
カーオーディオのDSPでクロスオーバーフィルターを使うとき、IIRフィルターであれば(特にFIRと書いてなければだいたいIIR)スロープに応じて位相特性が変化することは知られていると思います。
-12dB/octの対称のクロスをかけると、ロー側ハイ側2つのクロスポイントでの位相が180°ずれるので、片側を逆極性にしたりします。
位相で表現するとクロス周波数がいくつでも度数が同じで説明が済むので、だいたい話がそこで終わっている気がします。
理論通り、計算通りにはなっていると思うのですが、それで音にどういう影響があるのか、REWのSpectrogramで比較ができたので以下に示します。
■サブウーファーに50HzでLPFをかける
REWのSpectrogramです。
縦軸が周波数、横軸が時間です。
全周波数の音のタイミングが一致していれば、垂直な山になるはずのものです。
基準の時間より右にずれているところは、その周波数が遅れていることを示します。
(必要なかったのですが10msのディレイをかけたため、基準ポイントが10msの位置になります)
一番上がLPFをかけていない(バイパス)状態、この状態でも低域は10msくらい遅れています。
LPFのスロープを急峻にしていくほど、クロス周波数50Hzの遅れが大きくなっていきます。
バイパス状態と-48dB/octで20msの時間差があります。
50Hz周波数の1周期と一致しました。
■ドアスピーカー(助手席側)にHPFとLPFをかける
500HzのLPFと50HzのHPFをかけています。
サブウーファーのときと時間軸のスケールを変えてしまっていますが、やはり50Hzでのバイパス状態と-48dB/octとの差は20msくらいでした。
500Hz LPFによる遅れも出ているとは思うのですが、400~500Hzあたりがディップになっており位相の乱れがあるようなのでちょっとわかりづらくなってしまっています。
500Hzの1周期は2msですから、その付近の周波数で数ms程度のずれは確認することができると思います。
50Hzでの20msと比較すると2msくらいならいいじゃないかと一瞬思いますが、距離に直すと69cmにもなるので、ばかにできないような気がします。
■サブウーファー、ドアスピーカー、オンダッシュワイドレンジSPを組み合わせた例

5/22の設定。
クロスのスロープが-48dB/octにしていた。
山のすそ野の50Hzが25msくらい遅れています。
音楽を聴くと、アタックが一致しないような、ドンと鳴るべきところがボワッと聴こえる感じでした。

5/24の設定。
クロスのスロープを-12dB/octに変更。
REWでパルスを観察してタイムアライメントをかけており、整備手帳に記事をあげています。
山がほぼ垂直になりましたが、中低域(ドアスピーカーの帯域)が高域よりも早く鳴っており、「この状態はよいのだろうか?」と疑問がわきました(音楽を聴いて違和感はないです)。

9/25の設定。
クロスの変更はほぼなし(リンクウィッツライリーから一部バタワースへ変更)、タイムアライメントのやり方も5/24と同じ。
5月よりはEQを積極的に使うようになっている。
高域よりも早く鳴る箇所はなくなった、40Hzあたりで7msの遅れ。
SWにEQでブーストしてるところがあり、それが遅れに影響してそうな気も。
EQによるSpectrogramの変化は、後日また見てみるつもりです。
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カーオーディオ | 日記
Posted at
2022/10/02 23:02:55