
駆け抜ける喜び。
BMWのそれを体現するのはエンジンとハンドリングによるものが大きい。
BMW伝統の直6エンジン。
その中でもBMW最後の直6NAがN52型エンジンであり、長い歴史の中で名声を得てきたBMW直6NAの集大成とも言える。
この珠玉のエンジンをどの車で味わおうかと考えた時、最もスポーティに味わえるのがこのZ4クーペである。
セダンをメインとするBMWの車づくりの中でZ4は異質な存在で、おなじN52を積む3シリーズとは明らかに車の挙動が異なる。
前に荷重をかけてハンドルを切り、アクセルを開ける。
その時にアンダー傾向にあるのが3シリーズで、車がインを向き、リヤが出るのがこのZ4。
私の中では前者の挙動を示すのがGTカーで、後者がスポーツカーだと思っている。
日本のスポーツカーはピーキーなのが多いが、そこはBMWなのでその挙動は穏やか。
滑り出す限界も掴みやすく、安心して踏んでいける。
旋回性能とスタビリティの両立は日本車ではなかなか難しい。
ロングノーズの2シーターなので、座席が車のほぼ中心に位置し、自分を中心に旋回するので高いコーナーリング性能を味わえる。
これは旋回の中心軸が自分の後ろにある4シーターとは全く異なる感覚。
また、座席のすぐ後ろに後輪があるので、後ろから押し出されるFRの加速の感覚を顕著に味わえる。
2シーターはFRの魅力を最大限に味わえるレイアウトだと思う。
またボディ剛性が非常に高い。
ドイツ車は総じて剛性が高いが、Z4はそもそもがオープンカーのE85であり、E85の時点で十分な剛性を持たせられている。
E86はその上で屋根があるのでボディ剛性はさらに上がっており、265psくらいではびくともしない。
お陰で怖さがなく、これも安心して踏んでいける要素。
後期型のモデルなので、前期型はわからないが、ATの出来が良い。
長年MTに乗って来たが、ストレスなく乗れるAT。
一昔前の変速もダルく、変速制御もなっていなかった頃のATとは大違い。
いざとなればマニュアルモードもあり、自分でギヤの選択もできる。
MTじゃなくても十分楽しめるモデルだと思う。
E85/86はBMW初の電動パワステだが、フィーリングが不自然。
低速域から中速域にかけて、変に重くしている感じがして、重さがわざとらしい。
ハンドルが重いというより後ろに引っ張られている感じで、じわっという操作がしにくい。
油圧パワステのフィーリングを自然とするなら、明らかに不自然さを感じる。
また、車の旋回性能そのものは高いが、動きが重い。
しっかりしていると言えば聞こえがいいが、軽快さはない。
スポーツカーらしい軽快な挙動にするにはそれなりに手を入れなければならない。
ロアコン、メンバーをフルピロでリジット化、これでシャキシャキのハンドリングに。
シートはクソ。
ベンツ、BMWは家族、親戚で散々乗って来たが、こんなにひどいドイツ車のシートは初めて。
サイドのサポートはゼロで、ランバーサポートは背中のアールに全然合っていない。
速攻でレカロに交換した。
しかし、着座位置が高く天井に頭がほぼついてしまい、天井に頭をぶつけながら走ることに。
また、レカロ純正レールは外側に数センチオフセットされるため、ハンドリングセンターがずれるのと、Aピラーが目に入ってくるように。
いつもならオフセットアダプターを噛ませて修正するが、アダプター分着座位置が上がってしまうため、今回は使えない。
結局ローポジションでオフセットも解消されるシートレールを特注した。
BMWの内装は基本質素だが、このZ4はひどい。
600万する高級車の自覚が足りない。
価格が近く、同じオープンのボクスターと比べると雲泥の差。
ダッシュボード、センターコンソール、ドア、レカロシートをロブソンレザーにて総張り替え。
プラス、一部のパーツを再塗装することで質感は一気に上がった。
総じてネガも多いが、スタイリングや基本性能で他に選択肢がない車。
ネガもチューニングで大体解消できる。
中古なら100万程度で購入できるので、後300万くらいかけてリフレッシュ及びチューニングすれば、400万の新車を買うよりずっと満足度の高い買い物ができる。