2012年02月24日
なんとなく買ってみて驚いた。通常この手の本は一般層向けの新車販促本だと思うのだが、沢村慎太朗と森慶太によるマニアック談義全開。森の言う「さわやかにタックイン」というジョークも、かつてのフルトレ世代のプジョーを知らないと意味が分からないだろう。その他の分析もマニアックなものが多く、対談では微妙に話のかみ合っていない所が余計に二人の存在感を高めていたりする。もはや「RCZ&3008読本」というより「沢村と森の言いたい放題・プジョー編」みたいな感じだ。
少し調べてみるとどうやらこの二人、オートカーという雑誌を根城にやりたい放題やっている様子。久しぶりにクルマ雑誌を漁ってみたい気になった。
それはそうと本題(のはず)のRCZと3008。どうやら二人の評価はRCZより3008らしい。沢村は、最後はアンダーとなるRCZより、追い込んでニュートラルとなる3008の方に感銘を受けた様子。森は単純に乗り味が3008の方が「濃い」という。森が言う「濃い」という語彙は、ガイシャがガイシャらしくある様子を指しており、素直に褒め言葉と解釈して良いように思う。
しかしRCZというのはプジョーファンに取ってはある種の「夢のクルマ」である。なんとなれば、こんなに低くてこんなにワイドな車を未だかつてプジョーがリリースした事は無かったからである。これまでずっと背が高くて重心の高い車しか持っておらず、にもかかわらず「実用車にそこまで必要?」と言いたくなるような絶品なハンドリングを提供し続けて来たプジョーである。もしRCZのようなロー&ワイドなボディを得たのなら、これはもうとんでもなく素晴らしいクルマが出来るに違いないと思っていた。
が、期待に反してむしろ高い評価を得たのは3008。もしかしてプジョーは、背の高いクルマのハンドリングを一級に仕上げるのには慣れていても、ロー&ワイドのクルマを仕上げる事には慣れていないのだろうか。
もちろんRCZが悪いと言っているのではない。今でも十分良いクルマと思っているが、プジョーがこのディメンジョンを得たのであれば、もっとできて当然という気がするのだ。まあしかし記事を読むとRCZの開発期間は2年と短かったとの事。この先細かなアップデートでさらに上質な乗り味とハンドリングを達成する可能性は十分あると思う。
ちなみに私はAT版に試乗した事がある。その時の感想は森の指摘しているのと同じく、「余裕のある走り」だった。つまり運動性能として有利なディメンジョンをすべてスポーツ方向へ振るのではなく、普通に走っている時の上質な乗り味を実現する方向に使われている気がした。
RCZのあとに例えば308SWに乗ると、こちらの方がむしろ緊張感があってスポーティーな印象さえ受ける。それは背が高くて屋根の重いクルマを俊敏に曲げようとした結果、ある種類の余裕が無くなってしまったということなのだろうと思っている。
Posted at 2012/02/24 12:11:57 | |
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