
昨年4月のこと
評判のしらす料理を食べに行こうと、2時間かけて海沿いの町へ向かいました
助手席の妻は、生ものに目が無く、とても楽しみにしていました。
相棒に選んだクルマはジュリエッタ
少し暑く感じる気温の中、春の陽射しを浴びながら、順調に目的地に着きました。
お目当てのお店は2軒あり、どちらもいつも行列とのことだったので、近い順に立ち寄って、入れそうな方にお邪魔することに決めていました。
到着した1軒目のお店は、満車に近いが空きはある状態
ワンチャン入れるかも?と、ジュリエッタのエンジンを止めて、私だけ店内の様子を伺いに行きました。
店内に入ると店主から、
「今日は貸し切りなんです」
と、丁重に断られました。
仕方なくクルマに戻り、
妻に事情を伝えようと、
ジュリエッタに乗り込み、
ドアを閉めた瞬間、
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
と、けたたましくイモビライザーの警告音が鳴りました。
さかのぼること数カ月まえ
ジュリエッタを洗車中に、同じような出来事があり、キーを差し込んで回せば、すぐに鳴り止むことを経験済みでした。
あまりにも大きな警告音に、驚き慌てる妻を横目に、私は落ち着いた物腰と、余裕の表情でキーを取り出し、差し込み回すと、
差し込み回すと、
差し込み回す、、、
あれっ?、
鳴り止まない、
なんで!?、
え?
えっ?
なんでぇーー?
キーを何度も差し込み回して、
ドアを何度も開け閉めして、
パワーウィンドウを何度も上げ下げして、
アクセル、ブレーキを何度踏んでも、
全く鳴り止まず!!!
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
駐車場全体に響き渡る大音量に、とりあえず、いったんこの場を離れようと、車内で妻と大声で話して、エンジンを掛けて走り出しました。
周りの迷惑にならない場所を探して、方角も分からないまま走っていると、廃墟のような建物があり、周りに住宅もなかったので、ここにしようと、ジュリエッタを停めました。
ここでエンジンを切れば、音が消えるかも?
という淡い期待も虚しく、エンジンを切っても大音量で警告音が鳴り響き続けます。
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
とりあえず、私は車検証の中のユーザーマニュアルを読むことにして、情報を収集。
妻は妻で、ネットから似たような症状の情報を収集。
しかし、どの解除方法も通用せず、
その間もずっと、
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
と鳴り続けるばかり、
鳴り続けるエネルギー
そう!この電力さえ遮断出来れば、音が止められるのに。
よりによって外出先で、工具を持ち合わせていないため、バッテリーを外すことが出来ない
そうだ!!!
近くのホームセンターや100円ショップで工具を手に入れよう!
妻と2人で協力して、スマホで近くの店舗を検索
しかし、ここは自然豊かな、人里離れた漁師町
一番近いホームセンターまで、なんと約1時間
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
いったいどうしたら良いんだぁー
この最悪の状況で、幸いなことと言えば、やさしい妻が、パニックになったり、怒ったり、私やジュリエッタを責めたりしなかったこと
そしてもう一つ幸いなことは、
音は車内から出ており、ドアと窓を閉めれば、外にはそこまで音漏れしないことでした。
しかし、車内にいる私たち2人は、耳をつんざくような大音量に、正直、頭がおかしくなりそうでした。
解決策が見つからないまま、とりあえず一番近いホームセンターに向かうことにして、クルマを走らせていると、しばらくして、駐在所がありました。
私が警察に助けを求めよう、と妻に言うと、妻もうなずいてくれたので、休日に迷惑を承知で駐在所を訪ねました。
何度か駐在所の呼び鈴を鳴らすと、人の良さそうな年配の警察官が出てきてくれました。
事情を説明して、一緒に警告音を聞いてもらい、バッテリーを外すしか方法が無いので、工具を貸して欲しいと伝えると、しばらくして簡素な工具箱を持って来てくれました。
使えそうな道具は、古いプラスドライバーと小さなペンチだけでしたが、バッテリーを外すだけなら何とかなりそうです。
大音量で、
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
と、駐在所の前で鳴り響くクルマをみて、近所の野次馬のオジサンも現れました。
妻と警察官、そして野次馬のオジサンの3人が見守る中、私はボンネットを開け、バッテリーのカバーを外し、マイナス端子の留め具を緩めて行きます。
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
完全に端子の留め具が緩んだことを確認して、マイナス端子を外します。
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
鳴・り・止・ま・な・い・!
な・ん・で・?
端子外して、電力来てないじゃん!
な・ん・で・?
すると、警察官と野次馬のオジサンが、
「やっぱり外車は、よく分からないなぁー」
と、警告音に負けじと、大声で雑談。
いやいやいやいや、
国産車だろうが輸入車だろうが、電力無ければ、音は鳴らないでしょ?と思って、これまで生きてきましたが、私の認識が間違ってたようですね?
その後も、マイナス端子を付けたり外したりするものの、車内からの音は鳴り止まず、仕方なく購入したショップに連絡することに。
実は、ジュリエッタを購入して以来、このショップに一度しか車検を出していないので、かなり気まずかったのですが、背に腹は代えられません。
電話に出た受付の女性に、状況を説明するも、ちんぷんかんぷんの様子なので、メカニックに替わってもらうと、
「とりあえず見てみないと分からないので、自走出来るようなら乗って来てください。代車を用意しておきます」との温かいお言葉。
渡りに船、とてもありがたい申し出なのですが、問題はショップまでの約2時間の道のりを、妻と2人で、
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
という警告音を大音量でずっと聞きながら、走り続けなければならないという、地獄のようなミッションだったということなのです。
しかし、他に妙案もなく、妻と2人覚悟を決め、お世話になった警察官と、なんでか野次馬オジサンにもお礼を言い、駐在所を後にしました。
人間というのは、環境に順応出来る素晴らしい生き物です。
この時ほど、そう感じたことはありません
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
ビィロロロロロロォォォーーーーー!!!!!
狭い車内で、2時間もこの音を聞いていると、慣れてくるものです。
『長時間、同じ警告音を大音量で聞いていると、音がだんだん小さくなって行くような気がするよね』
妻と2人でそう言って、笑って2時間のドライブをしました。
こんな状況でも、夫婦喧嘩にならず、笑い合える夫婦って最高だなぁ、そんな話もしました。
少し状況を楽しむ余裕も出始めた頃、ショップに到着。
すると、メカニックさんはとても忙しそうで、ジュリエッタの様子も見ずに、私たち夫婦に代車をあてがい、送り出されました。
代車で自宅に帰り着くと、しらす料理を食べ損ねて、お腹がペコペコだったので、とりあえず家にあるものを食べて、お腹を満たしました。
ジュリエッタの修理は、いったい何日くらい、そして金額はどれくらい掛かるんだろう?
めずらしい症状だけに、かなり覚悟しないといけないな。
そんなことを考えていると、さっきのショップのメカニックさんから電話が。
メ∶「解決しましたよ」
私∶『えっ?もう解決したんですか?ありがとうございます!』
メ∶「バッテリーを外しても鳴っているので、音をたどって行ったんです」
私∶『どこから鳴ってたんですか?』
メ∶「運転席のドアポケットから鳴っていました」
私∶『ドアポケット?』
メ∶「ドアポケットに何か入れた覚えがありませんか?」
私∶『えっーと、エコバッグ2つに、掃除用のマイクロファイバークロスと、あとは・・・』
メ∶「ハンディライトですよね」
私∶『ええ。』
私∶『あーっ!防犯ブザー付きのハンディライト!!!』
メ∶「防犯ブザーのロックが外れて、ブザーが鳴っていました」
メ∶「私が見つけた時には、電池が消耗したのか、音は小さく途切れ途切れでした」
私∶『お、お恥ずかしい・・・お騒がせして大変申し訳ありません。。。』
私∶『ところでお代はおいくらでしょう?』
メ∶『私は何もしていませんから、お代はいりません。代車でおクルマを取りにお見えください。それでは。』
この出来事から、もうすぐ1年。
今年こそは、妻の好物のしらす料理を一緒に食べて、お世話になった駐在所にお礼を持って伺うとしよう。
その時、もし、あの野次馬オジサンがいたら、どうしよう。
そうだ、昨年のお土産話でガマンしてもらうとしよう 笑