2022年02月02日
大人のスポーツカーをつくろう(1)
120iの納車日ということで、私は神奈川県にあるBMW・ベンツ専門店を訪れた。
お店の提案では自宅への納車まで含めて、全部やってもらえるという話であったが、複数の県を跨ぐと陸送費が馬鹿にならない。
今回の車は車検なしなので、県外での登録となると他府県登録費用なんてものもかかってくる。
車を陸送して、私の住所の管轄運輸支局で車両登録しその後納車という流れになるが、その他手続きも含めると追加で20万円ほどかかってしまうとのことなので、こちらでできることは全てこちらでやってしまうと進言した。
20万円あればタイヤ・ホイールなり、足回りなり、吸排気系なりの変更が可能である。
ここはチューニング費の捻出のためにも、店舗には納車整備と車検だけお願いした。
実際に各種手続きも一度やってみればなんてことないものが多く、自分で簡単にできるものばかりである。
県外で車検なしの中古車を購入する際には、一旦店舗の管轄運輸支局で車検を通して車両登録をしてもらい、その車に乗って帰り、自分で地元の運輸支局にいって名義変更をするという流れをとればぐっと費用を抑えることができる。
車検つきの県外ナンバープレートがある車両を購入した場合も同様に、自分で名義変更すれば安上がりだ。
申請に必要な各種書類の用紙はネットからダウンロードもできるし、販売店舗に用紙は完備されているので言えば用意してくれる。
代金はすでに現金一括で支払済みなので、特に店舗ですることもなく、コーヒーを一杯ごちそうになって店舗を後にした。
陸送ではなく自分で乗って帰れば早速ロングドライブを楽しむことができる。
試乗時以来あらためてこの120iに乗ると、改めてかなりしっかりしている印象だ。
この車両が2010年式2万km(当時で4年落ち)。
レンタカーの車両が2006年式で7万3000km だったので、レンタカーの車両と比較するとヘタリなどはないようだ。
第一印象としてはしっかりしていると言えば聞こえはよいが、やっぱり重たい。
エンジンも吹け上がりが悪く、踏み込んでも中々回転数があがっていかない。
ただ、スポーツモードにすればレッドゾーンまで回るので、エンジンそのもののトラブルではなく、ATの変速制御によるものだろう。
車検証ケースには前のオーナーの整備記録が入っており、名前を見ると女性オーナーである。
ほとんど踏み込むことなく乗っていたと思われ、CPUもそのような変速に最適化して学習しているものと思われる。
私が改めて再教育をしてやればしっかり回ってくれるようになっていくだろう。
開店と同時に訪店したので、まだ午前中。
時間には余裕があり、店舗が鎌倉と近かったので鎌倉観光へとしゃれこんだ。
休日の観光地なので人ごみも多かったが、コンパクトカーならではの取り回しで狭い道も苦なく入っていける。
強化クラッチの入っていたMR-Sでは狭い道や人ごみの中はできれば遠慮したいところであったが、ATって楽チンである。
ただステアリングはどっしりとしている。
ドイツ車はステアが重たい傾向にあるが、このE87は油圧ではなく電動パワステである。
ただ、これでも後期型は軽くなったようで、初期型は重すぎるとクレームが多かったらしい。
私は家のベンツで重いステアには慣れているが、初めて乗る人だとビックリするんじゃないだろうか。
駐車時など、ステアを多く切るような場面でも、国産車のように片手でクルクル~なんてわけにはいかない。
ただ最近のベンツ(204以降)は国産車並みにステアが軽くなった。
日本仕様なのかは知らないが、私としてはある程度どっしりしていた方が好みである。
鎌倉を堪能しつつ、普段使いの実用性のチェックもできた。
さて、鎌倉から地元までおよそ270km。
高速を流しながらこれからどのように車を仕上げていこうかを考えた。
大人のスポーツカー、そのコンセプトは「sports」「cool」「understatement」。
まず第一に、なによりもスポーツカーであること、これが全ての前提である。
スポーツカーの情熱は持ち続けたい。
だけど、暑苦しくないのが今回の大きなポイント。
そこで「cool」。
coolは冷たい、涼しいという意味もあるが、かっこいい、素敵な、おしゃれなという意味合いで使うことも多い。
暑苦しすぎず、落ち着きすぎない「かっこいい」、それが「cool」である。
understatementはひかえめという意味合いであるが、ニュアンス的にはやりすぎないである。
ではやり過ぎないとはどういうことか。
スポーツカーを仕立てる際にはよく記号を使う。
専用エアロに大型のリアウイング、チューンされた専用エンジン、ブレンボのブレーキ、レカロのシート、モモのステアリング、ビルシュタインのダンパー、ゲトラグのミッション、BBSのホイール。
これらは国産スポーツカーの黄金時代とも言うべき90年代のスポーツカーを形作った典型的な記号である。
これらを純正で装着することによって各社メーカーはその車がスポーツカーであることを知らしめた。
なかでも視覚による効果は大きい。
レカロやブレンボなんて言葉を聞いた時、わかる人は飛びつくが、一般人は何それ?おいしいの?と言った具合であろう。
一方フェラーリを見た時、それが車をよく知らない一般人であってもこの車は凄そうだ、他とは違う特別な車だと思うだろう。
カローラと見比べて、違いがわからないなんて人はいないはずだ。
上記の記号の中でも専用エアロを装着するケースは多く、一目で他の車やグレードとは違いますよとアピールしている。
同様に装着率が高いのがブレンボのブレーキ、レカロのシート、モモのステアリングだ。
純正のホイールも実はBBS製でしたなんてことも珍しくない。
これらは性能向上の意味合いも大きいが、目につきやすい部分に配置されているため視覚効果を狙ったものが多い。
ダンパーやミッションなんかだと基本目に見えない部分なので、メーカーも装着率が高くないように思う。
逆に見ればゲトラグの6速ミッションなんてものが入っていたら、この車は本当に性能を追求して設計された車だという裏返しでもある。
話を戻すが、視覚による効果は絶大で、GTウイングやワイドエアロなどの派手なエアロパーツは普通の乗用車ではありえず、一目瞭然でその車をスポーツカーであると認識させる。
ただこれではcoolではない。
羊の皮をかぶった狼と言う言葉がわかりやすいだろうか。
以前の私ならばその魅力がこれっぽっちも理解できなかった。
せっかくスポーツカーであるならばそれらしい姿をしているべきであり、ファミリーセダンが速いことの何が良いのかと。
機能美と言う言葉があり、「Form ever Follows Function(形態は常に機能に従う)」とアメリカ人の有名な建築家ルイス・サリヴァンが語った。
私はこの言葉が好きで、私の審美眼の基本となっている。
速いという機能があるのに、速くない(機能がない)形態をすることは私にとって美しくなかった。
ただ、実際車のデザインを見ていると、記号による意識づけのために、過剰なデザインが多い。
MR-SにワイドエアロとGTウイングをつけてGTカー風にしていた私が言うのもなんだが、特にエアロパーツに関しては本当に意味のあるエアロなのかは疑わしい。
そうなるともっとひかえめの方が、本来の機能美なのではないかと思うようになってきた。
実際に性能面だけで見ればフルノーマルで十分なのかもしれない。
ただ、羊では満足できない。
それが40歳を目前に控えた男の心境である。
羊ではひかえめ(やりすぎない)ではなく、やらないである。
上記のような記号をうまくとり入れつつ、かといってあからさまにはしない。
シェパードの皮を被った狼ぐらいを目指したい。(伝わるか?このニュアンス)
やりすぎずにスポーツカーであることを滲ませるかっこよさ、coolを演出するもの、それが「understatement」である。
まずは1年間フルノーマルのままじっくり乗り込もう。
いじる前にこの車がどんな車なのかをよく知らなければならない。
その上で不満な部分をチューニングしていく。
レンタカーも含めてそれなりに試乗をしたが、個体差というのもあるし、実際に自分の車として乗りこまないと見えてこない部分も多い。
現段階では乗っていてあまりスポーツカーというフィーリングがしないが、この車がどんな姿へ変わってくれるのか、実に楽しみである。
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E87 | クルマ
Posted at
2022/02/02 21:35:49
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