
前回は点火タイミングを確認しましたが、今回はインジェクターの噴射時間が正しく出力されているかを確認していきます。
A. 必要な燃料噴射量
Tunerstudioで噴射量を主に決めているのは、VEマップとAFRになります。
①VEテーブル
VE(Volumetric Efficiency)は空気の充填効率で、回転数と負圧で基本値を決めています。過給機有で充填効率が大きく変わりますが、NAの場合は100%強までの値になるくらいで、傾向としては負圧が高くなって空気の流入慣性効果が上がると充填効率が上がっていきます。単位は%。値は吸い込み量だけを反映していて、空気密度の影響はこの値に乗算することになります。
VEはシリンダ容量(1.6Lの場合、400cc)に乗算することで、Dジェトロは吸気空気量を補正します。
↓は15%の例です。
②AFRテーブル
AFR(Air/Fuel Rate)はよく知られている空燃費比で、マップにより構成されています。初期値では理論空燃費比に合わせています。
↓はマップ例です。変哲もないですが。。。
その他、燃料噴射量に乗算する各補正係数の設定もできますが、正しく設定できるかどうか検証するため1にしています。
↓理想燃料噴射量はExcelで検算しました。空気密度は温度20℃、湿度50%、大気圧1013.25hPaのときの値です。VE値15%、負圧36kPaのときの1気筒あたりで必要な燃料噴射量は0.0043ccになります。インジェクター制御によりこの噴射量を出力できていればよいことになります。
B. インジェクター制御
端子にパルス電圧をかけ、時間を変えることでトータルの噴射量を制御しています。今回はシーケンシャル制御を使っていますので、エンジンの4工程(1サイクル)で2回にわけて噴射することになります(↓イメージ図)。
先ほど求めた燃料噴射量の1/2になるようなパルス電圧時間になっていればよいことになります。
インジェクターですが、電圧を与えてもいきなりONになることはありません。ソレノイドには機械的な遅れ等が生じますので、実際の駆動時間は以下のようになります。
インジェクター駆動時間[ms]=Injection dead time(無効時間, InjOpeningTimeともいう)+必要燃料[cc]/(インジェクター容量[cc/min]/(60*10^3))
です。
検証です。ブラックヘッドのAE111は295cc/minの噴射量ですが、検証のため100cc/minに、Injection dead timeを約0にしています。
↓オシロスコープによるECUのインジェクターパルス電圧で、駆動時間1.33msです。
↓駆動時間から燃料噴射量を検算しています。1サイクルあたり噴射量が0.00438CCになっていますので、先ほどの結果と略一致しています。
動き自体大丈夫そうです。後はブラックヘッドの諸元を反映させればよいことになります。
ちなみにTunerstudioでは以下の算出によりインジェクターのパルス電圧時間を決めています。Eは補正係数です。詳しくはFuel設定メニューから確認してみてください。
PW = REQ_FUEL(必要燃料) * VE * MAP * E + accel(Accel Enrishment) + Injector_open_time
E(gamma_Enrich) =(Warmup / 100)*(O2_Closed Loop / 100)*(AirCorr / 100)*(BaroCorr / 100)
なお#4の点火タイミングと今回の噴射時間をPCシミュレータモデルにフィードバック入力してClosedループで動かしています。最終的にArduinoにシミュレータモデルを移植する予定ですので、別コラムで今後紹介していきます。
Posted at 2021/07/10 16:12:03 | |
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