今回のちょっと気になるあの車はサクッと。
BYD ATTO3
先週のさんいん輸入車ショーで見てきた中国のメーカーBYDの日本市場参入第1弾モデルになるATTO3です!
今回は松江にあるBYD AUTO 松江開業準備室にて試乗してきました。
普段なら仕様をつらつらと書くところですがATTO3は1グレードでオプションもないので特に書くことがありませんw
今回はタイトル通りに3つの「あっ!」というポイントを掘り下げてみましょう。
①走りがとても滑らか
ATTO3に搭載されるモーターはフロントのみの2WDで最大出力150kW、最大トルク310N・mを発揮します。
モーターというのは0回転時に最大トルクを発生する。
これは至極当たり前な話です。
そこからイメージされるのは発進時の加速がすごいのかなぁという感じではないでしょうか?
しかし実際に走らせてみると、なんと穏やかな加速感です。
制御が下手な車だと「ドンッ!」って出てしまうこともあるのですが、ATTO3はその辺うまく処理していて、モーターらしく反応はいいけれどびっくりするような急加速感はありません。
一応ドライブモードがECO、NORMAL、SPORTと3種類あって、変えてみるとアクセルに対する反応が変化します。
ですが、どのモードを選んだとしてもとんでもない急加速感が出ることはなく非常に穏やか。
とても乗りやすい特性に仕上がっています。
さらに回生も滑らかです。
回生もStandardとLargerという回生モードがあり、その名の通り普通モードとより回生するモードという感じです。
今回の試乗では基本的にLargerモードで試乗していましたが、アクセルを離したときの減速感がガソリン車のそれにすごく近く感じました。
日産のe-PEDAL STEPなんかはアクセルを離すとグッと減速感が出るので慣れてないとビックリするくらいですが、BYDの回生とそれに伴う車両姿勢制御はとても滑らかに快適に走れるようにチューニングされている印象を受けます。
ステアリングフィールも自然です。
最近のトヨタ車で感じるような緩いカーブのためにほんのわずかに操作した時の変なひっかかりもなく、昔の日産のようなスカッと抜けるような感触もない。
何も意識することなく普段通り動かせばその通り動く。
「これだよこれ…」ってなるやつでした。
ちなみにステアリングは少し細め。
この辺は好みが分かれるところですが、もう少し太い方が良いという人はいそうです。
②極上の乗り心地
ATTO3はe-PLATFORM 3.0と呼ばれるプラットフォームを採用しています。
バッテリーモジュールまでも構造体として使うことで強固なボディ剛性を確保しています。
そこに組み合わされる足回りはフロントがストラット、リアはマルチリンク。
タイヤは235/50R18のコンチネンタル・エココンタクト6Qを履いています。
足全体はとてもしなやか。
タイヤに十分なエアボリュームがある+ボディ剛性がしっかりしているので足がよく動く。
という組み合わせになっていて小さい凹凸は完全に足だけでいなしています。
もう一つ乗り心地で大事なのがシート。
前席は運転に主眼を置いたホールド性の高いものが採用されています。
レカロなどのセミバケットほどではないですが、大多数の車の純正シートよりはかなりホールドします。
リアシートは形状こそ一般的ではありますが、床と座面の高さ関係が良く、膝が持ち上がりにくい造りになっています。
床面は当然ガソリン車より高くはなっていますが、それでもあからさまに高くなったという感じもなく意識しなければ普通に座れそうな感じです。
BEVだと前席下への足入れもできない場合が多いのですが、ATTO3は普通に足入れできる空間がありました。
なので、足を思いっきり前に伸ばしても全然大丈夫。
後席の快適性ならbZ4X/ソルテラを上回っていると思います。
アリアと比べても遜色ない感じ。
そして静粛性も比較的高いレベルを確保しています。
タイヤがQuietの頭文字であるQを冠したモデルになっていることからもわかる通りロードノイズも比較的静かです。
床下からの遮音もしっかりしているのか、VEUROを履いたエクリプスクロスと比べても同等~空洞共鳴だけは少し劣るくらいかなというイメージです。
③これだけ揃って車体価格440万円(+ボディーカラー代)
クルコンやレーンキープ、緊急ブレーキサポート、後方の運転支援装備、360°モニターなどの先進安全機能、4G接続対応の12.8インチコネクティッドナビ(Apple Carplay,Android Auto対応)など最近は当たり前になってきている装備類をしっかり標準装備しつつ、オプションになっていることが多いパノラマルーフもついてこのサイズのSUVが440万円はかなりコストパフォーマンスが高いように感じます。
所謂メーカーオプションと言われるものは有料のボディーカラーのみ。
こちらは5色用意されているうちのグレー以外は全て66000円の有料色になります。
あとは税金類、コネクティッドプランの費用や保証サービスの費用、新規でEVを購入する場合は自宅用充電器などが乗ってくると思いますので、総額は500万円ほどでしょうか。
これは補助金を含まない金額になるので、補助金を適用するとこのクラスのハイブリッドモデルとも戦える金額になってくることがわかります。
ウインカー、ワイパーレバーの配置を国産車と同じ仕様にするなど明らかにコスト高となる日本専用仕様もありながらこの価格というのは結構高得点です。
ここからは3つの「あっ!」からは外れますが少し気になったところを。
①ステアリングスイッチの配置
これは完全に慣れの問題にはなってきますが、国産車の多くは右側にADAS系の操作スイッチ、左側にオーディオ関連のスイッチが配置されています。
しかしATTO3はこれが逆になっています。
国産車の配置に慣れているといきなり乗り換えたときには少し戸惑いそうです。
②ブレーキフィーリング
回生ブレーキは結構滑らかにかかるのですが、フットブレーキは踏み始めに鋭く制動力が立ち上がるタイプになっているので、慣れていないと回生との協調もあってカックンブレーキ気味になりやすいです。
もう一つブレーキ関連ではオートホールドからの解除が少し遅いのか発進で少し引っ掛かりを感じます。
③メーター
これは前回の「ちょっと気になっちゃうあの車」の時にも懸念点として挙げていましたが、実際走らせてみると、速度、”文字情報としての”バッテリー残量などの情報は見やすいもののその他の情報が少し見にくく感じました。
今回はメーターの表示をライトモード(実際のモード名が不明のため便宜上ライトモードとします)で乗っていましたが、若干緑がかった水色の背景に緑のアイコンは正直ちょっとわかりにくいです。
どうやらダークモードがあるみたいなのでそっちで乗るとまた違って見えるかもしれません。
④車両接近警報装置
電気自動車なのでもちろん装備されている車両接近警報装置。
ちょっと独特な音がします。
擬音で表すとしたらヒューンというよりはヒョーンという方が近いような感じです(説明しろと言われても難しい…)
トヨタの音に近い感じにはなっていますが、それより少し高周波音が強いようなイメージです。
室内にもそれなりの音量で聞こえてくるので気になる人は気になると思います。
ここまでいろいろ書いてきましたが最終的に感じたのは「日本車うかうかしてられないですよ…」でした。
まだ知名度は低いですし、販売店もこじんまりした開業準備室と呼ばれているものがほとんどです。
現状の松江にある開業準備室も貸店舗?にスタッフが1人常駐していて駐車場もスタッフが何人か来ると来客用の駐車スペースはほぼないような状況になるほどのホントに仮店舗といった風貌。
普通のディーラーみたいな店舗ができていくのはもう少し先になりそうな感じではありますが、20日に登場するコンパクトモデルのドルフィンもありますし、今後全国に100店舗ほどの正規ディーラーを展開予定で対面販売重視の姿勢を打ち出すなど広がってくると結構興味を持たれる方は多くなってくるのかなと思います。
もちろん昨今の日本と中国の関係性などいろいろ問題になりそうなポイントはあります。
「中国のものは信用できない」と切り捨てるのも自由です。
ただ、純粋にATTO3の”車としての出来の良さ”を目の当たりにすると日本車がこのままでいいのか?と色々考えさせられます。