乗る度に、よくできてるなぁと感心するK13のインパネ。
実用重視であくまで質素だが、配置は全て計算ずく。
そういう真面目さが本来のマーチの性格であって、
華なんて追求したK12は突然変異種だったんだよね。
そう思う、元K11所有者なのでした。
私の職場(車両貸出業)では、営業の足に、車両チェックを兼ね予約の入っていない車を使います。
一日に150km前後、左右のドアミラーを畳んで徐行するような古くて狭い住宅地の街路から、
厳しい交通環境といわれる名四国道などを、頻繁に発進停止を交えて走りますが、
私はその足に、積極的にK13を選んでいます。
周りからは、何故?と言われますが、その答えは明快。
「いい車」、だからです。
K13って、世間で言われる程、そんなに悪い車なのか?
乗ってみれば、見えてくるものがあります。
職場には、初&2代目パッソ、2&3代目ヴィッツ、3代目デミオ、2代目フィット、
そして、3&4代目マーチがありますが、この中で一番安心して走れると感じるのは、
4代目マーチ=K13だと感じています。
例えば、下り坂のカーブの途中に排水溝が浮き出ているような所を減速せず突破した場合、
大抵の車は、しばらくの間、なんとなくハンドルの遊びの位置が移動した感触を残しますが、
K13はそんなことは全くないです。
まだ悪路の多い発展途上国にも対応するべく骨太に作られているから、でしょうか。
この点は現行ヴィッツが特に弱く、遊び位置の変化に加えて後輪の横っ跳びすら感じます。
廉価版からRSまで揃ってますが、特にRSが一番顕著ってのが何とも情けない…。
更に、アクセルを放した時の直進性の高さや、横風での煽られにくさ、小回り性能の素晴らしさ、
路地に入りこんだ時にバックしやすい視界と操作性の良さも、K13の美点です。
因みに、デミオとフィットは、前に進む分には文句なく自由自在ですが、
後ろに進む時、ハンドルの切込み量と意図した方向が上手くリンクしない印象があります。
特にデミオの方は、前輪の切れこみ角に左右で大きな差を付けているような感触があり、
後退時に大舵角で前輪の左右が異なる状況の路面を踏むと、ズゴッと横ブレすることがあります。
あと、3気筒でうるさいとか、副変速付CVTが扱いずらいとか言われますが、そう感じるのは
アクセル操作が雑な人だと思います。車の特性を理解して使いこなしてやれば、問題なしです。
そうやって走らせるK13は結構な俊足で、気持ちいいですよ。
なお燃費は、エアコン全開で前述の使用状況をこなした6日間の平均が12.8km/l。
参考までに、同じ様な使用条件では、プリウスやアクアで18km/l前後、
現行パッソ1000ccで11km/l前後ですから、決して悪くはないと思います。
とやかく言われる内装に関してですが、K13のそれは、実は悪くないと思ってます。
というか、国内で買えるこのクラスの車の中で一番金が掛かってる印象すらあります。
まず、何かの拍子にダッシュボードに手をついた時、そのしなる感触が余りに頼りなくて
思わず手を引っ込めてしまう車がありますが、K13はかなりガッチリしていて安心できます。
内装の樹脂製部品は、表面処理こそ明らかにコスト低減に振ったと判る無機質なものですが、
靴や爪が当たる部分の傷がK13は非常に少なく、汚れの沈着や日焼けによる劣化も少ない。
長年使っても、ヘタりが少ないんじゃないでしょうか。
なお私の業種は車内の拭き掃除が日常業務ですが、その際、シフトレバーのグラつきが少なく、
エアコンやドアミラー等のスイッチの操作感が結構しっかりしているのもよく判ります。
この点、最近のトヨタ車はスイッチ類が安物のボールペンのノック部みたいにグラグラしていて、
特にタンブラー型のスイッチは、拭いたら割れてバネとか飛び出すんじゃないかと思う程の代物。
そういう部分の感触の良さこそ、トヨタ車の美点だったと思うのですが。
あと、エアコンの吹出口が全て風向き調整可能かつシャットアウト可能なのもK13の美点。
300万円級の車でもそれが出来ない車が多い中、優秀です。
椅子の座り心地、メーター類の見やすさ、これも他の車と比べれば得点が高いと思います。
個人的な感想を長々と書きましたが、総じてK13は悪くない車だと思います。
が、国内の労働力を活かしていないとか、海外産の部品が多くて不安だとか、
そして日産の安全装備に対する意識の低さだとか、
日産ブランドが連想させるスポーティなモデルを持たない不満とか、
そういう点が生むネガティブなイメージを覆す「華」や「売り」がK13にないのは事実です。
でも、世間の評判に埋もれさせるにはもったいない出来の車で有ることも、K13の真実。
私のこの駄文を読んだ方には、車の購入の検討時に少しでもK13に触れて頂き、
地味な良さを実感していただければと思っています。
言うなれば、K11みたいな、真面目な車なんです。
買うのはESCが用意されるまでお待ちいただきたいですが。
なお、このK13での体験を踏まえ、2代目ノート、そして先日発売のラティオも、
前評判なんて関係なく、実はいい車なのではないかと期待をしています。
特にラティオは、P10プリメーラ以上にエポックメイキングなセダンの誕生なのではないかと。