夜間運転用クリップオングラスを買った後に調べて視認性を向上させる効果がないことを知りました。。
1997年には米国連邦取引委員会 (FTC) が、「夜間の安全性向上」と「夜間の視力向上」を謳った “NightSafe”(レンズは琥珀色)を販売するNationwide Syndications社を根拠のない虚偽広告を行ったとして提訴しました(
https://www.ftc.gov/news-events/news/press-releases/1997/01/marketer-nightsafe-eyeglasses-agrees-settle-charges-unsubstantiated-claims-safety-while-driving)。その後、両者は
・夜間の安全性向上といった主張を一切行わないこと
・安全性向上を連想させる名称の使用禁止
・12万5千ドル(約1500万円)の消費者被害回復金の支払い
・購入者リストの連邦取引委員会への提出
などの条件で和解しました。
にもかかわらず、2026年現在も様々な夜間運転用メガネが開発され、"NightSafe" の宣伝文句ほど誇大ではないにしても、夜間の運転に対するポジティブな効果を謳って販売され続けています。
・「
夜間・雨天・薄暮の運転時の視認性を向上」
・「
夜間運転の視界を明るくし、ライトの眩しさをを軽減」
・「
雨天や曇り・雪道・夕暮れなどの見通しが悪い場面でも、明るい視野や視界を確保」
・「
夜間や悪天候のドライブの際に、車の黄色いフォグランプのように黄色を立ち上げ、コントラストを上げることで視界を良好にします」
Hwangらの2019年の論文
結論:
1) 夜間運転用イエローサングラスはメリットがなく、むしろ歩行者検出において反応速度が下がる傾向(0.1秒ほど)。
2) 夜間の視認性には眼に入ってくる光の量が何より大事。
3) 夜間運転にはどんな色付きレンズも推奨されない。視力がいい人は裸眼が最良。視力矯正用メガネをかけている人は反射防止コーティング付きレンズにするとよいかもしれない。
夜間の視認性を本当に高めたいのであれば、以下の対策の方がはるかに効果的。
・フロントガラスの内外を徹底的に掃除する(汚れによる乱反射を防ぐ)。
・定期的な眼科検診を受ける(白内障などの初期症状は眩しさを増幅させます)。
・適切な度数の
透明なメガネを使用する。
文献: Hwang, A. D.,
et al., Comparison of Pedestrian Detection With and Without Yellow-Lens Glasses During Simulated Night Driving With and Without Headlight Glare.
JAMA Ophthalmol.
2019,
137, 1147-1153.
doi:
10.1001/jamaophthalmol.2019.2893
Massof, R. W. Why Don’t Yellow Night Vision Glasses Work?
JAMA Ophthalmol.
2019,
137, 1154-1155.
doi:
10.1001/jamaophthalmol.2019.2907
・1940年代からイエローレンズの効果に関する研究はあり、
低照度下で「黄色いレンズだと眩しくないし、よく見える」と感じるのは心理的な錯覚に近いこと、実際にはレンズが光を遮るため、わずかな光を頼りにする夜間運転において、
最も重要な「視力」そのものは低下していることが指摘されていた。
Lauer, A. R.
et al., Effect of So-called Night-driving Glasses on Visual Acuity - A Preliminary Study.
Proc. Iowa Acad. Sci. 1949,
56, 263–270.
https://scholarworks.uni.edu/pias/vol56/iss1/37/
・1970年代の研究では、イエローレンズを使うとコントラスト検出に悪影響があることが示された。
・この2019年の研究は、LEDヘッドランプのグレアのある/なし、夜間運転用として売られているイエローレンズ(3種類)のある/なし、若い被験者(平均27歳)/高齢者(平均70歳)で歩行者検出のパフォーマンスに差が出るかをシミュレーションマシンで検証した。
・結果は「歩行者の発見速度に有意差なし」、「眩しさを軽減する効果もなし」、「ライトの眩しさによる反応の遅れは、高齢ドライバーで顕著(若者の約5倍の遅れ)」
検証に使われた夜間運転用イエローグラスは以下の3商品。
・Night-Lite (Eagle Eyes Optics) — 2026年現在販売されているのは可視光透過率89%で結構色が薄いレンズ。

・HD Night Vision (Idea Village Co) — スペックは不明。

・Knight Visor (Blupond Inc) — スペックは不明。

研究で使用された3商品の透過スペクトル:
Iizukaらの2024年の論文
日本の商品を使っている研究を探しました。
Iizuka, T.,
et al., Effects of yellow lenses on disability glare from low-beam headlights.
Optical Review 2024,
31, 446–450. doi:
10.1007/s10043-024-00893-5
使用しているレンズは東海光学のViewnal SP(可視光線透過率78%)。

ロービームからの減能グレア(disability glare)に対するイエローとグレーのレンズの効果についてコントラスト感度を調べています。結論としてはやはりイエローレンズの夜間使用は推奨されないというものでした。
別論文において、イエローレンズにLEDヘッドライトからの不快グレアを低減する効果はないことも報告されています。
Iizuka, T.,
et al., Age-based effects of yellow lenses on discomfort glare from white LED headlights.
Optical Review 2024,
31, 626–632. doi:
10.1007/s10043-024-00926-z
Posted at 2026/01/19 14:51:22 | |
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