昨日のエントリにて、mistbahnさん、wildspeedさんよりツッコミを受けたお話。
「Fueling - CL/OL Transition」を弄らなければ、Primary Open Loop Fuelingのチューニング効果を適切に得られない
という件について。
このカテゴリのテーブルについて調べてみました。
あまり詳細な話になると自分自身がついていけなくなってしまうので(笑)、詳しい話はヌキにして、忘れると困るので調べた限りをメモを残しておきます。
(そんなんでECUをいじるのは無謀というのもありますが・・・(^^;)
長いです。が、読んでいただける方、違うところがあれば突っ込んでいただけると幸いですm(_ _)m
まずは基本。
GRB(ほかの車もそうですが)の燃調制御は、
・Closed Loop → O2センサによるフィードバックでストイキに保とうとする制御(by mistbahn氏)
・Open Loop → Primary Open Loop Fueling に従ったMapによる制御
の2種類があります。
「ストイキ」とはストイキオメトリ(stoiciometry)の略で、
空気と燃料が理想的な濃度で混合して完全燃焼するエンジンの燃焼方式(状態)のこと。
要は、Closed Loop ≒ 「可能な限りAFR 14.7にするぜ!」なモードで、O2センサーから読み取る酸素量に応じて、可能な限り燃費をよくするような燃調制御を行う、という理解。
GRBでは、このClosed LoopとOpen Loopをクルマの状態や運転の仕方によって切り替えながら、その時々に合った最適な(という前提の)燃調制御を行っており、その「遷移」については、実にさまざまな条件で決められています。
このカテゴリのテーブルを並べてみても、
・CL to OL Delay
・CL Delay Maximum Throttle
・CL Delay Maximum Vehicle Speed
・CL Delay Maximum Engine Load
・CL Delay Maximum Engine Speed (Per Gear)
・CL Delay Maximum Engine Speed (Neutral)
・CL Delay Minimum Coolant Temperature
・CL to OL Transition with Delay ( Throttle )
・CL to OL Transition with Delay( Base Pulse Width )
と自分はパッと見でイヤになる数です。
↑のテーブルのDiscriptioinを流し読みした限りの遷移シーケンスを示すと・・・。
CLtoOL遷移判定では、まず最初に「CL Delay Maximum(Minimum) Xxxx」シリーズのテーブルを判断します。これらは、単純に値を超えているか否かで遷移が決まる値で、スロットル開度、車速、エンジン負荷、エンジン回転数、水温のいずれかが基準値をまたぐとOpen Loopへ遷移、逆にすべてが基準値内なら、今度は
(1)CL to OL Delay
(2)CL to OL Transition with Delay ( Throttle )
(3)CL to OL Transition with Delay( Base Pulse Width )
の残り3テーブルから判断して、遷移動作を行います。
(※ 定義を信じるならばCoolant Temperatureだけは「下限値」なんですが。。。
これがちょっと納得いってないです。GRBのデータから見ると、200℃未満でOpen遷移、と言う事に
なると思うんですが、普通は逆なんじゃ・・・。ログって調べてみようと思います。)
んで、(1)~(3)の使われ方ですが、これは、
「(1)の回数分、(2)または(3)のテーブルで「遷移」と判断されたら遷移する」
という動きになります。
(2)CL to OL Transition with Delay ( Throttle ) は、スロットル開度による遷移で、
エンジン回転数ごとに「これくらいスロットル開いたらOpen Loopに遷移する」という値。
GRB純正では、4800rpmまでは86%、5200rpm以上は0。
このテーブルが示すのは、
・5200rpm以上はOpenに遷移。
・4800rpm以下の回転域では、スロットル開度86%以上が「CL to OL Delay」回続くと、Openに遷移
・Open Loop時は、4800rpm以下でスロットル86%未満が続くとClosedに遷移
ということ。
ごく低回転域を除き、スロットル開度はアクセルペダルを70%以上開けない限りはほぼ30%未満で推移しますから、このテーブルがトリガーとなってOpenLoopに遷移するのは5200rpm以上か、アクセルペダルを70%以上踏み込んだ時だけということになります。
(3)CL to OL Transition with Delay(Base Pulse Width) は、Base Pulse Widthによる遷移で、これもエンジン回転数ごとに設定されています。
この見慣れぬ値「Base Pulse Width(以下BPW)」の意味は細かく書くのが面倒なので置いといて(笑)、定義ファイルのDescriptionによるとこの値は、
BPW = Engine Load * 2707.09/(Injector Flow Scalingの値)
で算出できます。GRBにおけるInjector Flow Scalingは
562.45。(Fueling - Injectors にあります)
したがって、
BPW = Engine Load * 2707.09 / 562.45 = Engine Load * 4.8130
と言う事になり、見慣れない値「BPW」は、見慣れた「Engine Load」に比例した値であるということがわかります。この計算式に従い、BPWをEngine Loadに変換してCL/OL切り替え条件を表にすると、こんな感じ。
結果としてこのテーブルは、
・4000rpm以上(値が0)が続くとOpen Loop遷移。
・3600rpm以下の低回転域は EngineLoad = 1.25~1.350以上 が続くとOpen Loop遷移。
・3600rpm以下で低負荷が続くとClosed Loop遷移
という感じです。
これを踏まえて、自分の走行ログを見る限り、街乗り程度ではあまり4000rpm以上まで回しませんし、エンジン負荷は1.25を超えることはほとんどありません。(あっても一瞬)
結果的に
「サーキットか、街乗りは追い越し時にちょっと踏む時」くらいしかOpen Loopは使われないということになります。
なので、せっかくPrimary Open Loop Fuelingを弄っても、「自分が必要とするタイミングでOpen Loopに遷移する」ような条件を詰めなければ思った効果は得られない、というmistbahnさん、wildspeedさんのコメントにつながるわけですね。
奥が深いというか、考えることが多くて大変というか(笑)
もちろん、そこが面白いというのもあるんですけど(^^)
次の研究会はご希望があればこの辺をネタにやりますか~ >GR Owners Hokkaidoのみなさま
見やすくなるようにExcelでデータも作ったので、グラフやログを見ながら、ソコソコわかりやすく説明できると思いますヨ。