
とりあえず試乗の時の感想を。この高い値段にビビりながら、おそるおそる運転しながら出てきた感想は、「とにかくフツー」。5分経っても10分経っても、出てくるか言葉は「フツー」以外の何者でもない。数十分経ってすっかり運転にも慣れてくると、もうこれがベンツだとか800万以上するクルマだとかいう意識はどっかに飛んでいって、フツーのセダンをアシ代わりに転がしている気分になってしまった。
昔、友人にゴルフIIIを運転させてもらった時はこんなもんじゃなかった。おそろしくバッチリ決まるドライビングポジション、すぐに分かるボディ剛性感、一つ一つが大きくてしっかりした作りのスイッチ。そしてちょっとペースを上げてみて分かる恐るべきコーナーリング性能とブレーキ性能。何から何まですべてが「ドイツ車」だった。それが今や軽く倍以上の値段でこれである。グローバル化おそるべしである。
ただ一つ尋常ではなかったのが、思い切り踏み込んだ時の加速力。思わず「ぐぇ」とうなってしまった。私はこういうハイパワー(ハイトルク)車には乗り慣れていないので、余計にびっくりした。なんというか飛行機のように加速する。加速感とエンジン回転感が連動しない。ちょっとクルマじゃないような不思議な加速だ。
その一方で出だしは意外にトロい。トラックのディーゼルのようにペダルとエンジンが直結したかのような出足を期待すると肩すかしを食らう。しかしこのトロさが功を奏して、低速コントロールは非常にやり易い。混雑した道でとてもラクチンである。非日常的なフル加速よりもむしろこの低速コントロールの方が気に入った。
乗り心地も恐ろしく良い。これも「固い」と言われていたドイツ車の足の名残がまったく見られない。とにかくフラットライド。ボディを揺らさず、衝撃は全部サスで吸収している。これについては吉田匠が下記のように的を射た表現をしている。
「つまり硬いもの、すなわちボディと、柔らかいもの、もしくは滑らかなもの、すなわちサスペンションや駆動系がはっきりしていて、それらが絶妙に組み合わせられて得られる独特の快適さと上質感、それに安心感に包まれた乗り味、といったらいいのだろうか。」
http://www.carview.co.jp/road_impression/2006/mb_eclass/
これと対照的だったのが、前後して試乗したシトロエンC6だ。C6はフラットライドというよりも、路面からの衝撃をすべてフワーン、フワーンという恐ろしく周期の長い揺れに変換しながら走る。どちらも素晴らしく良い乗り心地だが、ボディを出来る限り揺らさないベンツ、心地よい揺れに変換するシトロエンという対照的なエンジニアリングが面白かった。
実はBMW 525ハイラインにも試乗した。こちらはもうイケイケである。シューンと回るエンジン、喜んで鼻先を変えるステアリング、これぞクルマという感じがした。EクラスやC6といった鈍重選手権大会に比べると、住み慣れた我が家に帰ってきた気がする。
それでもEクラスを選んだのは、これまで10年乗ってきたプジョーと正反対のキャラクターだったからだ。重く、鈍重で、平和。どうせならそういう180度違う世界のクルマを所有した方が勉強になるだろう。BMWも確かに良い車なのだろうが、私ならむしろプジョーを選ぶ。同じイケイケ系キャラクターでありながら、足回りはむしろプジョーの方が勝っている気がしたからだ。
正確なところは所有して長く乗ってみなければわからないにせよ、BMWを検討している人はぜひ一度プジョーにも乗ってみて欲しいし、また、ベンツを検討している人にはシトロエンにも乗ってみて欲しいと思う。これらは同じゴールに至る全く別の手段であり、比較すると面白い。
ともかくこうして長く付き合ったフランス車と別れを告げ、はじめてのドイツ車との生活が始まった。まだE320を語るほどには乗り込んでいないけども、とりあえずフランス車を手放した事で発見した事が一つだけある。私はつくづくフランス車が好きだったんだなという事だ。奇妙な話だが、手放す事でより客観的になれる部分もあるのである。特にこうして他メーカーに乗り換えた今となってはそうだ。その意味を込めてニックネームでは敢えて「フランス車党」を名乗る事にした。
Posted at 2007/09/29 15:55:48 | |
トラックバック(0) | クルマ