2018年09月06日
家族のクルマ選びに付き合って色々試乗してきた。乗ったのはベンツCクラス、Eクラス、Golf GTI、Golf High Line、そして表題のザ・ビートル 2.0 R-Lineである。
そもそもFFなのにRRのデザインを自家パクりすること自体がよくわからない。こんなのはただのパイクカーだと思っていたのだが、試しに乗ってみて驚いた。室内はい意味でタイトで、ステアリングは重く、タイヤの四隅に踏ん張ったタイヤが地面をのしていく感覚は、昔乗っていた205を髣髴した。平たく言ってしまえばスポーツカーでもハッチバックでもない「スペシャリティ」仕様ということになるのだろうが、そんな陳腐な言葉では伝わらない。低速で走っていても明らかにゴルフ一族と異なる乗り味は、古き良き時代の欧州車を21世紀的に解釈し直したかのようだ。
これに比べたらこの日乗った他のは「どんぐりの背比べ」である。好みや使い方に応じて好きに選べばいい。どれを勝っても得られる経験は一緒だ。だがビートルだけは違う。これを買ったら例え用が無くともどこかに出かけたくてたまらなくなるだろう。とにかく走ること自体が楽しいのだ。
GTIは?と思うかもしれない。残念ながら街中試乗ではなんら光るところはなかった。高速や山道をぶっとばせば良さがわかるのかもしれないが、普通に乗っている限りではHigh Lineと大差ない。言ってみれば「ぶっ飛ばせば高性能がわかるのかもしれないフツーのクルマ」である。
それに、今回改めてゴルフ一族が大きくなりすぎたことも痛感した。フロントシートはまだしも、三人がけを意識したリアシートは変に広くて、どこに座ったらいいのか良くわからない。きわめて冗長な空間だ。悪くはないが良くもない。
これに比べるとビートルのリアシートは、タイトな空間にスッポリとハマる快感がある。上方空間も視界設計もとても巧妙にデザインされていて、「プラス2」ではなく、大人が満足して過ごせるよう設計されていると。長時間ドライブでどうなるかは経験していないのでなんとも言えないが、少なくとも試乗した限りではこの日試乗したクルマたちのリアシートの中で乗り心地ナンバーワン!である。ダンピングの効いた乗り味が前席とほとんど変わらないのもいい。このリアシートに乗ってくれと言われたら私はむしろ喜んで乗る。
それに比べるとがっかりというか、巨大な疑問符がついてしまったのがCクラスのリアシートだ。どういうわけか前軸を中心として常に前方に投げ出されそうな動きがつきまとう。逆に加速感は運転席の二倍ぐらい強い。運転手は「たいして加速しないなぁ」と思っているのに後ろの人間は「おおお」という感じである。このリアの乗り心地はゴルフよりも明らかに下だ。これは同乗した家族の意見も同意見だった。コンベンショナルな4ドアセダンがハッチバックに負けてしまうようでは困る。
Eクラスはさすがにそのようなことはなかった。前に投げ出されるのむしろ逆で、お尻が沈み込むような挙動で安心感がある。ただCクラスに感じた不安定感がまたくないわけではなかい。この点については、メルセデス・ベンツには乗り味より優先したいものがあるのだろうという気がしなくもない。それは自分の211でも感じたことである。ヘンなことが起こらないよう、常にクルマ自体が監視しているような感じ。それが妙な挙動につながっているのではと、所有して10年が経つ今でも思っている。
ともあれ、ビートルはその場ですぐお持ち帰りしたくなったほど楽しいクルマだった。古くからの欧州車ファンであれば絶対この良さをわかってくれるに違いない。すでに本国では生産中止の報が伝わってきているが、どういうわけか日本では今年中ならまだ新車で買えるという。今のタイミングで買い替えを考えている人はぜひ一度試乗してほしい。その際はリアシートへの試乗も忘れずに。なおざりのリア空間が多い中、これは入魂の出来である。
ちなみに「スペシャリティ」つながりでいうと、プジョーRCZの居心地の良さを思い出した。あれもハッチバックのホイールベースすら変えずに無理やりスペシャリティに仕立て直したかのような感があるが、室内の居心地の良さはやはり別格だった。あのバブルウィンドウも外見だけでなく、室内の光設計の良さにも寄与している。この辺の空間づくりのノウハウは欧州の独壇場かもしれない。
Posted at 2018/09/06 17:34:18 | |
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