
すでに皆さんご存知かともいますが、
ニューヨーク・ハドソン川に旅客機が不時着水しましたが、奇跡的に乗員・乗客全員が無事に救出されました。
飛行機が好きなので、それから派生して航空機事故にもとても関心があるのですが、このパイロット(チェスレイ・B・サレンバーガー氏)、本当にすごいです。 (該当する部門があれば)ノーベル賞をあげてもいいくらい。
まず事故の原因は鳥との衝突(バード・ストライク)で、これはパイロットには避けようも無い。 しかも、バード・ストライクが発生しても簡単にエンジンが停止しないように改良されてきているのに、今回は装備されている2基のエンジンが両方ともほぼ同時に停止するというという非常に稀な悪条件。 ここから、パイロットはものすごく微妙で難しい判断を強いられるのに、次々と「正解」を選択し続けています。
① 事情を知った管制官が、ラガーディア空港へ戻れと指示したが、パイロットは独自の判断でラガーディア空港ではなく隣州のティータボロ空港を目指します。 速度・高度に余裕の無い状況で、しかも人口密集地の上での旋回はあまりに危険です。 素晴らしい判断です。
② ティータボロ空港にも到達できないと判断し、川幅の広いハドソン川に沿って滑空しながら、どうすればよいのか考える時間を稼いでいます。 この間、パイロットは管制官からの呼びかけも無視し、最善の選択をすることに集中しています。 後に管制官は、これを「不気味な沈黙」と呼んでいます。
③ 万策尽きてハドソン川への不時着水を試みます。 「周囲は人口密集地ばかりで不時着するための場所は無いのだから他に選択肢が無かった」と言うのは簡単ですが、これはものすごく勇気のある決断なのです。
百人以上乗れるような大型機が不時着水に成功した事例は実は無いのです。 彼はそれを知っていたはずです。
ここまでは、彼の冷静でプロフェッショナルな判断力が光ります。 そして、ここからは彼の操縦テクニックが光ります。
映像を見ると、着水した機体は浮力を保った状態で波に揺れています。 これが、どれだけ凄いことか! つまり、胴体も主翼も大きな損傷を受けなかったということです。 機体は1時間以上浮いていたそうです。 例えば、胴体に裂け目でも出来ていたら、機体は急速に沈みます。 機体が長時間に渡って安定して浮いていたことが全員生存の決め手の一つでしょう。 パイロットは(シミュレータでは試みるでしょうが)実際に不時着水の訓練など出来ません。 ぶっつけ本番で、こんなに完璧な不時着水を、誰も成功したことが無いことをやってのけたのです。 もう、判断力だけでなく操縦テクニックも超人的と言うしかありません。 ちなみに、彼もアメリカ空軍出身だそうです。
また、全員が脱出した後、自分で2回機内を行き来して逃げ遅れた人がいないことを確認したとか。 最後の最後まで、まさにプロ中のプロですね。 本当に素晴らしい。
Posted at 2009/01/17 02:59:22 | |
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