだろう。
つまりスパナが短かろうが長かろうが力点には同じ力をかけられるイメージをしてしまう。
そして長いスパナの場合、ストロークも同時に長くなっている事を無視している。
もしくはロングストロークと聞いてボアはそのままってイメージなのでは?
これは単純に排気量が増えてるよね?
と言う事で、ロングストロークの方がトルクが出るのはテコの原理では無いと言う結論に至るのでした。
とりあえず適当に持論を展開してみましたが、合ってますかね?
ちょっと理解できた気がするんですが、、、。
じゃあ正しい要因は何かと言えば冒頭にもあった様に冷却損失やあとは吸気の充填効率や排気効率とか、要はその他の要因なのだろう。
この辺りは簡単な話では無いと思うのでgarage Kさんのブログを沢山読むべし。
もうちょっと言うと、ロングストロークのエンジンはピストンスピード自体の限界や吸気排気の流速の都合上、高回転が不得意であることは間違いないと思う。
また、理由はテコの原理では無いが、結果的に低回転でトルクが太いのは間違いないと思う。
なので、コレは具体的に調べてないが、ロングストロークのクルマの方が狭いエンジン回転数の範囲でキビキビ走るギア比になっているのではないだろうか。
クルマのキャラをそうして上の伸びを犠牲にしている的な。
回転を上げなくても普通に走るのでトルクフル感をより感じる的な。
実際のトルク差よりもこのギア比の差の方が人間の感覚への影響は大きいのではないだろうか。
何かの説明をする時に例え話を交える事は多いと思いますが、冷静に考えると違うだろ~って事が結構あります。
通販の謳い文句なんてほとんどこのパターンですね。
他人を疑ってかかるのはイヤな話ですが、冷静に判断できる感覚と知識を持ちたいものです。
因みにもしテコの原理説が正しいとしたら圧縮工程での抵抗や摩擦による抵抗は逆の力が働くと思うのだけど、そこについては誰も触れないですね。