フロントの造形が少し違うだけでこれだけ印象が違うものなのか? 207style、これこそ往年のプジョーの、正当な現代版リメイクだ。
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単にデザインが良いだけではない。軽い車重に小さなエンジン、2ペダルとはいえMT、鉄チンの小さなホイールでしめて210万円という価格。このスペックこそ最良のフランス車であり、最良のプジョーなのである。エンジンが小さければ整備性も良くなるし、熱的にもラクになるから補機類も劣化しにくくなる。さらにハンドリングこそプジョーの醍醐味だと考えれば、エンジンは小さい方がむしろ偉いのだ。
それに1.4Lという排気量は、1.6Lに比べて5千円も自動車税が安い。たかが200ccの「余裕」とやらに余計な税金を払うぐらいなら、1.4Lをめいっぱいブン回していた方がよほど楽しいカーライフになるだろう。この207 style、実物を見たわけでもないし乗ったわけでもないが、10年プジョーに乗りついだ経験からすると200%おすすめできるクルマなのだ。
もともとstyleというグレードは日本では306から導入され、今回の207のような「すっぴん」仕様、かつ低価格、かつMTという仕様で人気を博したものだ。それまでのガイシャといえば、大衆車クラスでさえあれこれゴテゴテとオプションを付けて、大きいエンジンのモデルを入れ、結果的に高級車並みの値段になるクルマばかりであった。また、そうでなければ日本市場には受け入れられないとされていた。その因習を打破したのが306 styleだったわけだ。これは大げさでなく、日本の輸入車史における一つの事件だったと言えよう。
その「styleショック」のあと、プジョージャポンは206でさらなるヒットを作り出し、日本市場におけるプジョーは定着するかに思われた。しかし本国プジョーでのボディ大型化路線や目立とう根性路線に日本のユーザーはついてゆけず、プジョージャポンも初心を忘れて豪華志向やプレミアム志向に逃げた結果、完全に日本人にソッポを向かれてしまったようだ。かくしてブルーライオン店舗は激減し、ブルーライオン大和といった、評判の高かったディーラーまで閉店する事態になってしまった。
そこにこの207 styleである。ようやくプジョージャポン自身が、プジョーとは何かを思い出したようだ。これはプジョーに限った事ではなくフランス車全般に言えるけども、エンジンなんか動けばそれでいいし、内装に至ってはプラスチック丸出しで全然かまわない。ボディ剛性もたいした事無いし音もウルサイしでもう安っぽい事極まりないのだが、ただ一点、足回りだけは一流。それがプジョーなのである。
クルマは動くものであるから、乗り込めば見えなくなるエクステリアや、運転すれば見えなくなるインテリアなどはどうでも良い。ただ動く物として、足回りさえ一流であれば、上質なカーライフが送れるのである。私はそう思っているし、おそらくプジョーエンジニア達の間でも、それは暗黙の事として了解されていたに違いない。プジョーの昔のクルマづくりを見ているとそう思う。
そのかわり、安いのである。安くなければいけないし、またその逆に、ただ安いだけのクルマであってもならない。最低限足回りだけは一流である事で、安くても上質なドライブ体験を提供できる事、それがプジョーの存在意義だ。
逆に変に高いモデルを買ってしまうと、後で後悔する事になるかもしれない。大きいエンジンはフロントを重くする。FRならまだしも、エンジンをなるべく前方に持っていかなければならないFFにおいては、エンジンの巨大化はハンドリングにかなりの悪影響をもたらす。ついでに横置きエンジンの場合は不快な首ふり運動が大きくなる。確かに加速はよくなるけども、そんなのはすぐに慣れてしまって何とも思わなくなってしまう。そしてあるとき代車でやってきたベーシックなモデルの、小さなエンジンだが必要充分で軽快な動力性能と、乗り心地とハンドリングを両立した懐の深い足回りに、「負け」を認めざるを得ない日がやってきたりするものなのだ。
Posted at 2008/08/31 14:37:05 | |
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