2021年12月27日
高速道路を走行している時から思っていたことであるが、この個体のエンジンは実によく回ってくれた。
私が購入予定だった個体の試乗ではスポーツモードに切り替えさえすればよく回ってくれると言う印象だったが、この個体はノーマルモードでもよく回ってくれている。
もちろんスポーツモードと同等というわけではないが、ノーマルモードでもリミットまできっちり回ってくれた。これはエンジンの個体差というより、コンピューターのAT制御の部分の問題であろう。
恐らく購入予定の車は最近あまり動かしていないことが考えられる。
また、前オーナーがあまり回さずに乗っている方であるならば、AT制御はそのように最適化される。
レンタカーの方が頻繁に乗られていること、私が高速道路で散々高回転域を利用して走行したことが影響しているのではないか。
エンジンに関しては、今回の方が圧倒的に好印象である。
特に発生させるパワーがストリートでは絶妙で、ワンディングでもマニュアルモードで走行すれば、ほとんど全開に近いドライビングを楽しめた。
また、ハンドリングも相変わらず良好であり、エンジンパワーとハンドリングのバランスが見事で、強いアンダーステアを感じることなく、くいくいとノーズが入っていく。
旋回Gやロールも不快なレベルでは感じることなく、ノーズが入ればそのまま向きを変え、旋回Gをボディがガッチリと受け止めつつ、アクセルを開けて曲がり切る。
MR-Sでこの速度でアクセルを開けてコーナーの脱出となれば、LSDがなければ内輪が空転を始め、外輪への動力伝達が止まるはずである。
120iにLSDが標準装備されているという話はないはずなので、ノーマルデフなはずだが、内輪が空転することなく4輪がきちんと路面に設置し、トラクションを確保できている。
FF、FRの違いはあれど、EK9をコンパクトカーの基準としている私としては、コンパクトカーでこんなにもしっかりとした走りが可能なのかと少し感動するレベルである。
ただし、EK9とE87では13年もの年月の差があり、形こそ同じコンパクトハッチであるが、その大きさは一回り以上E87が大きい。
車格がそもそもちがうので、スタビリティを同様に語ることはできないが、どちらが安定して走れるかと言えばE87の圧勝である。
そして安定して走れるという事はその分踏めるということであり、最終的にどちらが速く走れるかと言う点にしても実際にE87の方が速度を出せている。
いやいや、不安定だから踏めないというのはお前の腕がないだけだからと思ったそこのあなた、大正解です。
ただ、目を三角にしてハンドルを握り締め、冷や汗をかきながら、という走り方はもう止めにしたいというのが今回の出発点だったので、E87は私の思った通りの性能を有している車ということである。
足回りも公道を多少飛ばす程度であるならば十分な性能を備えている。
Mスポーツには専用サスペンションが与えられており、ノーマル車よりも引き締め挙げられている。
しかし、かといってゴツゴツ感はない。
路面をしっかりと追従し、これならば足回りを交換する必要はないか?いや、多少は車高も落としたいしな…などと考えていた。
そこでふと思った。
130iってどうだったかなと。
思い返してみると、130iはエンジンがいいなぁばかりに目を取られていて、運転そのものの印象が薄いことに気が付いた。
120iはエンジンのフィーリングはもちろんだが、ハンドリング、コーナーリング、ブレーキングとそのいたるところで良い印象を抱いている。
果たしてドライビングそのものを楽しめているのはどちらかと考えれば120iと言わざるを得ない。
120iのパワーとその車体とのバランスは実に絶妙で、公道で走る以上はパワーに不足も感じることはないし、同時に踏み切ることもできる痛快さも持ち合わせており、そしてドライビングそのものを楽しませてくれる仕上がりであることを感じさせた。
これほどアドレナリンを出さずに車の運転を楽しいと思わせてくれたのはもしかすると初めてなのではないだろうか。
今まで私にとって楽しい運転とはアドレナリンの噴出とイコールだったかもしれない。
さて、ここで私の車選びは再びスタートラインに戻された。
120iと130i、それぞれに私の求めるスポーツカー像があった。
ドライビングプレジャーかエモーショナルなエンジンか。
この選択は非常に難しかった。
何しろこの2つの長所はまさにBMWを象徴するポイントである。
ながらくBMWのキャッチコピーであった走り抜ける喜び。
これを体現しているのは120iであると感じている。
同時にシルキーシックスと謳われたBMW伝家の宝刀とも言える直6NAエンジン。
これは当然130iのみが成しえる利点。
以前にも書いたが、私にとっていいエンジンとはいいスポーツカーとして外せない条件である。
どちらを選ぶのが果たして正解なのか、私には自分のなかで完璧に納得できる理由を探すことはできなかった。
そんなこんなで私はどちらにするかを決めることができず、ズルズルと1ヶ月近くにわたり悩み続けることになった。
走り抜ける喜びか、シルキーシックスか。
この視点で判断しようとしても、そんな答えはでるはずもない。
そこで、より1シリーズらしいのはどちらかという視点で判断することにした。
そこで設計上、1シリーズのボディは本来どのエンジンに合わせた設計なのかを考えると、120iであろうという結論に至った。
エンジンパワーと車体のバランス、BMWの掲げる前後重量比50:50により近いのはどちらかを考えると、120iとなる。
ちなみに120iの前後重量は前710kg後700kgでほぼ50:50となる。
130iは前760kg、後700kgで52:48とフロントヘビーとまでは言わないが、やや前が重い。
新しいスポーツカーであるトヨタ86の重量比が53:47なので、問題になるほどフロントヘビーなわけではない。
ただBMWの考えるハンドリングをより実現しているのはどちらかとなると120iと考える。
そもそもドライビングプレジャーとエンジンのどちらを取ると言う選択肢自体が間違っていると思うのである。
エンジンのよさとはハンドリングと並んでドライビングプレジャーに寄与する項目なはずである。
エンジンばかりがクローズアップされ、ドライビングプレジャーが霞んでしまうのであれば、それは車体に対してエンジンが勝ちすぎていることに他ならない。
RB26はパワーと官能性を備えたはすばらしいエンジンだが、EK9に載せようとは思わない(そもそも載らんけど)。
EK9にはB16Bというエンジンが最高のバランスなのである(でもK20Aなら載せてみたいかも)。
E87のボディ、シャシーはN52を載せることを想定して設計されてはいるものの、最適なのはN43を積んだ場合であり、120iが最もバランスが良いと感じた。
それはエンジンパワーだけの問題ではない。
私がエンジンや駆動系に求めるものは、車重とそれに対するエンジンパワー、そしてそれを走るステージごとに引き出す適切なギア比である。
エンジン単体がどれほど良くても車重に対して少なすぎても多すぎてもよくなく、その適切なパワーを走るステージにとって最適に引き出すギア比がなくてはドライビングプレジャーは成し得ない。
今回この1シリーズをサーキットメインの車に考えたら文句なく130iである。
120iでは明らかにパワー不足であるし、上のギアはハイギアードすぎてつながりが悪い。
しかし、今回はストリートをいかに気持ちよく走るかである。
120iの長所であり、同時に短所でもあるが、あらゆる部分がストリートでの使用に最適化されていることをしみじみと感じる。
車重、出力、ギア比、剛性、ブレーキ、足回り、ホンダのCMではないが、最高にちょうどいいのである。
とは言え、車重があと100kg軽くなって、パワーも200psくらいあれば、なおのことちょうどいいようにも思えるが、あとちょっと…位のところが結局ちょうどいいのかもしれない(哲学)。
そうして私は結局120iを購入することに決めた。
とは言え、頭ではそのような理屈付けをいくらしても、N52エンジンへの思いが消えるわけではない。
それくらいあのエンジンが載った車に乗りたいと思った。
ただ2つを同時に得ることができなかった。
それだけのことである。
Posted at 2021/12/27 20:48:02 | |
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E87 | クルマ
2021年12月13日
さて、アクセルを全開にすると、スピードメーターはあっという間に150km/hを超えて、なお速度は上がり続ける。
この速度域に達してもボディはびくともせず、本当に安定している。
4輪の接地感は何も問題はなく、速度感もそれほど感じない。
EK9であれば、140km/hあたりからジャダーが出始め、150km/hとなるとボディがギシギシと言い始める。
160km/hを超えると、この車バラバラにならないか?大丈夫か?と言うくらいの振動となり、速度感も強烈で、ハンドルをしっかり握っていないと吹っ飛んでいきかねないと言う印象である。
サーキットなんかではこの様な感覚はあまりないのだが、実際にサーキットでも速度域が150km/hになることは稀で、長いストレートエンドに一瞬到達するかどうかである。
この速度域を維持して走るなんてシチュエーションはなく、ボディの軋みや振動にしてもサーキット走行中はあまり気にならない。
しかし、高速道路はあくまで巡航であり、そこには快適性が求められる。
EK9で150km/h巡航は可能であると思うが、快適性を考えたら全くする気が起こらない。
それに対してE87の高速安定性は桁違いである。
150km/hを超えて、160km/h、170km/hとなっても本当に何事も起こらない。
ああ、この車は本当に200km/hで巡航ができるんだと思ったその時、180km/hに達したあたりから、細かいジャダーが出始めた。
おや?と思いながらもそのままアクセルを開け続ける。
初めは小刻みなものであったが、200km/hに到達すると、はっきりとした振動として認識できる。
それもボディが軋むようなことはないが、不快と言えば不快な振動である。
そのまま踏み続けると220km/hで速度は頭打ちとなった。
後々調べてみると、最高速度は公式のリリースで224km/hとのことだったので、公式通りのスペックであると言える。
ただ快適性という事を考えると、この車の巡航速度は160km/hあたりまでとしておいた方が無難かと思う。
一応200km/hの巡航もできなくはないが、必ずしも心地よくはないというのが結論である。
実際に試したことはないが、DC5インテRが最高速度220km/hと公表されていた。
DC5が220ps、1190kgなのに対して、E87は170ps、1410kgと数字上は話にならないように思えるが、このスペックで実際に220km/hで走れたのは立派だと思う。
これまた国産車との比較になるが、ボディ、シャシーの差もあるがこの速度域で効いてくるのは空力である。
国産車と比べて一見なにかエアロパーツがついているわけではない。
大事なのは下回りである。
国産車でも最近は下回りのフラット化が進められてきているが、ドイツ車はこの下回りのフラット化が少なくても80年代から進められている。
E87においても排気管以外はアンダーカバーに覆われており、前後のタイヤには空気の流れを整えるストレーキが取り付けられている。
アンダーカバーもただのフラットなカバーではなく、複雑にラインが入っており、整流効果を向上させている。
この辺りが数字上のスペックからは見えてこない性能を引き出しているのではないかと思う。
どうせなのでブレーキングも試してみようと思う。
レンタカーのタイヤには申し訳ないが、160km/hからのフルブレーキングを敢行した。
もちろん停止するまでブレーキングするわけではない。
あくまでスピードコントロールのためのものであり、100km/hを割るくらいまで速度をダウンさせる。
ドイツ車のブレーキの良さはベンツで散々味わってきたが、BMWも劣ってはいない。
ブレーキペダルを踏み抜くと車は暴れることなく、ググっと下に押し付けられるような感覚で減速する。
これはブレーキのストッピングパワーに対してシャシー、ボディの性能が完全に勝っているためである。
これがブレーキが勝ってしまうと前につんのめる感覚になる。
この様な場合、足回りはバタつき、それを抑え込むステア操作を強いられる。
私は基本国産車派ではあるが、国産車がドイツ車に遠く及ばないと感じるのがこのブレーキ性能とシートの作りである。
ブレーキ性能とは、いかに止まれるかのストッピング性能だけではない。
安定して減速し、そしていかに次の加速に繋げられるか、そして耐フェード性能も重要である。
ストッピングパワーはパッドを変えるなりローターを変えるなり、最終的にはキャリパーを変えるなりすればいくらでも得られることができる。
しかし、ここに安定性を加味すると、そのストッピングパワーに負けないシャシー、ボディが必要になり、この改善は容易ではない。
限界まで引っ張ったフルブレーキングでもそこで姿勢を乱してしまえば、結局タイムにはつながらない。
日常的に高速走行をするということは、それだけ高速域からのブレーキングが日常的に行われるという事である。
そういう設計思想の基で作られた車は高速域でブレーキをかけるとはどういうことかという事を、本気で考えている。
それもその高速走行をするドライバーはレーシングドライバーではなく一般人である。
そのようなシチュエーションは国産車の基本設計には入っていない。
また、E87のMスポーツ専用バンパーにはエアダクトが設けられており、これがそのままタイヤハウスと繋がっていて、ブレーキに直接風があたる設計となっている。
国産車でも一部のスポーツカーはそうなっているが、この1シリーズはそのような扱いの車ではなく、一般車である。
その様な車にすら熱対策、フェード対策が施されている。
国産車だとスポ―ツカーですら、そのダクトはイミテーションで、実際には塞がっていることも珍しくない。
ここら辺からも意識の違いを感じ取れると思うのである。
シートに関しては変えてしまえばよいのでさしたる問題とはならず、ここでは割愛する。
そんなこんなを考えながら、無事スカイラインへと到着したのであった。
Posted at 2021/12/13 13:33:19 | |
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E87 | 日記
2021年12月08日
試乗から帰るとお店の営業が出迎えてくれた。
「どうでした?」という問に「このエンジンすごくいいですね」と興奮しながら答えた。
それくらい直6のN52エンジンはよく思え、実はこの時はもう130iに気持ちは固まっていた。
それくらいの衝撃をN52は私に与え、120iの印象を消しとばしてしまった。
ただ、その場で即決はせず、一旦冷静になって検討すると言って家路についた。
もうこの時は130iしかないくらいに思っていたが、もう一度120iに乗ってみたいという気持ちもあった。
現在は130iの印象でいっぱいになってしまったが、その状況で改めて120iに乗ることでその真価を測ろうと思った。
しかし、もう一度試乗に行くというのも気が引けた。
まず単純に神奈川県は遠いということ。
そして試乗は本来購入を前提にしたものであり、ヘタをすると引き立て役にしかならないかもしれない状況で試乗をお願いするのはお店に対して失礼ではないかという思いだ。
その時ふとレンタカーはないだろうかと思い立った。
レンタカーであるならば試乗よりも長い時間をじっくり乗ることができる。
ただ高級輸入車のレンタカーが果たして近場にあるのか、あったとしてその料金はどうなのか、という事が気になり検索をしてみると、オリックスレンタカーで輸入車の取り扱いがあった。
オリックスレンタカーであるならば支店が近所にある。
BMWの1シリーズ、それも2Lのモデルが果たしてあるのかと危惧したが、検索するとあっさり見つかった。
それも購入候補の120i Mスポーツ。
料金は6時間で14000円ということだったが、あろうことか、キャンペーンをやっており、6時間8000円となっていた。
8000円ならば中古車の店舗のある神奈川県往復よりもずっと安く、また6時間も走れるのであるならばじっくりと車に向き合うことができるだろう。
あとは近所のオリックスレンタカーで取り扱いがあるかどうかであるが、実際に支店に訪問し、話を聞いてみると取扱い可とのこと。
その場で予約をとりつけ、店を後にした。
このような経緯で、120i に再び向き合う機会を得ることができ、開店と同時に車を借り受け、店を出発した。
目指すは磐梯吾妻スカイライン。
高速道路で現地に向かう事で、試乗では試せなかった高速道路での走行も試しつつ、走り慣れたワインディングで車の挙動のチェックをした。
まず乗り始めての第一印象は初めて乗ったときよりも動きが軽いということ。
ブッシュのヘタリ等で車の挙動が重く感じることはあるが、レンタカーの方が年式も古く、走行距離も多いので原因はそこではないだろう。
恐らくはBMWの重厚感に私自身が慣れたということだろうと思う。
高速道路に入り、まずは流す。
2000回転程度で100km/hを維持し、このペースでは特段スピードを出しているという感じは一切ない。
EK9やMR-Sで100km/hで巡航しようと思えばギア比の問題だが3000回転近く(EK9は3500)を必要とし、速度感もそれなりにあった。
120iはこれらの車よりもローパワーで、車重も400kgほど重いが、断然100km/h巡航は楽である。
これはアウトバーンで一般人が普通に200km/h巡航をするのが前提で設計されているBMWの車作りの賜物であり、日本車とは根本的に設計思想が異なるのを強く感じる。
EK9やMR-Sは140km/hを超えたあたりからジャダーが出始める。
エンジンパワー的には余裕があり、リミッターにあたる180km/hまで速度は出るはずだが、その速度域の巡航を楽しめるかと言うととてもじゃないがそうは思えなかった。
私が今回試したかったのは、ベンツ、BMWは200km/h巡航が可能な車という触れ込みであるが、それが果たして1シリーズにも同じことが言えるのかという事である。
1シリーズは3シリーズと比較するとホイールベースを始めとして一回り小さい。
多くの機構を共有しているとはいえ、1シリーズと3シリーズではその価格は100万円近い差がある。
この弟分が同じように200km/h巡航が可能なのかどうかという興味があった。
前方の視界が開けたのを確認し、ギアをスポーツモードに切り替え、キックダウンをするとあっという間にエンジンはリミットの7000まで駆け上がる。
吹け上がりの良さはホンダのタイプRのエンジンにも引けを取らない。
ただ吹け上がりは良いが、鋭いと言う感じはしない。
もっと角が取れている感じで、タイプRの回転感を鋭いと表現するのであれば、BMWエンジンはなめらか、スムーズである。
レスポンスと言う点ではどちらも大きな差はなく、レブリミットまでの到達時間についても大差はない。
BMWの凄いと思う点はロングストロークのエンジンでこのレスポンスを実現しているところである。
Posted at 2021/12/08 11:33:57 | |
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E87 | クルマ