2022年02月12日
さて、笑顔で迎えてくれた店長だが、「お待ちしておりました。遠いところからわざわざお越しいただいてありがとうございます」と丁寧に接してくれた。
私も中古車なので状態の把握をしたいこと、現状いくつかの不満点があるので、チューニングによって解消したいが、輸入車のチューニングは初めてでノウハウがないこと、その相談をしたいことを告げると、では早速車を点検していきましょうという流れになった。
点検作業中、私は店長と話をすることとなったが、まずは何を求めてBMWの1シリーズを購入したか、そして今後どのような車に仕立てていきたいかを熱弁した。
BMW120iをベースに大人のスポーツカーを作りたいが、スポーツカーの目線でみると車の動きが重い。
パワーは求めていないが、フィーリングを良くしていきたい。
ハンドリングもエンジンももっさり感が強く、もっとカーン突き抜けるようなフィーリングが欲しい。
サーキットは考えておらず、ワインディングなんかを気持ちよく駆け抜けたい。
同時に上質さも追及していきたい。
スポーツカーとしての音は大事だが、その音は上品でありたい。
ロードノイズやジャダー、ギシギシ音、ゴツゴツ感は排除しつつ、スポーツカーとして芯のある乗り味を確保しつつも、快適性のある車を目指したい。
乗った事はないが、アルピナがイメージが近いのではないかなどと言いたい放題を話すと、今度は店長の方から私の今までの車歴を聞いてきた。
初めての車はHKSの製品で固められたサーキット仕様のR32GT-R、次に無限をメインにしたライトチューンのEK9、そしてK20Aに換装し、ワンオフパーツも満載のフルチューンMR-Sと告げると、「やってますねえ(苦笑)」と苦笑いをされた。
R32GT-Rは購入時点でサーキット仕様で自分では何もいじっていないし、EK9は安心の無限によるライトチューンだったが、MR-Sはさすがに自分でも苦笑いである。
「まあ、でもおっしゃっているイメージは何となくつかめてきました。今おっしゃったような車からすればBMWがダルだと感じるのも仕方がないでしょう。ですがチューニングによってイメージに寄せていくことは可能です。1つずつ解決していきましょう。」
と、いくつかプランを用意してくれた。
「最終的にはよりスポーツカーらしい軽快なフィーリングが欲しいということだと思うのですけど、これは色々な要因が重なります。物理的な車の重さもあるし、レスポンスの悪さ、エンジンの吹けの悪さなんかも感じ方としては影響してきます。」
と説明をしてくれた。
まず、物理的な軽量化というのはあまりお勧めしないとのこと。
上質さを求めるのであれば、ついているものを省くというのは得策ではない。
やるとすれば、鉄製のパーツをアルミ製のものに置き換えていくというようなことになるが、全体のバランスをよく考えてやらないとせっかくの重量バランスが崩れてしまう。
結果、一部ではなく車全体での交換になってくるので金額的にもかさむし、一般的にはそこまで追求しなくてもよいのではないか。
お勧めするとすればシート交換だと言う。
純正シートはかなり重いので、レカロなんかに交換すれば片側で10kg、両方で20kg近い軽量化が可能。
シートは車の中心にあるので、重量バランス的にもあまり影響を受けないのもメリット。ただし、中心部分の軽量化はフィーリング的にはあまり効果を感じにくいとのこと。
私はEK9の頃からレカロSP-Jを愛用しており、車が変わってもシートは乗せ換えて使い続けてきた。
今回も使用するつもりで、BMWにふさわしいようにシボレザーとアルカンターラでちょっと高級な雰囲気で張替をお願いしているところである。
軽快なフィールで一番おすすめはレスポンスアップであると言う。
BMWは良くも悪くもダルで、落ち着きのある車に作っている。
だが、それはそのようなセッティングにしているだけで、逆にレスポンスのよいセッティングも可能とのこと。
ここはBMWをレーシングカーに仕立てるノウハウを多く持っているstudieのコンサルティングに期待したい。
BMWやベンツが重厚な乗り味なのは凝りに凝ったサスペンションによることが大きいという。
E87のサスペンションは前マクファーソンストラットの後マルチリンクである。
ただ前のマクファーソンストラットもダブルリンクのロアアームをもつタイプ(ダブルジョイントスプリングストラットと言うらしい)になっており、後のマルチリンクはE60にも採用された5リンクのインテグラルアーム式となっている。
横方向のトレーディングアームを配置すれば乗り心地にも有利ながら、横力にも強いようにできるし、アームを分割してタイヤのストロークで転舵軸が変化することにより、走行性能向上にも寄与するなんてこともできる。
非常に凝った金のかかっているサスペンションだが、リンク数が増えればそれだけ反応伝達が悪くなる。
なのでリンクのブッシュ管理がレスポンスアップの肝であるとのこと。
この辺りは前の車でもいじっていた部分なので、説明も納得できる。
そこで店長に提示されたのはリアメンバーブッシュのピロボールによるリジット化と、前のロアコンアームブッシュの強化ウレタン品への変更である。
ピロ化と聞いてちょっと怯んだ。
私の中でピロ化はレスポンスとの引き換えに、ゴツゴツ感やギシギシ音といった快適性の悪化をともない、車体への負担と耐久性を考慮しないタイムアタック車用の措置である。
今回は快適性と上質さを十分に考慮し、車体寿命を縮めるようなチューニングは望んでいないので、ピロ化の提示には怪訝を示した。
すると店長は要所を絞って強化することにより快適性を犠牲にせずにメリットを受けられるという。
またBMWはシャシー剛性が国産車とは比べ物にならないため、リジット化によるデメリットが出にくいという話だった。
BMWのリアメンバーはかなり大きなゴムブッシュがあり、ここがBMWの動きが重い元凶とのことだった。
もともとBMWはアウトバーンを200km/hで巡航するクルーザーの側面が強いため、ここで落ち着きを作る設計である。
またロアコンアームブッシュはステアフィールに直結し、ここを固めるだけでシャープかつダイレクトなフィーリングになるとのこと。
ピロ化しても良いが、強化ブッシュで十分フィーリングが改善されるのと、ロアコンのピロ化は異音など快適性に影響が出やすく、またピロボール自身の寿命が短いためおすすめはしないとのことだった。
アッパーマウントブッシュのピロ化はダイレクトに影響が出てしまい、ゴツゴツしたフィーリングになってしまうため、純正がおすすめであり、スタビマウント、スタビリンクのブッシュについては、今後のチューニング次第だが、ストリート仕様であるならば純正でいいでしょうということで話がまとまった。
足回りはどうしますかと聞かれたので、足回りも不満で交換を考えている旨を告げた。
純正の足は低速ではゴツゴツするのに高速ではポヨンポヨンち落ち着かない。
荒れた路面、ギャップで跳ねるので、まずは当たりはマイルドで、なおかつ引き締まっており、荒れた路面でも跳ねないような追従性のよい足回りを実現したい。
そして、できれば純正形状でお願いしたいと要求を並べてみた。
特に純正形状サスにはこだわりがある。
通常チューニングカーの足回りは車高調キットを入れることが多いと思うが、私にとって車高調は結構無駄である。
本来車高調は各サーキットを転戦するような場合に、そのステージごとに調整してセッティングを煮詰める方向けの製品である。
一方私はズボラなのでそんなことはしない。
MR-Sで車高調を組んだが、始めにショップがセッティングしたっきり、ほぼそのままである。
(サーキットに合わせて数回いじったが、だんだんやらなくなった)
機能美を重視する私としては美しくないし、オーバースペックに対する後ろめたさもある。
EK9の足が無限の純正形状サスだったのだが、これが文句の1つもないほど良かったので、純正形状サスには好印象だ。
脚の引き締まり具合、乗り心地、適度な車高ダウン、車高調と比較して半額なありがたい価格設定。
なので、私は可能な限り純正形状サスを探し、良いものがなければ車高調を組むのがセオリーである。
すると、「まさしくドンピシャな足があります。」と言う。
「ACシュニッツァーというドイツの老舗BMWチューナーがあるのですが、そこの純正形状サスが本当におススメです。いわゆるニュルで鍛え上げられた足で、あそこは固いだけじゃ速く走れないんです。路面は荒れ放題で、連続するブラインドコーナーにアップダウンの繰り返し。あそこを速く走ろうと思えばこんな足になるんでしょうね。当たりはマイルドでかつ引き締められており、荒れた路面、ギャップなんかでもストロークを十分に確保しているので跳ねずにビタッと路面に追従します」と言って、装着したカタログを見せてくれた。
純正比で20mmダウンとのことで、ダウン量もドンピシャだった。
ただ値段が少し張り、一般的な純正形状サスの1.5倍くらいするとのこと。
私の考える一般的な純正形状サスとBMWの一般的な純正形状サスの価格が果たして一致するのか一抹の不安を覚えたが、それでも車高調を組むより安くしあがるようだ。
価格も含めてstudieのコンサル能力を測る意味でも今回はすべて任せてみようと思っていた。
ブッシュのピロ化についても完全に納得がいったわけではない。
実際に装着してみて、それで納得がいかなければ今後出入りをしなければいいだけの話である。
Posted at 2022/02/12 14:51:01 | |
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E87 | クルマ
2022年02月12日
studieのホームページには、オーナーズカーの紹介や各車種デモカーの紹介(製作過程つき)、各車種チューニングのおすすめのページ等もあり、どのような車に仕上げていくかの参考に多いにさせていただいた。
そのまま読み進めていると、studie点検なるものをやっていることを知った。
「studieではBMW専門店のノウハウを活かした100項目に渡る専用メニューにて愛車のコンディションを事細かくチェックし必要に応じて見積もり&プランニング致します。」
「純正パーツだけではなくアフターパーツの劣化状態も確実に診断できメンテナンスのご提案をさせていただきます。」
「劣化パーツのお見積りをお出しするだけではなくそのパーツが劣化しているとどんな影響があるか、交換する事でどんな変化があるのか等、あらゆる面からのサポートをさせていただきます。」
「また消耗品などの交換に関しましても純正パーツ以外に色々なアイテムをご案内させて頂きますので、チューニングを兼ねた整備など、ただ単に部品交換ではない愛車のグレードUPとしてご相談させて頂きます。」
「Studie Individual Karte Systemに詳細な作業履歴を記録し豊富な経験を元に、ランニングコストを抑えてお車を長く安心してお乗りいただける様お手伝させて頂きます。」
とのこと。
100項目点検というとおそらくは24カ月法定点検のような内容であろう。
それをベースにBMW専門店ならではの、この車種はここが弱いから入念にチェックしようとかそのようなノウハウがあるのではないか。
これはよい。
新しいチューニングショップへ初めて顔を出すときは、まずどのようにアプローチしようか結構頭を悩ませる。
チューニングショップの中には職人気質の気難しかったり、高圧的なショップもあり、打ち解けるまでは結構ドキドキするものだ。
なので、まずはこの点検を受けて車全体の状態を把握してもらい、その上でチューニングを相談していく流れにもっていくことにしよう。
中古車なので、実際に車の状態がどうなのかを把握できるのもありがたい。
まだ4年落ちの車で年式も新しいし、中古店でも問題個所は1つもない極上車だと説明は受けているが、セールストークの可能性もあるので油断はできない。
実際に購入時に車検を通しているので現状は問題ないと思うが、チューニングも含めて今後のプランについても話を聞きたかった。
早速メールで点検の予約を入れ、その際に今までは国産のチューニングカーを乗り継いできたこと、今回BMWに初めて乗ること、中古車なので状態を点検で把握したいのと、今後の整備とチューニングのプランについて相談したいという旨を添えておいた。
すぐさま返信が届き、まずはBMWオーナーになられたことをうれしく思う事、今後素晴らしいBMWライフとなるよう全力でサポートさせてもらうという事、来店を歓迎することが書かれていた。
どうやらファーストコンタクトは成功したようだ。
ホームページで店構えを見ると随分とオープンな雰囲気だ。
職人気質の親方の店にありがちな暗くて雑然としている雰囲気は全くない。
訪店する日が楽しみになった。
さて、予約当日。
私はいつものように開店と同時にお店に訪れた。
お客さんはまだいなかったので、私が一番乗りの様だ。
すると店員がサッと出迎えてくれたが、Tシャツにハーフパンツといういで立ちである。
随分とカジュアルというかラフな格好だ。
名札をみると店長とある。
もう一人の店員もTシャツにジーパンという格好なので、親しみやすさであったり、気難しくないというアピールでもあるのだろう。
後から来たお客さんも似たようなもの。
お互いにフランクであり、BMWだからといって肩肘張る必要はないのだろう。
行きの高速を走りながら、もう少しフォーマルな格好をしてくるべきだったか?と一瞬後悔したが、杞憂だったようだ。
奥様同伴の方も多く、堅苦しい雰囲気はない良いお店だ。
店員とお客さんの会話も実にフランクである。
「今度○○から△△というパーツが出たんですけど、これがすげえいいんですよ。今在庫があってすぐ作業できますけど、どうです?」
「いいねえ、じゃあちょっとお願いできる?」
なんて具合に和気あいあいと会話が繰り広げられる。
ただし、その話をよく聞いてると、値段が30万円だったり、40万円だったりするので油断はできない。
30万円のパーツを「ちょっとつけてく?」なんて勧めて、「じゃあ、お願い」なんてホイホイと商談が成立してしまうあたり、怖い世界である。
もしかすると、フランクな格好は親しみやすさアピールではなく、BMWなんて高級車でも何でもないと思っているようなお金持ちが客層なのかもしれない。
または、こんな感じの雰囲気で高いパーツを押し付けられ、なし崩し的に購入させる手口か・・・。
やはり踏み込む世界を誤ったか?と冷や汗をかきつつも、雰囲気にのまれたら負けだと平然を装いながらコーヒーをすすっていた。
Posted at 2022/02/12 14:30:37 | |
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