
前回の記事で、お話したとおり、
『ポルシェPDKは、クリープ現象のある変速機だ。AT車と同じクリープ現象を意図的に、作出している。これは、多層クラッチ盤をヤスリがけしているようなもの。。
そう、PDKは、クラッチ消耗について、最初から確信犯なのである。』
PDKは、傑作ATであるZF8HPのように、早めのミート(とくにシフトアップ時の)が特徴で、
そのため、シフトアップ時に顕著に観察されるのですが、
M4よりシフトスピードが速いように感じやすい!という結論です。
ポルシェは、PDKのクラッチを滑らすことを厭わない設計方針で、さらに、シンクロナイザーを一部トリプル仕様にしたりして、クランクシャフトとトランスミッション間の多少の回転差ありきでも、早めにミートしていく前提の設計仕様です。
ただ、素早く且つスムーズにという矛盾する性能を手に入れるためには、
何かを犠牲にしなければならない。

犠牲の代償は、クラッチやシンクロナイザーの寿命。
シンクロは、真鍮合金やカーボンで作られているので、どうしても使用に伴い磨滅しやすいのです。
どちらが、より高性能というより、設計デザインの違いなのですね。
M4は、なるべく回転差を減らしてから、変速完了する設計です。
したがって、ポルシェのトリプルシンクロよりも、慣性質量の軽いシンクロナイザー(ダブルとシングル)で構成されてます。ドライバーの技量で回転数は合わせてあげると、より気持ちよく変速できる余地が大きいですね。
それは、シフトデザイン等にも、両者の設計方針の違いは明確に表れています。
ポルシェのPDKは、ATデザインが基本のPRNDポジションがメインで、+-のシーケンシャルは、シフトゲージを横に倒す(つまり、センターラインからオフセットする)オマケ的なポジションです。

あらためてポルシェのパンフレットを確認してみると、「オートマチックとマニュアルモードを備えます」と記載。先ずはATがあって、その次に、マニュアルモードもあるよね、という位置付け。
PDKシフトの形状も、かなり大きく長いです。M4の倍近い高さがあって、いかにもATのシフトデザインしています。
さらに、シーケンシャル操作にしては、ちょっと重すぎるのが問題。
特に、右ハンドル車の場合は、PDKの+-のシーケンシャルゲートが、人間工学的に残念なことに。。
(ポルシェに限らず、右ハンドル車はマイノリティですから、同様な差別が、よくありますね。。。)
しかし、美点もあって、操作フィールは、高粘度のギアオイルをスプーンでかき回すような、ねっとりした感触を演出しているのは素晴らしい。
最初は、軽い抵抗を感じて、だんだん粘着的な重さを感じる上質なシフトフィール。
それだけに、手首+「肘」の力を使わないと自然にシフトできない重さは残念な限りだ。
この点、M4は、MT基本のRND/Sポジション(Pは無い)ですが、+-のシーケンシャルは、シフトのセンターラインど真ん中にあります。
あくまでも、メインが自動クラッチのMTシーケンシャルであって、ATモードはオマケであることが、設計デザイン的にも貫徹されています。

パンフレットにも、自動MT と書いてあった。そう、DCTは、「MT」なんです。どこにも「AT」という表現が無い。
さらに、
ご丁寧にも、ブレーキペダルも、3ペダルMT車と同じパーツです。
PDKと違い、基本姿勢がマニュアル車なのだ。
なお、
DCTのシフトフィールは、ポルシェに比べて、電気スイッチ的で感銘は少ない。最初に抵抗感がマックスで、それを通り越すとスコーンと抜けるシフトイフィーリング。
この点は比べてしまうと、ポルシェPDKのほうが高級感あると個人的には感じる。(機会があるならDCTシフトレバーの可動部に、高稠度グリースを塗って、適度に抵抗力をあげたいぐらいだ)
その代わり、手首+「指」の力だけで、ショートストローク且つスマートにシフト出来る点は、M4の美点だろう。
(長時間ドライブした場合、ポルシェでは素がATシフトなので、シフト操作が大振り&重すぎる。。・°°・(>_<)・°°・。
パドル操作は重くないです。)
以上、全5回にわけて、PDKとDCTを分析してきましたが、
最後にまとめるならば、
「ATであることを志向したPDKと、MTであることを志向したDCT」
であり、
それぞれの顧客(市場)の属性を鑑みたときに、
PDKとDCTでは、そもそも目指しているモノが違うのでした。
(終わり)
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Posted at
2020/12/03 13:18:09